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第100回 ステラケミファ<8/30>

 とうとう日経平均1万円割れが現実味を帯びてきました。先物をやっている顧客から「今日は買いと思うか?」と聞かれ、私は「分かりません。万一、日経平均が9800円になったとき我慢できる余裕があるなら、ロング覚悟でロング(買い)でしょう」と答えました。
 この期におよんでも、私は個別株の値打ちには信念があります。幸いにして京セラはこのところ値を戻していますが、どう考えても買う値打ちがあると思える、つまり欲しい株が他にもたくさんあります。私には値打ちがあると思えても、売る人が多ければ値下がりするわけですが、値打ちが本当にあるのなら、一時の値下がりは時の運と割り切る他ないと考えます。
 では、その値打ちの根拠は何か? 先日の減額報道で、私自身も値打ちを大幅に減じてしまったと考えるステラケミファ(4109)を例にして、考えてみたいと思います。
 
 ステラケミファは、ニッチ分野ながら半導体や液晶製造工程で必要なふっ酸加工技術でダントツのシェアを持つ小型優良企業です。半導体不況の中でも、信越化学と同じくらい収益の底堅さを発揮すると見られていました。
 しかし、月曜日に利益4分の1という減額修正を発表しました。普通の半導体関連なら当然覚悟すべき水準ですが、悪くなっても20%くらいの減益だろうと見込んでいた我々にとっては大変なショックでした。
 買い物がほとんど入らない中、火曜水曜と売り物残しの連続ストップ安で800円安となり、今日210円安の1620円でようやく売り買いが合致しました。

 本来なら、目先の利益が減ったからといって1000円以上も値下がりするのは、過剰反応と思いたいのですが、必ずしもそうは言えません。まず第一に、業績が底堅いと判断していた投資家にとっては、今回の発表によって、自分の判断と違う銘柄であることが判明したのですから、値段に構わず売却してしまおうと考えるのは当然だと思われます。第二に、今回の業績悪化が、単に目下の業界環境がひどいということを意味するだけならまだしも、この会社がこれまで続けてきた安定成長的な収益構造に、根本的にひびが入ったのではないかと考えると非常に悲観的になります。

 そのような中、発表後にレーティングを「買い」から「売り」に180度変更したあるアナリストの文章を見て、なんだ、これは、と思いました。判断変更の趣旨は、要するに、この会社の成長性は不変だが、今期の業績急落により来期はせいぜいに見ても利益2倍がいいところだから、今期PERでみても来期PERで見ても割高だから「売り」に変更するというものです。

 私が疑問に感じるのは、このアナリストの本音はいったいどこにあるのか、ということです。本気で「成長性は不変」と考えるのなら、今のような環境でPERが高いから割高だというのはナンセンスです。もしそうなら、東京エレクの6000円台はどう説明するのでしょうか。
 私は、判断を「買い」から「売り」に変更するなら、「成長基盤に疑問が生じた」と明快に自分の根本的な見込み違いを認めるべきだったと考えます。そして、もしそこまで言いいきる自信がなければ、判断を保留すべきだったのではないかと考えます。

 さて、私が勧めて買ってもらった顧客の持ち株をどうするかです。私は次のように考えています。
 まず当面は1500円台が底になると考えます。この会社の成長基盤そのものにひびが入ったかどうか簡単に結論が出る問題ではありません。成長性が完全に否定された場合は1000円近くに落ちてしまう可能性がありますが、多分杞憂に終るでしょう。もし減益が今期だけの問題で、将来的に1株利益100円以上での成長路線に復帰できるなら、明らかに割安と判断できます。
 では当面の上値はどのくらいかといえば、半導体関連に対するマインドが現状レベルなら、2000円程度だと思います。杞憂だとしても、成長性への懐疑は引きずり続けるからです。もっとマインドが改善されたときには、なぜあのときはいろいろなことが心配になったのだろうと不思議に思えることもあるかもしれませんが、現状では、不安感を完全には否定できません。
 以上の考えから、余裕のある顧客には、今日は、目先リバウンド狙いの買いを勧めています。4000円から買い下がった持ち株のリバウンド後の処置については、今は判断保留です。

