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第50回 明るみが出てきた<2/24>

 先週はナスダックの急落でさすがに一段安かと思いましたが、予想外というか予想通りというか売り物は少なく、終わってみれば日経平均では横ばいでしたね。
 
 私は本当は今はあまり強気は言いたくないのです。というのも、お客様の状態から、ちょっとばかりの強気ではもう資金をこれ以上ぶち込めない状況にあり、買うための強気ではなく、上がってほしいための強気なら、やせ犬の遠吠えと思われても仕方がないからです。
 
 しかし、そのうえであえて言うのですが、今の相場はどう考えても弱くはないようです。
 日経平均がバブル崩壊後の安値を更新するかというセンセーショナルな株価位置で、売り物が減少しているという事実は、本当はすごい強気材料だと思います。
 
 ナスダックは仮に反転しても、陽性の上値追いになるとはだれも考えていません。日本の首相が交代しても、相場底入れのきっかけになればいいな位で、だれも本気で日本が変わるなどとは思ってはいないはずです。米国の株はどうやら10年来の天井をつけたようですし、日本の株はまだこれから10年調整が続くと公言している人もいる位で、そう考えていくとお先真っ暗に近い状況といえます。
 
 しかし、今明るい材料が見えないということは、株にとってはもしかしたら最大の好材料なのかもしれません。どんな悪材料も売られて株価が下落することにより、いつかは織り込み済みになり、相場が反転します。もっとも、個別銘柄ではまた富士車輌が破綻したように、反転せずに消えてなくなることもあるわけですが、まさか日本株全体が価値ゼロに向かっていくということはないでしょうから、売り物が出尽くせば、明るい材料がなくても底入れ反転することになります。
 
 したがって、先週の日本株が商い閑散だったのは、この場合、大変な強気材料だと思います。もし政府の対策など好材料の出現により反発した相場なら、反落した場合みじめなことにもなりかねませんが、好材料がなく踏みとどまった相場は、日に日に安値での売り物が減少し、底入れ感を強めていくはずです。
 
 もっとも、悲観的に見れば、先週はたまたま売り惜しむ投資家が多く、これからどっと売りが出るという考えもできますが、私は顧客向けレポートで分析している通り、その可能性は相当に低いと考えています。
 
 おそらく夜明けが近いのでしょう。90年代の底入れ時のように今回はV字型の急反騰はまずありえませんが、V字型でないから弱いということではないはずです。相場全体としては鍋底から静かにいつの間にか這い上がっていく可能性が高いとしても、だからこそ大勢的には根強い相場に発展する可能性は十分にあります。
 
 1年前の今ごろは面白いようにもうけることのできる相場でしたが、本当は怖い相場水準でした。今は、目先的には普通の銘柄ではまったく面白くない相場ですが、本当は安心買いしてもいいような相場水準なのだと思います。
 
 ところで、合同製鉄が若干動いてきましたが、残念ながら、あまり買い増しできないままです。人はどう見ようと私は安心感が非常に高く、上値余地も十分ある、すなわちなまじっかの優良銘柄よりローリスク・ハイリターンと考えているのですが、如何せん資金ポジションをより優先せざるをえない状況だからです。
 
 早く、思いきり強気をぶち、かつ実行したいものです。


第49回 それほど暗くはない<2/17>

 日経平均がまた逆戻りしてしまったのには驚きました。個別株の状況で見れば、まあ買われているのは小型が中心で、買いエネルギーの規模は知れているにしても、大型株だって一時ほど売り物がどんどん出てくるという状況ではありません。
 
 今週は米国の下げと日経平均大台割れ接近を受けて、また売り物が増えるかもしれませんが、もし週初めの売り物が意外に少なければ、相場の実質地合いはますます好転するはずです。
 
 外務員の中には、日経平均だけ見て毎日ため息をついている人もいますが、私は相変わらず手数料は上がらず暇を持て余しているとはいえ、気持ちは暗くありません。
 東京エレクが堅調なせいで、私の信用顧客の評価損は減少しており、担保株のうちごく一部はこの間びっくりするような上昇率となって、さすがに少し売ろうかと考えるほどです。
 
