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第160回 脱株価の発想<4/15>

 まったくつまらない相場が続いており、元気なのはごく一部の超目先の投資家です。
 前回書きました通り、「宵越しの株は持たない」という哲学で、超短期の売買に徹することについて、私は特に反対するわけではありません。ただ、私には興味がないし、また興味があったところで、顧客がもしそれを望むのなら手数料の安いネット取引でやってもらうべきなので、我々のビジネスにはつながりません。

 我々歩合外務員に限らず、対面(ワンツーワン)営業では、営業員の所得を確保するためには、将来にわたり100万円につき1万円くらいの手数料は必要だと思います。すなわち、往復で2%の売買費用を「高い」と思う人ばかりなら、我々は非効率な存在であり、淘汰されていくべきということになります。
 だから、社会的に不要な存在とならないためには、どうしたらよいかということが我々の緊急課題のはずですが、相変わらず我々の高い手数料で超短期売買を勧め、ちょっとの利益で利食い千人力とか強弁してその日暮らししている営業マンもいます。

 その課題に対する一つの答えが、我々は銘柄個々の売買の仲立ちをしているのではなく、資産運用のアドバイスをしているのだという視点を持つことです。すなわち、銘柄の1回1回の当たりはずれではなく、ある期間を通じて、投下資金をどのような考え方でどのように運用していくかということを、顧客個々と逐次話し合い、実行していくことに我々のビジネスモデルが成り立ちうるのではないかと考えています。
 私の顧客は、日々の株価にそれほど一喜一憂する人は多くはありません。3カ月おきとか6カ月おきとかのパフォーマンスが、基本的に私の勤務評定になります。
 ただし、顧客のほうは寛らかでも、私自身は日々刻々の株価で相当に一喜一憂しています。勧めて買ってもらった株が上がらないと、イライラしてしまいます。パフォーマンスの低下は資金量の伸び悩みと手数料の低下で、我が家の家計を脅かすのですから、当然といえば当然です。

 脱株価(目先の株価変動の超越)という視点から、今考えているのが、擬似連結決算方式による株式投資です。
 例えば、500万円を資本金とします。この500万円で株を買い、定期的に時価評価すれば、単なるプライベート・ファンドです。しかし、前回触れた「投資持分」という概念を導入すれば、まったく決算方式が変わります。

 まず、合同製鉄を90数万円で1万株買ったとします。「有価証券」としてではなく、「投資持分」として資産計上します。1株あたりの純資産は300円ですから、約200万円の投資差額が発生します。次に、やはり90数万円で日本LCAを700株買います。このの銘柄は時価1365円に対し、1株あたりの純資産は112円しかありませんから、負の投資投資差額が90万円近く発生します。このような考え方により、資金全体として投資差額がほぼゼロ(すなわち、平均PBR1倍)で、今期の予想PER10数倍、将来の期待PERでは数倍(益回り2ケタ)というファンドを組むことが、今の株価水準では十分に可能です。

 みそは、定期的な損益を株価ではなく、投資した会社の決算数字に基づいて算出することです。といっても、各会社の発表する1株あたり株主資本×持株数を単純に足し合わせるだけですから、至って簡単です。
 例えば、日本LCAが1株利益65円を稼ぎ出したとすれば、前期の配当金と役員賞与を引いて、前期末より50円前後増えた1株あたり株主資本(160円位)が発表されるはずですから、その分、投資持分が増加したと考えます。そして、配当金の受け取り額と投資持分の増減額が決算上の損益となります。

 問題は、@今の経済状況下では、各銘柄の収益が伸びるどころか、ジリ貧になる恐れがあるということに加え、A帳簿上の純資産額が信じられない、B仮にそれが信じられるとしても、株主資本というのは絵に描いた餅で、会社が解散しない限り実際のもうけにつながらないのではないか、などなどの疑問です。
 これらについては、日をあらためて述べます。