 ステラケミファについて述べましたが、他の銘柄についても、ほぼ似たような考え方に立ち、売り買いの判断をしています。


第99回 トンネルの中で<8/28>

 先週末の米国株高で基調転換に少しは期待が高まるかと思いきや、昨日の日経平均は100円高に終わり、今日は200円安、また新安値に近づいています。
 今日は特に我々の仲間は暗いですね。ハイテクの損も大きいですが、中外鉱など仕手人気を集めていた銘柄の損も馬鹿にならないようです。そこにきて化学の優等生である日立化成の利益が4分の1というのが素材株全般のマインドに影響し、持ち合い解消売りで下げているのか、その先回りで下げているのか分からない形で内需関連を含めた全面安になっています。
 私は、日立化成以上に減益抵抗力があると思っていたステラケミファが、やはりなんと利益4分の1への減額修正で、強いショックを受けました。
 暗い気持で考えると、なにもかもが暗く見えます。トンネルの中にいるようなもので、夜昼の区別がつきません。暗闇の中では、人間は明るいことよりもますます暗いことを想像し、恐怖心理に走りがちです。

 マスコミが書き立てているように、IT不況が本格的な世界デフレにつながっていく確率はどのくらいあるのでしょうか? 正直なところ、私には分かりません。現象的にはまさにその事態を彷彿とすることが起こっていますし、簡単にそんなことは杞憂だよといえない状況にあることは確かです。
 心配です。そして、心配だから株を買わないという人がいて当然です。私もお客様がそう言えばそれに従います。しかし、私自身は、心配なときだからこそ勝負してみたいという気持に強く駆られます。気が弱いくせに、乱の中で自分を発揮したいという幕末の志士みたいな心情もあるのですね。
 私がいま気をつけていることは、その自分の心情を顧客に押しつけ、人のフンドシで相撲をとってしまうことです。とるべきはあくまで自分の相撲であり、顧客は顧客の相撲をとるべきであり、たまたま顧客と私の目指す方向が一緒なら、その顧客と一緒に相撲をとればよいと割り切っています。

 それから、もう一つ気をつけるべきは、単に意地だけで相撲をとってしまうことです。結果だけを見れば、株の世界では意地を貫き通せばたいていの場合成功するかのように見えます。たとえばネットブームの中で、カラ売りで負けても、そのまま売り上がれば成功につながったはずですし、買った株が下がっても、頑張り続ければ損しないですむことが多いということはいえます。しかし、仮に意地だけで成功にこぎつけても、その成功体験は相場の上でプラスになるとは思えません。意地の泥沼でフレッシュな発想を失った営業マンや顧客や株式評論家はたくさんいます。

 臨機応変と状況に流されるのとは紙一重です。つねに変化できるフレッシュさが必要だし、かつ信念を簡単に曲げてはいけないという二律背反みたいなところで、たえず選択を求められているのが株式投資です。

 つまるところ、本日現在でも私は強気を継続しています。その信念の拠りどころは、今回の株安の震源地である米国市場に比べ、日本の株式市場は現在あまりにも感情的に揺れ動き過ぎているのではないかと判断されることです。
 前々回に、私は日本株に強さが出てきたようだと書きましたが、1週間もたたないのに今度は内需関連株も含めて弱気一色に陥っています。これを状況の変化とみる人がいるかもしれませんが、私には感情的な揺れ動きとしか思えません。
 もし市場が感情的な要素に大きく支配されているとするなら、その上げ下げに深刻な意味を持たせる必要がない、というのが私の結論です。