 たとえば、ナスダックJのエックスネット(4762)は、1月には1日で1株出来るかどうかでした。安値180万円で買い損ない、190万円から200万円超にかけて1株ずつ買ってもらったところ、その後も少しは上がったものの出来高は相変わらずで、もっと人気のある銘柄を買えばよかったと後悔もしました。
 しかし、先週末にはその不人気銘柄でさえ300万円をつけました。しかも、出来高は相変わらず10株にもなりません。ここまできても売り物が出ないということは、1月の値段がよほど安かったということだろうと自然に思えます。
 
 ナスダックが下がるのに、日本の小型株が毎日上がっているのは異常だと眉をひそめている外務員もいますが、私はそうは思いません。
 12月から1月にかけての小型成長株の値段はあまりにも安かったのではないのでしょうか。大型のドコモでいえば、50万円以下になったような銘柄が今思えばあちこちにあったようなものだと思います。
 
 その点、第一部の代表株ではそのころびっくりするような値段に売られたのは、私の考えではソフトバンクくらいです。
 第一部の代表株に比べ激安に売られた小型銘柄は、冷静に考えれば、代表株よりよほど将来の夢が現実的にあります。
 だから、もしかすると、今後単なるリバウンドに止まらず、息の長い株価上昇を果たす銘柄も相当に出てくるかもしれません。
 
 持ち株の上昇に浮かれているわけではありませんが、客観的に見て、現在の相場地合いはそれほど暗いものではないと感じます。
 
 ところで、私は合同製鉄という銘柄に2年間強気を言い続けてきましたが、ようやく待望の1株利益20円が見えてきました。下期の経常利益が10億円の黒字化から17億円に上方修正されました。今3月期は上期に多額の特損を計上したことから、通期でも大幅赤字ですが、このままの市況が続けば「半期20億円弱の経常利益が見込める」体質になったと社長が明言しています。
  
 昨年5月の決算発表前に「大幅な黒字化」予想を出して、大変な恥をかき、そのときには株価面での失敗にはつながらなかたものの、今思うと昨年後半の相場観の大曲がりにつながっていきました。私にとっては、合同製鉄の「大幅な黒字化」が実現されなければ、本格的な相場観の復調はないとさえいえるほどです。第一部市場が不透明な折、当面の株価については分かりませんが、もし5月の決算発表が順調なら、結果は自ずからついてくると考えます。


第48回 1つのチャンス<2/12>

 今週の相場は注目ですね。1月のようにミニSQ明けから7連騰の再現はないにしても、もし堅調を持続できれば日本株の底値は非常に固まることになるからです。
 日経平均を別にすれば、TOPIXや単純平均などではきれいな三尊底形成になり、2部や店頭指数は上昇波動確立も夢ではありません。
 週末の米国株が売られたのは残念ですが、今週は日本株にとって底入れ感を出す一つのチャンスだと思います。
 
 私はといえば、先週申し上げた通り、静観を基本にしてたいした商いをせず毎日を過ごしています。
 買うなら、明らかに小型ですが、無理をしたくない、というより、できないという事情があります。日経平均が下がっても、今回は私の顧客だけに限らず、信用取引客の担保状況はそれほど悪化せずにすんでいますが、まだまだ余裕は少なく、目先的にジタバタするより、次の本格的な戦いに備えるのが第一だと考えるからです。
 
 今週もし日経平均が底入れ感を鮮明化させても、まだまだ本格的な上昇局面入りまで先は長く、紆余曲折があるでしょう。今回の日経平均の上値の重さには、さまざまな理由が複合しており、単に底割れ不安が解消されたからといって、問題解決にはならないはずです。
 
 その点で、最近の小型株の上昇は、単に投機資金が値の軽そうなところに集結しているという解釈だけではなく、もっと本質的な意味があると私は考えます。
 店頭など小型株の好調は、前回の底入れ後の99年の圧倒的なパフォーマンスを踏まえているという意見があります。もしかしたら、一つの理由かもしれませんが、もしそれだけだったら、今後たいした相場につながらないでしょう。単に前回いい思いをしたという記憶に基づくものなら、その後に急激な下げに見舞われたという学習効果も働くはずで、おっかなびっくりのりバウンド相場なら、戻りは知れています。
 