第159回 相場観か投資哲学か<4/12>

 日経平均がついに1万1千円を割れました。
 ひところは日経平均の高安予想で下は6000円くらいまであり、人によって相場観が180度違っていましたが、今はそんなことはありません。弱気の人にしても、強気の人にしても、煎じつめれば、ほぼ似たような状況認識に収斂してしまいます。
 当面の需給関係は、「非常によい」と表現するか「それほど悪くない」と表現するかの違いはあっても、少なくとも、一時よりは改善されていることは大方の人が認めるはずです。
 同じように、当面の景況についても、「好転している」と表現するか「悪化が一服」と表現するかの違いはあっても、所詮は五十歩百歩の差でしかありません。
 では、需給関係がよく、景況がよいとすれば、日経平均が気持ちよく上がるだろうと考える人が多いかといえば、そうではありません。ほぼ全員が少なくとも目先については、平均株価の上値に気重さを感じており、「ぜひ買いたい」と素直に発想している人はごく稀なのではないのでしょうか。
 すなわち、相場観を語る限り、売りたくもないが、買うのもナア・・・・という素人投資家の気迷いと実質同じで、ただプロめかした言葉の飾りでお茶を濁すのがせいぜいということになりかねません。

 前回、「バフェット氏を見習って」などと大上段に振りかざしましたが、今必要なのは、1万1千円が買いか売りかの相場観ではなく、投資哲学だと思います。
 もっとも、どのような哲学を持つかは、人それぞれが決めることで、一貫性さえあれば、どんな哲学だって投資に有効と考えます。
 例えば、「君子危うきに近寄らず」の哲学なら、それを徹底すれば、大損することは少ないはずです。ただ、私の経験では、株価が安いときや普通のときはその哲学なのに、株価がものすごく高くなると、ものすごく勇ましい行動パターンに豹変する人も案外に多く、その場合パフォーマンスは当然ながら最悪になってしまいます。
 また、「宵越しの株は持たず」の哲学なら、これも徹底すれば大損しなくてもすむはずです。私自身は、その日のうちに売りたくなるような株を買っても、全然楽しくないと思うのですが、それこそ人それぞれの立場でしょう。もっとも、この場合でも、つい引かれ玉の持ち越しが続いて、結果的に大損した米国のデイ・トレーダーの話も聞きますので、注意が必要です。

 私の投資哲学の基本は、「会社それ自体を買う」です。例えば、33万円のNTTドコモを発行株数の全部買えば約16兆円です。私がそれを買えるくらいの超大金持ちだったとしても、多分買う気にならないでしょう。ドコモは親と違ってまだ将来有望で、いくいくは1兆円くらいの利益を稼ぎ出すかもしれませんが、確実な話ではなく、かつ元本に対する率が低すぎます。

 その点、元本に対するリターンの期待では、率的に魅力的な投資物件が今の市場には掃いて捨てるほどあります。
 例えば、ぐっと小型ですが、NJのCVSベイエリア(2687)です。510円で全株買っても、39億円です。総資産58億円のうち純資産は23億円で、16億円の投資差額がこの会社の収益力に対する期待料ということになりますが、9日に発表した決算によれば、前期税引利益4.5億円に対し今期5.5億円と2ケタ増益が続く予想です。東京湾岸に地域特化したコンビニチェーンという業態特性から、収益の安定性と新規出店による成長性を兼ね備えています。益回り(PERの逆数)は、前期実績で11.5%、今期予想で14%台と好採算であり、前述の安定性と成長性を考えた場合、非常に魅力的です。
 私がもし40億円以上持っていたら、確実にこの会社を買い取りたいと思いますね。

 多分、これを読んで、そんなこといっても、時価では全株どころか50%超も買えるはずがない、だから所詮は意味のない空論だ、とお考えの人も多いかと思います。
 しかし、空論ではありません。1000株買えば、この会社の7640分の1、1万株買えば764分の1の持分を確実に自分のものにすることができるのですから。
 日本人は、おうおうにしてマンションを買うにしても、土地を持分で買っても自分のものという気がしないという非資本主義的な人が多いのですが、持分をもし絵に描いた餅だと考えるなら、連結決算における持分法についても同じ考えになり、資本のダイナミズムからますます置いていかれるのは必定でしょう。
 先日、ドコモが1兆円の投資評価損を出したとき、「あの時点ではあの価格で買うしか仕方がなかった」というコメントがありましたが、事業拡張のためには、投資採算を度外視して出資しても仕方がなかったという意味にも取れ、評価額が上がり下がりするのは仕方がないにしても、そもそも株式取得によって他の会社の持分を獲得することの資本主義的な意味を理解したうえで発言しているのかどうか不安になりました。

 今は、買うべき株がたくさんあります。問題は、デフレ・スパイラルがまだまだ続くと考え、資金を寝かせておくか、それとも日本経済の底が見えてきたと考え、積極果敢に持分獲得を実行に移すか、その二者択一だと考えます。


