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第23回 2002年05月29日(水)


◆保合い放れについて儲かるか?◆
<保合放れの統計的研究>
成功した例

◆失敗した例


○保合放れの条件設定の一例○
上記条件による信用銘柄の確率検証
結 論
上記期間に限定する限り、保合放れに付く投資法は極めて効率の悪い投資法であるということになる。

大半の場合がその後60日以内に1割も上昇せず、3割以上上昇し、この投資法が成功したと考えられるケ−スは1割強しかない。

しかも成功したケ−スに当たったにしても、その銘柄を最高値で売れる保証はなく、67.64%の失敗をカバ−することは不可能であると考えざるを得ない。

それでも多くの投資家が「保合放れに付けば儲かる」と信じている理由
人間の視覚の問題

チヤ−トブック等で過去の保合放れのケ−スを探す場合、人間の目は本能的に高値をつけた銘柄をその前に遡って保合放れのパタ−ンを探す。
この場合すでに上昇しているという事実があるので保合放れの銘柄は全て、その後上昇しているかのように錯覚してしまいがちである。
この場合保合を上放れた銘柄でその後、大きく下がってしまった銘柄は見落とされてしまう傾向がある

仕手株での成功体験

ケイ線の知識があり(保合を上放れた株は上がるといった程度の)かつて仕手情報が早めに入る立場にいたとすると、その仕手の介入した銘柄が保合を放れたところで買えば必ず儲かったはずである。(この場合は保合放ればかりでなく新値三本の陽転でも一目均衡表の雲抜けでも何でも
かまわない。要するにトレンド・フォロ−型の投資法であればよい)

このようなケ−スで成功した経験のある投資家は、その成功が仕手の介入のおかげであることを忘れてしまって、己の相場技術、パ−タ−ン認識に対する根拠のないな自信を過剰に持ってしまう

仕手はいつかは凋落し、情報源も枯渇する宿命を持っている。そうなると保合を上放れた銘柄を買ってもいっこうに儲からなくなる。

落魄したケイ線マニアから「このごろの相場は間違っている」というせりふを何度聞かされたことか
間違っているのは相場ではなく、当人の相場認識である。
概してこの手の成功体験に毒された投資家は全財産を失って市場から強制的に撤退させられても
まだ自分の過ちに気づかないケ−スが多い。

確率に裏付けられた投資法を実践しよう
前回までに
1)騰落レシオによる投資タイミングの決定法
2)日経平均の変動パタ−ンによる投資タイミングの決定法
とその時における個別銘柄の投資法を解説した。
今回は手順を逆にして個別銘柄から全体の投資タイミングを探る方法を紹介したい。
高確率の個別銘柄検索法
上記条件合格銘柄の確率検証(翌日寄付きから60日以内の)
この検証結果を前の保合放れの検証結果と比較して頂きたい。
全体の平均上昇率は保合放れの約4倍、しかも3割以上値上がりする銘柄はいずれも50%以上で、その平均上昇率は6割をこしています。(検索対象銘柄は全信用銘柄)

(よくチャ−トの入門書などに、このパタ−ンで買えば80%の確率で成功する、といったことが書いてありますが、どんな銘柄を対象に、どの時期に検証したらば、そうなったのか明示してあるのを見たことがありません。どうしてでしょうか?)
ここでいよいよ3番目の買いタイミングを探る方法を解説します。
例えば上記3番のシ−トの合格銘柄数を日経平均チャ−トと併記してみます。
2001年12月21日の例
合格銘柄が多いので、市場性、株価面での付帯条件をつけ銘柄を絞り込みます。
付帯条件として株価1000円未満、出来高100日平均で50万株以上の貸借銘柄とします。
上記の点をクリア−した銘柄を3番シ−トで検索すると以下の銘柄が合格そます。


失敗する確率が約15%、3割以上あがる確率が約55%あるのですから上記4銘柄を同時に買えば平均的には失敗する可能性はほとんどない理屈です。
果たしてどうなるでしょうか?4銘柄を翌日の寄付きで買ったことにしてこの4銘柄の合成チャ−トを
作ってみましょう。

合格4銘柄の合成チャ−ト(日足)

このチャ−トを日経平均のチャ−トと見比べてください。
当たり前のことを理詰めで段階を踏み銘柄を絞り込む合理的な投資法と従来のケイ線の手法との圧倒的な差をご理解頂ければ幸いです。

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