 私は、現在の小型株人気は、おそらく相場全体が本格的な反騰局面に入った後も続く内容を含んでいると思います。次に来る本格的な相場は、99年の金融相場に対して、業績相場的な色彩を持つはずですが、その相場につながるものを現在の小型株人気が持っていると考えるわけです。
 
 買われている小型株は、単に値下がり率が大きかったというリバウンド期待だけの銘柄もありますが、強いのはELなど夢のある銘柄です。次に、成長性に比べPER割安と考えられる銘柄です。例えば店頭のソノコム(7902)はあっという間に2倍になりましたが、夢があり、PERも高くはありませんでした。ソフトバンクインベストメントに至っては、まさに夢の缶詰であり、銘柄自身の株価が低いという他に、これから投資する未公開株が今のような状況なら安く手に入るはずだという期待があります。
 
 米国では、シスコまでこけて、高PER株がことごとく売られた形になりました。すなわち、夢(将来性)よりも現実という相場ですが、日本では将来性を買う相場が今後も続く可能性は十分にあります。というより、日本の現実(在来の大企業)はあまりにも魅力がなさ過ぎるということかもしれません。
 
 多分、現在活躍している小型株の中から、日本の明日につながる大物株が出るのでしょうが、玉石混交の相場でもあります。私にできることは、顧客に余裕があれば、最低単位でも資金を割いていただき、明日に備えることのみです。


第47回 部分活況<2/3>

 利下げ後のナスダックがさえないのは残念でした。国内株はともかく、日本のハイテクはナスダック次第では一段高と期待していましたので、2月1日の朝はがっかりしました。なかなか思うようにはハッピイになれないものです。
 
 先週末は、ソフトバンクやセガなども頭打ちになり、主力株系はことごとく値動きが鈍くなる一方で、端っこのほうはすごかったですね。店頭株など小型値嵩株の賑わいにはびっくりしました。私も久々の大当たり銘柄、ナスダックJのソフトバンクインベストメントが朝方299万円まで買われて喜んでおりましたが、終わってみたら25万円安の255万円で、ちょっとしょげました。が、それでも買値からは2倍前後、最近の値動きはネットバブルの再来かと思えるほどです。
 
 先週大幅に買われた銘柄はおよそ3通りだと思います。
 1.大幅安していた小型成長株(生まれ値の低かった新規公開株など含む)
 2.景気敏感の国内系小型株
 3.ギャンブル性の高い日本独特のいわゆる仕手系株
 
 このうち、3についてはコメント外としますが、1と2には外国投資家も参加しているようで、必ずしも不自然な動きではないと思います。長い下げ相場の中で、あまりにも悲観的な株価になり過ぎていた可能性が高いと見られます。
 
 1年間近くも下げ続けたネット関連株はもとより、マツモトキヨシやファンケルだって、いかに業績に陰りが出たからとはいえ、下げ過ぎの水準だったのかもしれません。ゴールドクレストなどはなんの問題もないのにあまりにも過小評価であり過ぎ、店頭のソノコムなどは有望性を無視し過ぎていたのかもしれません。(私は、これらの銘柄については詳しく調べたわけではないので、例えばの話で単に「かもしれない」と思うだけです)
 
 これらの銘柄だけで見ていれば、先週はまさに活況でした。我々の仲間のうち、10人に1人位は春が来たように騒いでいました。そして、半分くらいは、ある程度は乗ってないと食えないとばかり、恐る恐る買いを入れていました。
 
 私はといえば、つくづく考えて積極的に動くことは止めることにしました。確かに今の現象はそれほど不自然ではなく、もしかしたら長続きするかもしれません。すなわち、ソニーや東京エレクなど主力株系にこだわっていたら、長期にわたって無駄な努力をしたことになる恐れも十分あります。しかし、それでも、今はあまり無理をしないことを基本姿勢にすることとしました。
 
 無理をするだけの余裕が乏しいことがもちろんあります。が、それ以上に現在が大底をつけた直後だとしても、もうけるチャンスは今すぐに焦らなくても、これからじっくりとあるはずだと思うことが最大の理由です。
 