第158回 株の絶対的価値と相対的価値<4/9>

 大証二部の甲子園土地(9673)という会社解散を発表した銘柄が、整理ポストながら、発表時の2倍の80円まで上がってきました。訴訟でもしかしたら巨額の補償金を取れるという思惑もあるようですが、基本的には古い企業なので解散価値がそこそこあるのではないかという観測が底流にあります。
 3年前、立川が解散を発表したとき、株価はストップ安して86円になりましたが、実際には1株あたり200円以上が株主に戻ってきました。
 今回の甲子園は買いを勧めてはいませんが、少なくとも簿価の64円以上が株主に還元されたらよいなと願っています。世界中に信頼をなくしている日本のバランスシートが、一部の企業であれ、信頼するに足るものであるという証拠になるからです。

 解散した企業やつぶれた企業の場合は、過去の配当金+残余価値という形で、その企業の絶対的な価値が客観的に算出できるわけですが、永続企業の場合、当然ながら、企業の絶対的な価値がきっちり算出できるはずがありません。アナリストがいうバリュエーション(あるいは理論株価や適正株価)など、まったくの絵空事のことのほうが多いといって過言ではありません。
 だから、株価は所詮理屈じゃないという意見が日本では特に強くはびこり、証券マンが勉強しなくてもすむ構造になっていました。バブルのてっぺんでの野村のシナリオ営業などはその最たるものでしょう。
 しかし、この10年間で、日本の市場もどんぶり勘定の値付けより、シビアな価格形成が目立つようになりました。外資系が売買シェアの過半を占めるのですから当然の成行きだと思われます。外資系だから、必ずしも合理的な投資判断をしているとは限りませんが、少なくとも、資産運用という視点からは、真剣かつ合理的な投資行動に徹する傾向が強いからです。
 ただし、その外資系といえども、主流を占めるのは相対的な価値判断です。AはBよりも優れる、だからBを売りAを買えば得だ、というのがグローバルワイドでの資金運用の大方のパターンになっているわけですが、このやり方だと時流に乗り遅れる危険は少ないものの、ときとして思いがけないようなミスプライスを生じさせる原因にもなります。
 ネットバブルは、明らかに相対的な価値判断に基づく投資行動がその一因になっていますし、投資格付けを下げられた銘柄がおうおうにしてびっくりするような安値に急落するのも相対的な価値判断優先のせいと考えられます。

 米国のバフェット氏は、時流、環境、類似企業の株価など一切無視して、絶対的な尺度に基づく価値判断だけで銘柄を選別し、長年にわたり好パフォーマンスを維持し、自らも米国有数の資産家となりました。ここまで長く書きましたが、今回私が言いたいことは、今こそ我々は、バフェット氏を見習い、銘柄個々の価値を冷静に見つめ、慎重にかつ敢然と投資し、資産を倍化させる絶好のチャンスに遭遇しているのではないかということです。
 銘柄ごとの今期の収益動向が見えてくるこれから5月までは、銘柄選別のうえでは例年以上に重要な時期になると予想します。

 マーク銘柄の中から、兼松エレクトロニクス(8096)が上げてきました。この銘柄は不人気ですが、今期の業績次第では飛躍的に見直し余地があると私は思います。
 ナスダックJの日本LCAは東証2部上場発表で、買えないまま上げてしまい様子を見ています。CVSベイエイリアはまだ買えると考えています。


第157回 (続)闇夜の星<4/5>

 今日も日経平均の前場終値は15円安、完全な膠着相場です。
 日経平均が動かないのは当然です。いくら半導体需給の好転が確実でも、2期連続赤字見込みのアドバンテストや東京エレクを9000円台で買うのは、さすがに気がひけます。しかし、赤字なのだから、そのうち暴落するぞと決めてかかる人もいますが、その考え方も危険だと思います。半導体関連の中でも、最終メーカーと違って製造装置関連の将来は日本企業の中でははっきりと明るく、成長期待があるからです。
 一方、銀行株はといえば、こちらは割安か割高か論じること自体が無意味です。不良債権がすでに引当てられた分+αなら、割安に決まっていますし、もっと途方もなく償却が必要なら、割高に決まっています。そして、その白黒が簡単に判明するはずがないにしても、検査結果の発表でおかみの一応の考え方が示される日が接近しており、常にもまして株価の動きが鈍くなるのは当然でしょう。