 ステラケミファの大幅減額は事実ですから、これについては考えを練り直す必要がありますが、今日はどうせストップ安ですから、ゆっくり考えることにします。
 このあおりで、順調過ぎるほど上昇したマイスターに利食いの売りを出してしまいました。よく考えれば、同じ半導体関連でも収益の関連性はなく、弱気になる必要はなかったのですが、期待していたリアルビジョンの権利落ちがそれほどでもなかったことも影響しました。


第98回 不安と混然<8/24>

 今日はアンリツが1100円台すれすれ、ステラケミファが2600円台と、このところハイテクの中では比較的値もちのよかった私のお勧め銘柄が急落し、うめいています。
 最近はお勧めしていませんが、残高のあるカテナがとうとう500円割れになったり、残高はありませんがヤフーがボロボロに下げているのを見ると、何もかもが不安な気持ちになります。

 不安感があるのは人間だから仕方がないと思っています。問題は、その感情を冷静に整理整頓できるかどうかです。お客様の中には、だめだったら仕方がないよ、全部なかったと思ってあきらめるから、と実にさばさばしたことを言ってくださる方もいます。その方は私の顧客では唯一限度いっぱいの信用取引残高があるのです。しかし、私はそのお客に対してさえ、もしそのお客の財産がなくなったら自分の手数料は、仕事は、生活はどうなるのだろうかと不安になり、くよくよと考えてしまいます。

 そのくよくよの結果ですが、くよくよしても仕方がない、何かを選ぶ他ない、という簡単な結論に至ります。すなわち、お客様にまず選んでもらい、はっきりとした選択があるならそれはそれでよし、もしお客様に迷いがあるのなら、私も一緒になって迷っていてはいけない、そのお客の状況に合わせて明確な意見を述べなければいけない、という当たり前のことです。

 そういうわけで、最終的には私も結構元気にしています。それに第一、内需関連株だけに限ってみれば、決して暗い相場なんかではありません。
 今の相場参加者の代表的なセンチメントは、次の2通りに分けられるはずです。
@ 日経平均が下がるから、株は買えない。
A ハイテクはだめでも、内需は別だ。
このAがある分、3月よりははるかにましですね。もっとも、その分、ハイテクから内需への乗換えが活発化しており、ハイテクだけで見れば下げの厳しさは3月よりはるかに増大しているのです。

 ところで、機関投資家の乗換えがいつまで続くかですが、これは結局、ハイテク相場が完全に反転するまで続くでしょう。
 ナスダック指数自体まだ新安値ではなく、米国の半導体株指数がそれほど安い水準ではないのに比べ、日本のハイテクの下げがきついのは、明らかに機関投資家の乗換えがなだれ現象のように起こっているからと思われます。
 遺憾ながら、彼らのハイテクの持ち株比率はまだ高く、売る量にはこと欠きません。ハイテクがさらに下げれば、買おうとする勢力があっても、大勢は市場追随型の行動を取るはずです。
 機関投資家が売る限りハイテクはだめだという人がいます。しかし、それは正しくないと私は思います。ハイテクがだめかどうかは別のところで決まります。今はハイテクがだめだから売られているのであり、だめではない時期が来れば、彼らが売ろうが買おうが株価は上がるはずです。

 もっとも、機関投資家にもいろいろあります。例えば、さわかみファンドは、去年はハイテクの高値を追いかけず、ネットバブルの崩壊の中でまったく無傷でした。今年はハイテクに対して強気と聞いていましたので、さっき基準価格を調べたら、10,383円と5月からは随分低下していました。しかし、このファンドは簡単にハイテクを売って内需関連に乗り換えるようなことはしないはずです。ファンドは、本来戦略的な運用を目指すべきもののはずであり、状況に合わせて右往左往するなら、機動的というより素人同然というべきでしょう。