 長期的にもうけるためにはどうすればよいのか。そのことをじっくり考えたいと思います。
 
 顧客によっては、安全性を重視するわけですから、何倍にならなくても、下値不安の小さなバリューの高い銘柄をじっくり見定める必要があります。また、顧客によっては、リスクを犠牲にしても何倍にも大化けする銘柄を紹介する必要があります。前者の場合、今の相場状況では特に急ぐ必要もなく、後者の場合、もしかしたら今買わないと安くは買えないのですが、それにしても何倍、何十倍にもなる銘柄なら、多少高く買っても十分すぎるほど報われるはずです。(例えば、この2年間の大化け株となったファーストリテイリングは、1000円台で買わなくても、2000円でも3000円でも率はともかく、値幅ではほとんど一緒の成果となりました)
 
 ただし、上記はあくまでも私の基本姿勢であって、もしお客様が、玉石混交の部分活況相場で渦中の栗を拾うことを望まれるなら、それも一つの投資の一法として、私は大賛成します。幸いにして、現在勢いがいい銘柄は、値がさでも100株単位で買える銘柄が多く、束にしてまとめて買ってもそれほどの金額になりません。


第46回 またしてもと思うか<1/28>

 7日連騰の後の反落は予想通りでしたが、4日続落は予想外でした。ただ平均株価では上げ下げがきわめて小幅で、1週間かけて1日分の値動きをしているようなものですから、連続高や連続安には通常時iほどの意味がないのかもしれません。
 問題は1万4千円が目先の壁になってしまい、1万3500円に近づくと、またしても安値更新不安が強まることです。先週末の朝は、市場全般に見送り感が急速に強まったため、値動きのよさそうなソフトバンクやセガに焼けくそみたいな買いが集中し、寄り後の数分間であっと驚くような急騰となりましたが、下げるのも早く、9時15分くらいからは、ほぼ全員ただ見ているだけの相場になってしまい、底の薄さを露呈してしまいました。
 
 NY市場やナスダックは、下げ相場の中でも大商いをやって非常にタフなところを見せています。それに比べ東京市場が「またしても」見送りムードに支配されつつあることは、内気の人間が言おうか言うまいかもじもじしているようなもので、非常に情けない話です。かくいう私も2週間前までは、再三書きました通り、どうなることかとカタズを飲んで見守っていたのですから、あまり大きなことは言えないのですが、それにしてももう少し、市場の参加者が自分の姿勢を明確に表現してもいいのではないかと思います。
 
 つまり、本来的な投資家は、先行きを弱いと思えば、目先上がっていても売るべきであり、先行きを強いと思えば目先下がっていても買うべきはずですが、現在の東京市場はほぼ全員がまるでディーラーになったかのように、超目先の動きだけで強気になったり、弱気になったりしているようです。もっとも、先行きが不透明だからこそ、今のような現象が起こると考える人もいるかもしれませんが、相場の先行きが不透明な時期は今だけに限りません。むしろ透明なときの方が少ないのではないのでしょうか。
 
 現在のように、ほぼ全員が風見鶏になったりするかと思えば、1年前にもあったようにほぼ全員で狂ったように強気になる、このような横並び傾向は日本市場の特質だと言われています。ましてや政府の株価対策(特に買い支え)を期待する風潮があることは、資本主義のダイナミズムが日本に根付いていないことの証明だと思われます。
 
 大銀行が倒産しそうなら公的資金の投入も必要です。しかし、株価は市場の価値判断にゆだねるべきであり、そして市場の価値判断は、参加者一人一人の多様な価値判断を集合して結果的に形をなすもののはずです。資本主義のダイナミズムは、市場を形成する参加者がいかに自由で多様な価値判断を発揮するかによって決まるもののはずです。
 
 話が固くなりましたが、現在の私はもう迷っていません。相場はすでに底を打ったという想定をもとに、小型株を中心にハイテク系の値嵩株のリバウンド狙いに徹しています。ただし、ソフトバンクは将来的にはまだまだ有望と考えますが、目先はあまりにも雑多なネットバブル株と連動高の形になり、単なるリバウンド人気の中心になり過ぎました。いかに現在の相場の本質がリバウンドだと言っても、光通信やトランスコスモスまで同じように戻すのでは、バブル崩壊の教訓が生きていないことになります。もっとも、現在のネット株の買い方は、そんなことは百も承知で板の間稼ぎに徹しているのでしょうが、そのような買い方だけだったら、相場は短命でしょう。
 