 主力株膠着の中、相場地合いははっきりと好転しています。値上がり銘柄数が2日連続で1000を超えるとは、尋常のことではありません。単純にお金がどんどん入ってくる環境ではないとはいえ、また地合いの好転の最大の理由が季節的な売り引き合いの減少によるものとはいえ、冷え切っていた投資家のマインドが徐々に明るい方向に変わってきていることは確かだと思います。

 今日、普段は地味な大崎電気が54円高していますが、多分新材料によるものではないと思います。実は先日第一部で10銘柄リストアップした中の一つです。きっと今の地合いでは押し目買いでは株数がまとまらず、多少高く買っても割安だからよいと判断した投資家が複数存在したから上がったのだと思います。
 前回もちょっと書きましたが、指値の買い注文がなかなか入らずに困っています。TDCソフトは2000円を割れているので、よい買い場だと思いますが、実際に買いに行くとなかなか買えません。時価1986円に対して、恐ろしいことですが500株でも成行きで買いにいくと2050円以上になりかねません。
 普通の営業マンはこんな品薄の状態で、信用買いなど勧めないのでしょうが、私は底値圏では所詮品薄と割り切れるほうなので、わりと当たり前に信用の顧客にも品薄株を勧めるのです。しかし、なかなか買えません。他の銘柄もだいたいそうで、一時のように後から後から売り物が出てくる状況とは様変わりです。

 小型株の中で、東京鉄鋼はちょっと自慢できるパフォーマンスとなりました。今期も増益と考えれば、1株利益の高さから昨年高値の275円を抜く可能性もあるのでしょうが、とりあえず半分売却の方針です。
 黒田電気は買い増し方針ですが、今日は上昇3日目ですので、さすがに手控えています。好業績報道が出て570円、率にして27%上げ、目先は足踏みするだろうと思うものの、リスクそのものは、上げていない普通の銘柄よりかえって小さいのではないかと考えます。普通の銘柄の多くが、これから決算発表までは業績がどのようなレベルになるか例年以上に大きく不安があるのに比べ、この銘柄には少なくともここ2ヶ月くらいはびっくりするような下方修正はないだろうと考えられるからです。

 黒田電気がはたして輝く星に育つかどうかはさておき、現在の一般的な株価水準が激安だと考えれば、業績がよい方向に向いているという情報が加わったことで、それ以前より27%くらい高く買うことになっても、その分は安心料として、それほど腹が立たないはずです。だから、現時点では、まだ割安な銘柄として注目しています。
 もっとも、業績への不安が少ない業種もあり、アロカ(7704)640円などは、業態から見て業績のレベルに安心感があり、安心料など払わずとも買える銘柄だと思います。ただし、安心感が高いということはよしあしで、アロカは2倍くらいになる可能性はあるにしても、闇夜を行く旅人に方向を指し示すような星になる可能性はないと考えます。


第156回 闇夜の星<4/3>

 昨日、引けにかけて、久々に主力株が買われましたが、今日はあいにくの始まりです。
 ただ、中期志向の投資家にとっては、現在の相場地合いはそれほど悪くないと思われます。特に、小型株の地合いが徐々に明るくなってきていることを感じます。

 今日の日経で、アドバンテスト連続赤字見込みの記事の下に、黒田電気(7517)の史上最高益予想が伝えられています。商社とはいえ、半導体・電子部品関連で前期の落ち込みが小さく、今期最高益の勢いとは大変なものです。もともと好きな銘柄で、先日四季報をチェックしたとき、ちらっとは気にしたのですが、株価が底値からはすでにかなり回復していたのでふり落としてしまい、顧客の残高がゼロなのは残念でした。
 今日、ストップ高もありうると考え、一顧客から寄付注文を受注しましたが、240円高の2310円で買えて嬉しく思いました。
 
 95年5月の真っ暗な相場環境の中で、ロームがキラリと光る好決算を発表し、それを見てすぐに買い注文をもらったところ、意外に安く買え、しかも後で大きな成果につながったことを思い出します。
 相場が底を打つときは、当然ながら悪材料に満ち満ちています。何もかもが疑わしく思えます。黒字予想の会社でも赤字になるかもしれないと不安に思え、自己資本比率70%の会社でもつぶれるかもしれないと思えてきたりします。
 そのような状況下で、もう少し安心感が出るまで株は買えないとするのも徹底すれば一つの道ですが、私は相場と割り切れば、なにもかも不安だからこそ、信じるべきものは信じたいと思います。