 京セラの1株利益は、会社の正式発表で260円レベルとさらに低下しました。半導体関連小型では赤字も続出というひどい状況になってきましたが、問題は今および過去のことではなく、来年回復するかどうかです。私はいずれ回復することは間違いないと思いますし、米国の関連株の株価で見る限り、大きな破綻はなさそうで、回復は時間とピッチの問題という方向に固まりつつあるようです。だから、資金と気持ちに余裕があれば、買いだと思います。
 今朝の日経で、マイスターエンジニアリング(大証二部4695)が10円配当を一挙2倍の20円にすると報じられています。この会社は半導体関連ながら、設備のメンテナンスというユニークな業態です。上場直後の98年にはそこそこの成長株人気がありましたが、その後業績が伸び悩み低PER株になってしまいました。今回の増配は、業績動向に相当な自信を持っている表れと考えられ、1株利益55円、20円配当、1株純資産584円、自己資本比率71%の内容から、600円くらいまでは買えると考えます。

 いずれにしろ、当面の相場は、ハイテクの本格的な反騰が考えにくく、しかも世界が破滅に向かうのでなければ、人気の内需関連株だけではなく、いろいろな切り口からの選別投資が可能な局面であり、混然とした株価形成が続くと私は考えます。


第97回 内需関連株高をどう考えるか<8/22>

 休んでいる間に、ハイテク株が一段安となりました。昨日は日本を代表するブルーチップであるソニーとホンダが売られ、日経平均はザラ場安値を更新しました。
 その一方で、不動産株を中心に内需関連株の動きはきわめて好調です。この現象をどう見るかで、意見が分かれます。

 小泉内閣の政策関連だと解説する人もいますが、だいたいその手の講釈(相場テーマ)は、証券会社の情報部門の机上で作られており、まことしやかではあるものの、「実」が感じられない場合が多いと私は思います。
 「実」(じつ)とは、端的に言えば、自分のお金(あるいはかけがえのない自分の顧客のお金)で本当に買いたいと思うほどの意見かどうかです。
 私の感じるところでは、たいていの場合は、評論家の講釈に止まっていると思います。今回の場合でも、政策関連だディズニーシーだと騒いでいる人が本当にそれらの銘柄の将来が明るいと本気で思っているかどうか大いに疑問です。

 私自身は今現在、怖くて株を買えません。NYダウが急落したら、世界経済がどうなるかと思うと、合同製鉄のように安全だと思っている株にさえ手が出ません。ハイテク以外でも、世界経済への不安感が高まれば同じく売られるだろうからです。
 しかし、現実の相場は、NYダウが下がり、日経平均が下がる中で、内需関連株が思いがけない強さを発揮しています。ハイテクが買えないからという消去法的な次元や、どこどこのレーテンングが上がったからという次元より、もっと「実」がある、ひたひたとしたものを感じるのは私だけでしょうか?

 私はこう思います。今現在で、いちばん恐ろしいのは世界経済の縮小スパイラルです。昨日の日経夕刊の見出しは「世界デフレ」でした。もし本当にそうなるなら、株は買えません。しかし、現実の市場で、財布のお金をはたいて(大部分は乗り換えだとしても)株が買われているということは、市場は、そうはならない、そのリスクは買いだという判断をしていることになります。
 すなわち、現在のIT不況は、世界景気に重大な影響を与えているにしても、破滅的な縮小はまぬがれるだろう。やがて経済は均衡を取り戻して、拡大期を迎えると。
 それからもう一つ、ここにきて在来株も含めた米国株安の中で、日本の内需関連株の相対的な堅調が目立つ事実は、経済が安定を取り戻した場合に、市場は米国経済より日本経済の先行きに希望を持っているのではないかという仮説を可能にします。

 もちろん、市場の現象は気まぐれです。インターネット人気が内需関連株の異常な安値に結びついたように、今の現象は、また思いつめた投資家が、当時とは反対にハイテクを売って乗り換えているだけで、経済の先行きとはなんの関係もないのかもしれません。すなわち、現段階では、私は確信が持てないのですが、少なくとも「日本株の将来は米国株より明るいのかもしれない」と感じさせる現象が今市場に起こっていることは事実だろうと思います。