 私はもっと本格的なリバウンドを期待しています。単なるリバウンドではなく、次の本格的な上昇が日本株に始まるのはいつか分かりませんが、もし日本株がすでに底を打っているとすれば、数ヶ月以内に始まるはずです。そして、それは前回の上昇がゼロ金利解除に始まる金融相場的なものであったのに対し、業績相場の色彩を強く帯びるはずです。
 
 せっかく株を買うのでしたら、丸善や光通信など今だけ騰がるかもしれない株ではなく、業績相場でも本格的に買われるかもしれない株を買いたいものです。(丸善や光通信などと馬鹿にして書きましたが、両社が絶対に業績を急伸させることはないと断言するつもりはありません。ただ、現時点では、同じくらいの値ごろの銘柄に比べ、はるかに前途の希望は少ないはずです。というより、買っている人たちの多くは実際問題、企業の将来のバリューに頓着なく、1回転狙いだけで買っているのではないでしょうか)
 
 現時点では、2-3月の市場動向が不透明で、本格上昇はまだ先と考えますが、次の相場での有望株の上昇は、緩やかながらもうすでに始まっているはずです。前回の相場での花形株ファーストリテイリングが安値を1050円(PER9倍)をつけたのは98年6月で、全体の底入れに先行しました。同様に前回の花形だった光通信やソフトバンクについてもほぼ同じことが言えると思います。
 
 今は無名の小型成長株に、その価格水準から、大きな夢とある程度の保有安心感が兼備されていると考えます。


第45回 やっと普通に<1/21>

 今週の顧客向けレポートに、ようやく強気意見を明確に書くことができました。
 遅い! なぜ最安値のときに強気にならないのかと顧客からもお叱りを受けました。しかし、私は神様でも、評論家でも、大手の営業マンでもありません。結果的に当たればいいというものではなく、一寸先は闇の相場の世界の中で、どんなことがあっても最低限守っていかなければならないものがあるのです。
 日経平均が1万3千円ぎりぎりに落ちた11日の木曜日、私のもっとも頼みとする顧客は、15年間にわたって守り続けた資産が壊滅寸前のピンチにありました。私と顧客が過去の暴落局面よりもはるかに強気で臨み、信用のポジションをあまりにも大きくとりすぎていたからです。
 
 もし、あの日の夜米国株にちょっとした下ブレがあって、翌日も日本株が売られたらと思うとぞっとします。いずれ、どの時点からかは急反発に転じたとは思いますが、もし2日遅れたら、私の顧客は追加の追い証売りと損金のための現物売りで修復困難の状態に陥っていたはずです。そして、このような顧客は私の周りでもたくさんいました。翌日の金曜日、場中に気分が悪くなり、救急車で運ばれた営業マンが出ましたが、詳しい原因は分かりませんが、相場状況が影響していることは確かだと思います。
 
 もっとも、私も相場全体がこのまま短兵急に上がっていくとは思ってはおりません。そんなに簡単に解決するなら、みんな幸せになります。山あり、谷ありは相場の常です。もし月曜日も上がれば7連騰になりますから、目先的には反落の可能性が増大します。そして、悪いことに、日経平均1万4千円乗せ後に反落し1万4千円を再び割れば、また弱気ムードが支配的になりそうな予想もできます。
 
 しかし、それでも、先々週のようにパニック寸前の弱気市場には簡単に落ち込まないはずです。信用の顧客だけで見ても、ポジションは随分楽になっています。日経平均ではたかただか6%の上昇ですが、私の上記の顧客は分散投資しているのですが、評価損差し引き後の実質資産は最悪期に比べ90%以上改善しています。すなわち、1週間で実質資産が倍近くになったわけですが、信用のレバレッジでこういうことが起こります。しかも、今回は信用取引残高多いハイテク人気銘柄ほど急落度がきつく、かつそれらの銘柄が軒並み20%以上のリバウンドを示したわけですから、回復度が目立つのは私の顧客だけではないはずです。
 