 株をやっていくうえで、ぜひ信じたいのが企業の発表する数字です。アメリカでも会計疑惑で動揺が走っていますが、私はこう考えます。@企業はすべての数字を発表するわけではない、しかしA発表された数字は少なくとも嘘であることはきわめて少ない(単純な粉飾はできなくなりつつある)、Bエンロンの場合のように真実を複雑に隠そうとする手法も今後は次第に余地が狭められていくはず。
 疑えばきりがありません。黒田電気が何かの都合で強気すぎる数字を日経ににおわせただけじゃないのか? たとえ最高益が本当でも特殊要因のせいで実質が伴わないのではないのか? たとえ実質増益の見込みでも、今後の情勢で一転減益になってしまうのではないか? たとえ本当に増益になっても、だれも買わなければ株価は下がってしまうのではないか? ・・・・などなど。
 疑うことは有益です。しかし、疑うだけなら、株式投資は永久にやらないほうがよいかもしれません。株を買うことは、その企業の将来を信じることです。そして、どうせ、信じるなら、今のように何もかも疑わしいときに、思い切って信じてみたいものです。

 黒田電気に限らず、今後各産業分野で、事業の健闘が報じられる企業群が、闇夜の星として、小さくてもひときわ鮮やかに輝いていくのではないかと私は考えます。今でこそロームは太陽のように輝いていますが、6年くらい前までは勧めると馬鹿にされるほど小さく無名の星の一つに過ぎませんでした。

 ところで、昨日に続いて日立キャピタルが相場地合いとかかわりなく強い動きをしているのは、心強い限りです。この株は小型ではありませんが、銘柄個々の投資魅力の見直しの中で、次第に強気優勢になってきたと思われます。
 昨日下げたTDCソフトを勧めたり、東京鉄鋼の押し目を狙ったり、配当利回りでサンリツに買いを入れたり、てんでバラバラの銘柄に買い注文をもらっているのですが、いざ買いを出すとなかなか売りが出ずに困っています。


第155回 魅力的な個別銘柄<4/1>

 非常に心細い新年度相場の始まりですが、相場は当分横ばいと割り切れば、それほど腹も立ちません。
 軟弱相場の中で、そこそこ買ってもらっているTOWAや東京鉄鋼など小型銘柄が新高値をつけて来ており、小型銘柄に限定すれば、それほど悪い相場とはいえないのではないでしょうか。

 先週1週間、四季報ばかり眺めて過ごし、東証1部で10銘柄、2部で4銘柄、ナスダックJで8銘柄、マザーズで2銘柄を長期有望の中小型割安株として選抜しました。
 ナスダックJが多くなったのは、私の好みが反映している面もあるのでしょうが、公平に見ても他の市場より割安感の強い銘柄が多いようです。
 前回の銘柄候補の中からは、結局、米久(2290)640円とCVSベイエリア(2687)440円だけを残しました。
 もし私が無職で、3000万円の現金のみがあるとしたら、多分銀行に300万円だけ預け、後の資金で買いたいと思うであろう銘柄だけを選びました。

 まず配当金をある程度もらいたいという観点からは、例えば二部のサンリツ(9366)です。株価639円に対して配当は24.5円が安定的に期待できそうです。利回りは3.8%で、かつ業態と資産内容・業績の水準から、減配の懸念は小さそうです。平時の相場なら、少なくとも1000円くらいで取引される銘柄ではないでしょうか。投資目的は配当で、10年分の配当が先取りできるようなら(つまり株価900円弱に上昇すれば)、他の銘柄に乗り換えようという作戦です。
 第1部市場で、同じ観点からは、三信電気(8150)501円、コナカ(7494)805円、小松ウォール(7949)1140円などで、利回りは2.5%くらいに下がりますが、もらえる配当が低い分、値上がり期待はアップすると考えます。
 ある程度のバリューを確保したうえで、値上がり期待を中心に選べば、TDCソフト(4687)2050円とアルゴ21(4692)1615円は、目先の業績のモメンタムがよいわりにPERが15倍程度で魅力的だと思います。
 新興市場はよりどりみどりの観があり、どれもこれも少しずつ買ってみたい銘柄ばかりですが、日本LCA(4798 NJ)1260円は、経営コンサルティング事業で売上高急進中であり、PER20倍は魅力的です。