 もし、市場がIT不況の先行きにおおむねのコンセンサスを持ち始め、ハイテク株の底が見え始めるなら、世界破滅の可能性がなくなったということで、株式投資のリスクは大幅に減少します。かねてから私は、ハイテク主導により下げた相場なので、ハイテクの急反発により不安感が払拭されるのではないかと考えておりましたが、少し前に軌道修正したように、ハイテクのV字型反騰で短兵急に問題が解決する可能性は後退したと認めざるをえません。現在の相場推移のように、一見わけが分からない上げ下げが続き、気がついたら懸念が去っており、新たな希望に向かって邁進していたという展開を基本想定としています。

 京セラが減額修正しました。発表数字は1株利益300円相当とまずまずの水準でした。残念ながら、ハイテクに強気になれない局面ですが、株価7500円には、安心感も上値魅力も感じます。
合同製鉄は、先週の高値129円に向けて戻ってきましたが、目先的な値動きの予想についてはまったく定見がありません。京成や石川島よりはよほど上値魅力があると思っているのですが、現段階では所詮、やせ犬の遠吠えになってしまいます。
 リアルビジョンは160万円台で、ちょっと買いづらいですが、28日の権利落ちまでは一貫注目で行こうと思っています。


第96回 臨時の弁<8/15>

 午後に入り、日経平均は150円安どまりで落ち着いてきたようです。
 昨日は思いがけなくも日経平均440円高で、ついに泥沼相場にピリオドか? と思った強気派も少しはいたかもしれませんが、如何せん多数意見にはなるはずもありません。逆に今朝は寄付直後にストンと300円安になり、そら、また新安値突入だと力んだ弱気派もいたと思いますが、こちらのほうも肩透かしの結果ですね。
 当分は、綱引きやむをえなしと考えます。それぞれ信じるところに足場を置き、我慢比べするしかないのでしょう。

 そのような中、珍しく鉄鋼株の堅調が目立っています。日商岩井やニチメンも堅調ですから、金融緩和による昨日の銀行・証券株人気のおこぼれが消去法的に中低位株に回ってきたと考えられ、今のところそれほど積極的には評価できませんが、私にとっては、合同製鉄が110円を突破してきたことは嬉しいことです。

 都合により、明日から21日までは、この欄の更新ができません。今度書くときは、日経平均の下値不安がもっと薄らぎ、合同製鉄も120円以上に評価されていたらよいなと念じています。


第95回 ロームショック−それぞれの道<8/14>

 今朝の日経平均は200円高となり、昨日の下げはいったい何だったのかという形ですが、下げのきっかけとなったロームは今日も連続ストップ安です。
 ロームは業績の安定感で神ががり的な信頼感を集めていましたので、その前提が崩れた以上、値段に構わず売り切ろうという投資家がいても不思議ではありません。やはり業績への信頼感が高かった日東電工の先日の減額修正後のように、寄り付いても本格的な値戻しは難しいでしょう。
 私は、京セラを勧めていたので、そのとばっちりを食ってしまいました。ロームでさえこれだけの減額修正なら、ましてや京セラは・・・・で、早めに売っておこうと思う投資家がいてもこれもまた不思議ではありません。

 とはいえ、私は彼らと同じ行動を取ろうとは思いません。減額修正が出てレーティングが下がったから売りだという機械的な判断は、多くの場合、機関投資家だからこそできます。何百という銘柄に分散投資すれば、そのうちの1つや2つの銘柄、仮に半値以下で叩き切ったって、資産全体の損失率はたかが知れています。だめなものはだめと、つねにクールに合理的に銘柄を選別していくことこそ大切だという論理です。
 一見、その論理は正しく見えます。だめなものはだめだというのは、当たり前だからです。ただし、私は思います。当たり前のことをやっていて、株は儲かるものなのでしょうか? だとすれば、株のことなどお役所に任せておけばよいでしょう。