 では、日経平均が再び元の安値に戻れば、信用顧客の状態は再びパニック状態になるか? そうは全然ならないと思います。詳しい分析は省きますが、多分日経平均が再び急落しても、今回急反発した銘柄の下げる率は緩和されるはずです。深刻な投げが出た銘柄は、新たな悪材料が出ない限り、下値では底堅さを保つと思います。これはおそらく、アメリカのハイテク株についても言えるでしょう。
 
 ハイテクが底堅ければ、後は国内だけの問題になります。これは、現在の日経平均の水準では不安感が払拭されないので、まだまだ予断を許さないわけですが、もし日経平均が1万4千円台を完全に固めれば、日に日に後退していくはずです。
 
 去年後半は大はずれとなったので、あまり自信満々では言えないのですが、いろいろな意味でやっと相場が普通に戻って来つつあることは確かだと思います。


第44回 迷う理由<1/14>

 新年に入り、米国の主要ハイテク株には下値感が出てきました。昨年の日本株はナスダック指数の上げ下げにほぼ連動していたのですから、本来なら日本株にもそろそろ反発機運が出てきて当然ですが、日本株はむしろ下値不安が強まっているといってよいでしょう。
 
 悲しいことです。米国の場合は、株が下落すれば株の魅力が増したと考える投資家も多くなり、強弱感の対立から出来高が急増する傾向にありますが、日本の場合は逆に買い手がますます減少し、株に対する期待感がますます薄らぎます。
 
  その原因は、日本の市場の体質的な問題もあるはずですが、なんと言っても銀行や上場企業の保有(持ち合い)株式が多いということが最大の理由になっているわけで、もしこのまま株価が下がり続けたら、どんな混乱が起こるか分からないという恐怖が日本株には存在します。
 
 である以上、下がったから買わないのはおかしいと、日本株の場合は簡単にはいえないのです。
 
 私は、日本の金融システムは大丈夫だと思います。しかし、ケインズの美人投票の理屈で、結果的には大丈夫なものでも、相場参加者の多くが心配だと思えば、株価は底割れしていくことだって、ないとはいえないのです。
 
 しかも、私の考えるところでは、実は相場参加者のほとんどは、98年よりもはるかに日本に金融危機が発生するとは考えていないのではないのでしょうか。私と同じく、自分は大丈夫だと思っても、ほかの人間が心配だと思い株を売ったら下がる、まさにそのことが心配なのだと思います。
 
 いわば、共同幻想です。しかし、多勢に無勢である限りは、市場に違う景色が見えてくるまで、じっと我慢するしかないと思います。
 
 今週の顧客向けレポートは、「非常な選択か留保か」というこむずかしい題で、そのことに触れていますが、結局のところ、はっきりとした強気は打ち出せませんでした。
 
 女房の郵便貯金が満期になりますが、彼女から言い出さない限り、私は情けなくも、ぜひ株にしろとは言えないかもしれません。
 
 ただし、ハイテクに限れば、ナスダックとの連動性が今後も密接なはずなので、インテルの決算発表を無事通過すれば、相当に下値安心感が台頭すると考えています。昨秋、半導体株の下落に先鞭をつけたドイツ証券が先週東京エレクなどを大幅に買い越したのは、悔しいですが、希望の光に感じています。


第43回 2001年に出発!<1/3>

 暗い年末の相場でした。正月休みに入っても、私の夢見はずっと悪く、おとそもほろ苦い正月でした。
 いやな書き出しになりましたが、仕方がないと思います。我々外務員にとって、顧客の資産の目減りは月々の収入減に直結します。年末の相場水準は危機的で、もし新年の相場が引き続き弱含み、信用取引の顧客にさらに大きな被害が出るのなら、比較的に余裕を持ってやってくださっている私の顧客でさえ、取引の継続に大きな不安が生じます。
 だから、簡単に「新年おめでとうございます」などとは申し上げられないのです。
  
 しかし、実のところ、私の気持ちは暗いままではありません。暗いときにしょんぼりし、明るいときにはしゃぐことなら誰にもできます。我々が目指しているのは、つねに人間でありながら、つねに冷静であることです。
 