第154回 個別銘柄に傾斜<3/26>

 今日は配当落ちで堅調、期末大幅高の夢は破れたにしても、まずまずの展開ですね。
 株式投資の狙いは様々です。人によっては、大幅高なんかしなくても、今日は今日、相場の向きが上であれ下であれ、売りか買いで毎日ファイトが沸くタイプも多いのでしょうが、私は1日の方向それだけではまったくファイトが沸かないタイプです。
 だから、期末大幅高の夢が破れた先週半ば以降、主力株にはほとんど興味をなくしています。4月以降、日経平均に再び躍動感がよみがえることもあるかもしれませんが、現時点では、中小型の選別買いに徹するべきときと考えています。

 あまり多くは買っていませんが、超不人気株だったローランドDG(6789)が大幅高で800円台に乗せてきたことは嬉しいことです。この株の魅力はなんといっても、企業が今の状態のままでも、見方を変えるだけで、株価水準が大きく変化するだろうということです。
 まずPBRが1倍を割れているということは、その企業の収益の先行きに懸念があるということですが、この会社は現在の環境下で売上高に対してそこそこの利益率を保っているのですから、ハイテク分野で今後も生き残っていくだけの競争力があると考えられます。親会社のローランドとはまったく別の分野で、親会社のよい面(技術屋さん)を受け継いでいる結果だと思います。
 もし一人前のハイテク関連株としてみなした場合、PBRが1倍を大きく下回る株価は異常ということになります。また、1株利益水準に対してPERが10倍前後という評価も異常ということになります。(理由は省きます)
 発行株数は820万株と第一部としては超過少で、かつ売上高は約120億円ありますから、1株当たりの売上高は1460円くらいになります。製造業で売上高を時価総額が下回るのはよほど事業の先行きをあなどられているわけですが、もしそのあなどりが少しでも修正されれば、株価水準の修正余地はそれだけ大きいともいえます。

 ローランドDGは目先さすがに買いづらいので、それ以外に手垢のついていない魅力ある銘柄はないかと思い、会社四季報を1ページずつチェックしています。
 チェックの基準は、自分がまったくの無収入で、年金もなく、ただ唯一3000万円の現金があるとして、その銘柄を少しでも買いたいと思うかどうかです。
 コード番号2000番台まで見たところで、買いたい銘柄はたくさんありました。やはり、日本株は今安いのだと実感しました。
 その中で、特に注目したのを列挙すると、安定型で、わらべや日洋(2918)、米久(2290)、東洋水産(2875)、JULUX(2729)、三井金エンジ(1737)など、思惑系で、キューサイ(2596)、CVSベイエリア(2687NJ)、ITX(2725NJ)などです。いずれも四季報の数字だけで見たところですが、なかでもCVSベイなどは、1店あたり日商63万円平均位の優良コンビニを90店くらい(うち直営は半分強)経営している会社で、売上高成長中で1株利益60円に対して時価440円は非常に魅力的と感じました。
 この文章を読んでいていてくださる方で、これらの銘柄について、アドバイスがあれば、ぜひご一報ください。


第153回 トーンダウン<3/22>

 一昨日の日経平均の下げで、心底がっかりしてしまいました。私は無茶苦茶に株が上がればよいと思っているわけではありません。でも、今の日本の株価が無茶苦茶に安いものであるのなら、もう一度くらい無茶苦茶な平均株価の上昇があってもおかしくないと思っていたのです。
 自然な株価の動きなら、もはや銀行株の期末に向けての再急騰は考えにくくなりました。危機は当面回避されたものの、問題が解決したわけでなく、それほど高くは買えないというのが市場の判断であるなら、あえてそれに異を唱えることは困難です。現在の一般的な銀行株価の妥当水準は、不良債権に対する解釈の仕方次第で月とスッポンの差が生じると考えられ、所詮は市場のマインド次第だからです。

 ・・・・・・。朝の寄付き前にここまで書いたところで、用ができて中断、その後今日の相場が始まりました。寄付きはやはり売りムード、日経平均は100円以上下げています。やはりというのは、一昨日の下げで、がっかりしたのは私だけではないなと感じたからです。
 