 だめな業績予想が出たからだめ、ある人がだめというレーティングを発表したからだめ、というような発想を続けていて株式投資がうまく行くはずがありません。
 だめかどうかの判断は、もっと別の次元でなされるべきで、普通に考えればロームの減額修正は晴天の霹靂ではなく、その心配がないのかどうか検討する機会はこれまでにも十分すぎる程あったはずです。

 では、京セラの場合はどうか? 京セラは8月末に業績の見直しをするということを明言していますので、当然減額修正は必至です。ロームの減額率を適用すれば、予想1株利益は現在の500円から200円くらいに急減しないとも限りません。
 500円の予想が200円になれば、株価はその日下落するかもしれません。しかし、それを怖れるなら、そもそも半導体関連を買うべきではないでしょう。今年のような環境で半導体関連を買う以上、目先の業績には相当の覚悟が必要なはずです。

 半導体を買う以上、3年後の業績を楽しみに買わざるをえないのではないでしょうか。東京エレクが典型ですが、今期は赤字覚悟です。来期も、どんなに贔屓目に見たって、7000円の株価にふさわしいような業績は期待できそうもありません。市場の予想ではその次の期になって、やっと300円くらいの1株利益が期待できそうというところで、長期的な成長を見込まなければ、到底投資に踏み切れません。しかし、東京エレクの株価はそのような次元で形成されているので、びっくりするほど打たれ強くなっています。
(今夜、同業のアプライドマテリアルが決算を発表しますが、悪いからといって、今さら売られないのではないかと考えます)

 京セラについて、私は、将来は700円以上の1株利益水準が普通で、場合によっては1000円以上(会社の中期目標)にもなると考えます。もし本当にそのような収益成長性があるのなら、今期の1株利益はあまり問題ではないと考えます。
 その点で、ロームには安定成長を信じるばかりに、今期の1株利益の大小にチマチマとこだわる投資家が他の半導体銘柄より多かったことを示すものでしょう。

 株式投資にはそれぞれの道があります。機関投資家にも、外国人にも様々なタイプがあり、一概にクレバーだとか馬鹿だとか決められません。そして、我々は、我々自身の判断力を持って自分の行動を決めていかなければ、市場から淘汰されていくだろうということは疑いありません。

 最後に、機関投資家も決してつねにクレバーではない証拠として、ある事例を紹介します。
 95年末から96年初めにかけて最後の銀行株の戻り相場がありました。この過程で世界最大の投信であるマゼランファンドが日本株を大きく買い越したのですが、その組み入れ銘柄の上位には驚くほど銀行株がずらりと並んでいました。その頃、私は5000円台のロームを買い3000円台の興銀をカラ売りする取引を勧めており、しばらく苦しい状況が続きましたが、やがて銀行株は下げに転じ、マゼランファンドのマネージャーは更迭されました。
 おそらくそのマネージャーは、本国でもろくな運用をしていなかったに違いありません。


第94回 バリュエーション(値踏み)<8/10>

 昨日の下げは無残でしたが、シスコ決算発表後の米国市場の動きから、やむをえなくなったものと思われます。ハイテク株一段高の期待が裏切られた以上、強気陣営の私だって売りたい気分でした。

 今朝のTV(モーニング・サテライト)では、ナスダック指数が新安値に突入する恐れがあるという意見が述べられていました。株の世界は一寸先が闇ですから、可能性としてはどんなことでも言えるものの、この意見はちょっと現状では、非現実的な感じがします。
 前回も述べた通り、米国経済の当面については、めちゃくちゃには悪くはならないだろうし、それほどよくもならないだろうということで、よくも悪くもコンセンサスが成立し始めているようです。
 つまり、今回の下げは、先行きへの不安がものすごく高まった結果というより、V字型の急回復期待が薄らいできた結果だと思います。日本の相場では、上値期待が薄らぐと、今度はどこまで下がるか分からないという形で、売りが売りを呼ぶことにもなりかねませんが、売り買いの層が分厚い米国市場では、簡単にはそうはならないでしょう。