 過去の経験から言っても、暗い年末の後の新年が必ずしも悪い相場になるとは限りません。むしろ、大納会高値の後の新年初日からバブル崩壊が始まったように、期待とは反対の現実がやってくることだって多いくらいです。去年も、4日の発会こそ年末にストップ高したIT銘柄に買い気むんむんでしたが、5日には急落、今思えばネットバブル崩壊の前兆となりました。
 
 いずれにしても、相場の一寸先は闇です。ましてや、頼りとする顧客は相場動向次第では建て玉を整理せざるを得ない状況にあるか、多少の余裕があっても、もし日経平均がさらに下落するなら非常な覚悟も必要な局面です。したがって、相場の方向に安易に期待感は持てません。私は新年の相場にどのような期待も持たず、予想もなるべく控えめにして臨もうと思います。
 
 私が今いちばんやらなければいけないと思っていることは、まず第一に、どのような相場状況になっても、冷静に判断し、かつ将来には希望を持って、できれば機動的に行動しようという心構えを持つことです。そして、第二に、株の本質的な値打ちに自信をもつことです。
 
 暮れからずっと、株とはいったい何だろうと考えていました。株の本源的な価値については、私は疑ったことはありません。株が債券と同じく投資家に必ず収益をもたらす証券だということは疑いもありません。もっとも、どの銘柄をどんなに高く買っても必ず儲かるというふうには私は考えません。高く買えば損するのです。普通の値段以下で買った場合にのみ儲かるのです。その意味で、株は決してゼロサムのゲームではないと確信しています。
 
 しかし、よい株を安くという我々の願いは、少なくとも昨年後半にかんする限り、なんのプラスももたらしませんでした。まるで、ゼロサムゲーム以下のやればやるほど深みにはまっていくような分の悪いギャンブルをやっているような、むなしさを感じるのみでした。
 
 毎日下がる株。だが、株が悪いのではありません。高すぎたのが悪いのか、安く売ってしまう我々が悪いのか、そのいずれかです。そして、最悪なのは、高いときには自信満々なのに、安くなってしまうと高すぎたから売るのか、ただ不安で売るのか、それさえも分からず判断を停止してしまう我々自身の姿です。
 
 新年の相場では、最低限、株の価値に対する信念を保持していきたいと思います。株の価値は、資産の時価と今後の収益の現在価値の合計であることは疑いありません。EVAやBEOなど最近流行の投資尺度のことを持ち出すと長くなるので止めますが、どのような立場から見ても、日本株の相当多くが解散価値を下回っている現状は、もし市場が正しいのなら、@資産の実状がものすごく悪く、A今後の収益もものすごく悪化する可能性が高いということになるはずです。
 
 果たして日本経済の先行きは、それほどまでに絶望的なのか?
 現段階では、その点を市場がどのように判断するのか、答えを待つしかないと考えております。
 すなわち、私は基本的に相場転換の確認を待つという情けないスタンスで、2001年を出発せざるをえない状況です。


第42回 底入れ後の展望<12/2>

 日経平均の1万5千円台回復も見えてきて、ほっとしています。特にこの1週間は、ナスダック安の中で日本株が頑丈な動きをしたこと、個人好みの中低位株が久々の大商いになったことなど、非常に心強い展開でした。
 セガやダイエーのようなボロ株(?)も戻したので、我々外務員の表情も久々に明るくなりました。もっとも、最後の最後で売り方に転じて、往復ビンタの可能性が出てきて、頭を抱えているものもいますから、所詮、どんな状況になっても(護送船団方式が復活でもしない限り)全員でハッピイになれる業界ではないのですが・・・・。
 
 久々に相場観めいたものを書きたいと思います。夏場以降、大はずれの連続で、東京エレクやオリコの建て玉処理に追われた日々でした。毎週の相場観レポートは続けているものの、本音はむしろ、「お客さん、どうなるのか教えてくれませんか」という心境でした。
 それが決算発表が進行するにつれ、例えば太平金のように個別では当たりをとって、徐々にリズムを取り返してきました。だから、もうそろそろ曲がり屋ではなくなったと思い、自分自身の相場観を再構築し始めた次第です。
 
 最新のレポートに「日本株の底入れが現実化」という表題を掲げました。ちなみに先週は「底入れの可能性が増大」でした。つまり、相当の確率で日本株はすでに底入れしたと考えています。
 