 ハイテクは基本的にアメリカに連動するはずなので、日本株が独自にドラスティックな回復相場に転じるとすれば、国内関連の在来産業株に対する評価の物差しにものすごい変化が生じる必要があります。そして、その変化の鍵を握るのは、とりあえず銀行株と私は考えていたのです。
 現在の銀行株の株価は、日本の物的資産(不動産や生産設備)の市場価値劣化の象徴です。もし不動産や生産設備の価値に信頼性があれば、一部の問題企業を除いて、不良債権はそれほど甚大なものになるとは到底考えられません。

 例えば、合同製鉄への融資は不良債権かどうかです。悲観的な見方からは要注意債権として認定されています。土地を時価で再評価し、リストラで老朽設備を廃棄した後で、なお1株あたり約300円の純資産が残る企業なのですが、土地や設備の換金価値そのものを疑えば、回収不能懸念があるというのが悲観的な立場なのでしょう。
 合同製鉄に限らず、多くの企業がそのような悲観的な立場に基づき株価が形成されており、その結果、PBRが1倍よりはるかに低い銘柄の異常な増加となっています。
 (PBRが1倍を割れる理由としては、不動産などで含み損を抱える場合と、その企業が資産価値を活かせず、将来にわたり実質的に減価していくと判断される場合の2通りがありますが、そのどちらにも該当しないような単なる悲観心理による異常なPBR1倍割れ銘柄が数多く存在し、抜本的な再評価余地があると私は考えます。)

 もし銀行株が「異常な」回復をさらに示すことができていたら、日本株に対する見方は180度に近く転回を果たしていたのではないかと私は夢想します。
 しかし、残念ながら、市場の判断はきわめてクールでした。そして、この結果を受け入れざるをえないと考えています。
 すなわち、日本株は大局的には底入れを果たしたものの、バブル崩壊後数度の反騰局面で現れたような市場心理の劇的変化は今回は起こらないまま、きわめて静かで緩やかな回復相場が当面続くという判断を基本想定とします。
 当面において、平均株価の天井はきわめて低く、日本株独自のうねりは限定的と考えます。もし平均株価で大きな上値余地が生じるとすれば、4月に入り第1四半期の業績アナウンスメントで米国のハイテク株が再上昇気流に入った場合でしょう。
 
 合同製鉄が復配見送りで一時7円安の89円と急落しました。本業は経常利益22億円とほぼ予定線ですが、みずほ株の評価損だけでその3分の2が消え、最終利益は4億円になり、復配を見送るというものです。復配が実現しないのは残念ですが、前述の通り、日本の物的資産の価値劣化がさらに急激に進むと考えない限り、不思議な株価だと私は思います。
 合同製鉄に限らず、中小型の割安株を中心に個別株への強気方針は続けていきたいと考えています。


第152回 下旬高を期待<3/19>

 昨日は、丸紅でちょっと忙しい思いをしましたが、基本的には暇にしています。なぜ暇かといえば、平均株価の上昇にもかかわらず、顧客の投資マインドがかつてないほど低いということが第1の理由です。第2に、ここに来て強気転換してもらえた顧客も、先週からは一服方針で臨んでおり、後は1万2千円突破を待って買い乗せしようという作戦計画だからです。

 丸紅は80円台から結構たくさん買ってもらっていて、事件が報じられたときは雪印の急落が思い浮かび、ドキっとしました。しかし、土日に冷静に考えたら、すでにたっぷり下げの洗礼を浴びている銘柄なので、いくら新規の悪材料とはいえ、それほど下がるはずがないと思えるようになりました。ただし、社会的不正という烙印が捺されてしまった以上、当面機関投資家の買いが期待できず、活躍の余地が狭められたことは否定できません。悪材料が出なければ、値がさハイテク株に手詰まり感が出てきたことから、さしずめ今週あたり、物色範囲の拡大の象徴として大賑わいになるはずと期待していただけに、非常に残念です。

 昨日、「日立キャピタルについて詳しく教えてくれ」というメールをもらい、自分自身にガク然としました。このところ一生懸命勧めている銘柄であり、現に何人もの顧客に買ってもらっていながら、実は一般情報以外に何も知らないのです。
 他の銘柄だったら、たいていの場合、自分の眼と耳で調べて注目銘柄としています。ところが、この銘柄に限っては、ほとんど調べないままに済ませていました。
「銀行は値段の安さは魅力だが、万一が怖い」「金融で堅そうで、かつ上値魅力がありそうなのは何か」・・・・とよくいえばトップダウンの発想でこの銘柄に行き着いた後、アナリスト・レポートが出てないかと探してみましたが、ほとんどなく、「第一投資顧問」の簡単な推奨レポートがあるだけでした。ちなみにこの投資顧問は「さわがみファンド」に匹敵するほど堅実な運用に定評があり、恥ずかしながら、そこが勧めているのなら大丈夫かなという心理はありました。それに、日立だから・・・・という安易な固定観念もありました。
 問い合わせのメールに対しては、「金融セクターの場合、不良債権がいったいどの位あるのかは調べても分かるはずがないので特別には調べていません」と開き直って返事を書いてしまいました。
 後で反省しました。遅まきながら、有価証券報告書くらいはチェックしたいと思います。