 7月18日のインテルの決算発表後は、今回と同じく当日12,000円割れとなり、3営業日目に11,500円台のザラ場安値をつけましたが、米国の半導体株もちょうどそのあたりから7日連続高に転じました。
 今回は、上値期待が裏切られたため、戻りもいっそう鈍くなる可能性が高いと思いますが、その代わり極端な下げも考えにくいと思います。
 つまるところ、実体経済と同じく株価も鍋底型(U字型)の展開になる可能性が高まっているのではないでしょうか。もしそうなら、当面において日経平均の底が7月のザラ場安値であるかどうかで神経質になることは、あまり意味がないことになります。どうせ上下の幅はたいしたことないのですから。
 (もちろん、大幅安の可能性がないと誰にも断言できません。TVのN氏が言うとおり、ナスダックの新安値だってありえます。しかし、そのときは3月と違い、世界経済が真っ暗になることが確実になったときと考えられ、日経平均はもとより、昨年以来堅調を保っているNYダウも急落するでしょう。その確率は現在非常に小さくなっており、私は杞憂のレベルに落ち着いてきたと考えます)
 
 日経平均が、大まかに横ばいを続けるとするなら、私は株の買いチャンスと考えます。
 行け行けドンドンの投資スタイルの人は、平均株価がぐんぐん上がらなければ満足できないわけですが、個別銘柄の投資価値を大切に思うタイプにとっては、平均株価は下がり続けるのでなければ、まずまずの投資環境だといえます。

 今日の日経に、5月以降は大型株主導の下げになっており、中小型が比較的に堅調と出ています。この記事では、その要因を需給関係中心に説明していますが、バリュエーション(値踏み)の点から、中小型株に割安感があり、個人の現物など中長期型の資金が流入していることも一因になっているはずです。
 同じく今日の日経金融には、機関投資家が大型株中心のアクティブ(選別)運用に自信をまったく失い、パッシブ(インデックス)運用に移行しつつあると出ています。これなどは、まことに情けない話で、本来は今こそ割安を確信できる銘柄に、資金を集中するべきだろうにと私には思えてなりません。 

 では、どのような銘柄に、バリュエーション(値踏み)の上から割安感を感じるか?
 これからは、このことが相場の根っこのほうで、徐々に重要な位置を占めてくるのではないかと私は思います。
 私の選好では、この前も申上げた通り、小型成長株にもっとも魅力を感じます。前々回(92回)に挙げたリアルビジョン(6786)は、一昨日、ソニーからの受注と1対3の株式分割が同時に報道され、164万円の上昇しましたが、昨日今日続落で150万円強になっています。今後も各分野からの受注が期待でき、そのたびに売上高が大幅な率で高まると見られ、リスクはあるものの、株式投資の醍醐味を感じさせる銘柄だと思います。
 第一部市場では、目先の期待は高値のサミーですが、比較的安心でかつ割安感をはっきり確信できるのは前回書いた合同製鉄の他、昨日1000円を割ったキャノン販売(8060)です。
 キャノン販売になぜ割安を確信できるかについては次回に譲ります。


第93回 エアーポケット<8/7>

 昨日の日経平均は結局1円高で終りました。本来なら、「強い」というべきところなのでしょうが、そんな感激なんか全然ない無気力な相場でしたね。
 多分、アメリカのほうもそうだったのではないかと思います。ナスダックが下げたので、今朝は暗い相場つきになっていますが、アメリカの昨夜の動きはとりあえず気にすることはないと私は思います。
 問題は、明日、シスコの決算発表後の相場です。米国の通信機器関連は、JDSを筆頭に4〜6月期のものすごく悪い決算が出て下げ一巡になった感があります。最大手のシスコがインテルみたいにこの秋にやや明るい見通しを漂わしてくれれば、このセクターは下げがきつかっただけに、戻りのインパクトは強いはずです。
 半導体株指数も、7日連続高で20%も上昇した後ですから、2日続落もやむをえません。願わくば、今夜はぜひ反発してほしいものです。