 底入れ後の動きは2年前とは違ってくるはずです。2年前は10月の底入れ後、11月に急反発、12月に反落、1月初めに二番底という形になったのに対し、今回は12月の反発は平均株価では緩やかなものに止まり、その代わり来年に予想される反落も軽微で、基本的にはすでに現時点から上昇相場が形成されると考えます。
 
 2年前の場合は、本格上昇は底入れ後5ヶ月たった去年の3月からで、その時点で金融相場の色彩を帯び、ほぼ全面高、そしてその後に次第に二極化していくわけですが、今回の上昇はもっと地に足がついたものになるはずです。すなわち、当面は玉石混交の低位株への人気集中が目立つにしても、本質的には買われる銘柄はその実態により選別され、グループを超えて広範囲に人気が分散されていく傾向を持つはずです。
 
 だから、おそらくは、低位株だからよい悪い、ハイテクだからよい悪いというわけではなく、あくまで銘柄そのものの魅力が問われるという願ってもない相場が大いに期待できるはずです。
 
 目先の資金効率から低位株に割り切って資金を集中するのも一方ですが、時間をかけても大きく狙うなら、やはり魅力的なのは、二部・店頭の小型株です。
 
 2年前は、ノーマルに買える銘柄として結果的に最高の成果を挙げたのは、ファーストリテイリングでしたが、今回は別の不人気銘柄が結果的にそのような形になるはずです。
 
 何を買うべきか、それが問題です。
 
(追記)また調子のよいことを書いてしまいましたが、失敗に懲りて永久に自分の意見を言えなくなったら、証券マンを辞めるべきと考えます。


第41回 冬があるから春がある<11/23>

 相場は完全に冬枯れですね。日経平均1万4千円を気温0度とすれば、氷点下も考えられる状況となってきました。2年前には、気温マイナス10度以下になり、さくらか富士かのどちらかが倒れるんじゃないかないかというくらい危機的な状況だったのですが、今回はまだそのような危機感がありません。
 
 危機感がないから、相場にメリハリがなく、逆に反騰の期待も薄まっているという相場上のデメリットがあります。しかし、2年前のように、明日にも日本経済にパニックが起こるかもしれないと考え、狼狽売りが続出する状況ではなく、したがって現在のジリ貧推移はやむをえないと私は考えられるようになってきました。
 
 いま問われているのは、日米ともに、株の本当の値打ちだと思います。
 
 日本でいえば、2年前にとりあえずバブル崩壊後の底をつけたわけですが、その後の上昇はいわば理想買いで、足が地についたものではなかったといえます。去年の春に全面高となったものの、冷静に考えればどの会社も仲良く生き残れるような将来があるわけではないのですから、当然ながら二極化になった、そのあげくにネットバブルのお祭り騒ぎになり、その反動が来たのです。
 米国の方は逆に、好実態続きの10年間にそろそろ秋風が吹き始め、右上がりの将来に対して疑念が生じ始めたのです。業績の急悪化は考えにくいものの、いままで通り高いPERで買い続けてよいのかどうか、非常に健全な株価判断が働き始めたと評価できます。
 
 気温何度で日本株が二番底をつけるのか私には分かりませんが、いずれにしても、底打ち後の上昇は、この2年間の繰り返しではなく、もっと地に足がついた買い方、すなわち現実買いになるはずです。
 
 ある株に投資して、じっと持っていれば、いったいどのようなメリットがあるのか? この簡単なことが日本の株式市場では長い間、脇に追いやられていたと思います。たとえば、ソニーを買えば1株が2株になるということまではよいのですが、その2株がまた3万円の値打ちになるためにはどういう条件が必要かということを考えようとしたら、おまえは馬鹿かといわれかねない風潮が当時ありました。かつて250万円のNTTや、1000円の鉄鋼株に対してと全く同じ風潮でした。
 
 おそらく日本の株式市場は非常に健全化しつつあると思います。相場は悪くても、ニチメンは100円を大きく突破してきました.半導体株についても、PER割高の富士通はここにきて無残な下げ方となりましたが、業績の裏づけのあるものは、意外に底堅い動きとなっています。
 
 あまり希望的な観測は述べたくありませんが、春に対する希望だけは出てきたと考えています。


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