 ところで、日立キャピタルの株主資本は10%強で、低いと考える人もいますので、簡単に触れておきます。金融でもっとも高いのは私の知る限りでは三洋信販の37%ですが、金融業種に限って言えば、20%以上は高すぎるのではないでしょうか。
 なぜなら、長期投資のためには、ROE(株主資本利益率)が5%以上あることが望ましいのですが、5%のリターンを稼ぎ出すためには、株主資本比率20%の場合で、総資産に対して1%の税引き利益が必要ということで、貸出等の営業資産に対して少なくとも2%以上の利益を稼ぐということになります。リスクがものすごく高いビジネスでなく、堅実な金融ビジネスならその位が限界であり、ちなみにオリックスは7%台です。

 昨日発売された四季報をぱらぱらと見て、よいなと思ったのはローランドDG(6789)です。
「堅調」と書いてあります。来期1株利益76円、18円配当、1株純資産1040円、産業用機器(プリンタ、三次元工作機)での高技術力を考えると、時価670円は株価のケタが違うのではないでしょうか。3月に1部昇格で500円台から上がってしまったので、売りも買いもしていなかったのですが、また貯めこみたいと思っています。

 明日は3月20日、いよいよ期末に突入です。上旬に火柱高となった3月相場は中旬に入って急激にボリュームダウンしてしまいましたが、日本株の底入れが本物なら調整が長引くはずがありません。明日もしくは金曜にものすごく期待しています。


第151回 上旬高中旬安<3/14>

 今週は月火水と下げて、今日も平均株価がどうなるか非常に微妙ですが、私は朝安なら後場高、朝高なら後場はだれだれ、保ちあい始まりなら終日小動きになると考えています。所詮、当たるも八卦ではあるものの、日中の展開に一応の目安を立てから一日に臨むのが営業マンの習性でしょう。
 ただし、私は今週に入ってからは、平均株価の動きにそれほど関心を持っていません。常識的に見て、ハイテクや銀行がバリバリと上がり続け、ミニバブルの様相を呈することは考えにくく、ここにきての一服は大歓迎です。
 日経平均で1万1千円を割ったら、ちょっと心配で、一部の顧客とはそのときには信用の買いポジションを縮小する方向で検討しようという手はずになっていますが、それはあくまで2月後半以降に膨らんだ信用買いの縮小であって、本質的な弱気ではありません。

 株を買おうとしたら、あるいは買ったら、いつでも心配です。心配ではないとしたら、むしろ自分の感覚が麻痺しているせいです。2年前の夏、東京エレクなど半導体関連に馬鹿強気になってしまったことが今でも悔やまれますが、ネットバブル崩壊後も顧客の儲けが増加していたので、心配という感覚が麻痺していたと反省しています。
 しかし、株式投資をする以上、あまり心配しすぎるのもよい結果にならないと思います。3月危機がなさそうだといって上がった相場が、ちょっと下がると、元の黙阿弥に戻ってしまうのではないかと心配している顧客や営業マンもたくさんいます。人情はそうですが、この2年間の何回もの「往って来い」経験にどっぷりつかり過ぎていると思います。
 株は、上がるときは上がる、下げた期間が長ければ上がる確率が次第に上昇する。その当たり前の原則を今こそ自分に言い聞かせたいと私自身痛感しています。高値覚えも危険ですが、アツモノに懲りてナマスを吹くことも同じ位危険です。

 このところ、先駆の値嵩ハイテクに若干の利食いを出したものの、基本的には強気で、出遅れ株を買っています。日立キャピタル、丸紅、東京鉄鋼、キンセキなどです。
 多分、ハイテクと銀行の下げも今日でほぼ終わり、3月上旬の強烈上昇の反動としての調整がしばらく続くものの、早ければ、来週早々にも再び強い動きが出てくるのではないかと考えています。

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