 最近の米国市場の様子では、株価に対する強弱感の対立する次元、言い換えれば期待と懸念の質が、以前とはだいぶ変わってきたような気がします。以前は、明らかに「回復」か「悪化」かという白黒のはっきりしたところで強弱が対立していたはずです。ところが、最近は、今後もめちゃくちゃ悪くなるという極端な悲観論はごく少数意見になり、「回復」は回復でもどのくらいの程度かという次元の対立が相場を形成するようになったのではないかと思われます。

 このことは、日米の3月頃みたいに、世界経済が破滅するのではないかという険悪なまでの不安感が薄まったという点では、株価にとって好材料です。しかし、その半面で「回復」に対する期待感も、当時の躍動感を伴ったV字型のイメージから、現実的なU字型イメージにトーンダウンしてきたことは否定できません。

 回復を見込んでも、株価は割高だ。もしこのような意見が米国市場の主流を占めてくるとすれば、いま我々が待望している「すっきりした上げ相場」は当分やって来ないことになります。いずれにせよ、これからは、先行きへの不安感が主要テーマではなく、株価が割高か割安かの次元での強弱感の対立が相場の焦点になってくるのは確実だと思います。

 全体相場の話からははずれますが、この機会に、合同製鉄を私がなぜ割安だと思っているかについて述べさせていただきます。自分ではこだわり過ぎと反省しているのですが、もっとよく説明してくれという有難いメールも結構頂戴するからです。

 合同製鉄は、多年の赤字と前期の巨額の特損を計上してなお1株株主資本が約300円あり、中低位株としては良好な資産内容です。それがなぜPBR0.3倍(資産価値の3分の1)の100円スレスレで取引されているかといえば、およそ次の理由によってでしょう。
 1.鉄鋼産業は暗い、地味でもうからない
 2.無配だ、もしかしたらつぶれる
 3.販売先が建設業界で先細り確実
 このうち、1については、たいていの人が新日鉄などの高炉とごっちゃにしています。くず鉄利用の電炉は、もうかるときはめちゃくちゃもうかる代表的な王様乞食商売です。現にアメリカではこの数年めちゃくちゃもうかる商売だったので、米国に子会社を持っている大和工の連結決算はものすごく高収益です。
 2については、どうやら今期は汚名返上になりそうです。
 3については、たしかにビル建築が上向くとは考えにくいですが、当社の鉄筋棒鋼を使う中小型ビルは、公共事業専門の道路や橋のようには落ち込まないはずですし、協調減産による縮小均衡、収益悪化への歯止め確立が見えてきています。

 今日の日経の商品市況欄(28面)に、東京で鉄筋棒鋼が11か月ぶりに値上がりしたと報じられています。(関西では値下がり気味と出ていますが、合同は関東でのみ製造)
 おまけに、下のほうにスクラップの在庫が増えて価格軟化と出ています。おおまかに、原料7,000円、製品27,500円と見ると、その差は約2万円もあり、採算を6,000円ほど上回っているのではないかと推定され、このままいけば、増額修正の可能性があります。

 私見では、合同製鉄は、通常の景況なら1株利益で10〜20円の収益、かつ5円以上の配当を中期的に期待できる会社として評価すべきだと思います。その妥当価格は金利水準にもよりますが、200円以上あってもよいと考えます。


第92回 強気有利の局面(2)<8/3>

 この文章は、だいたい朝の相場が始まって、一段落した後に書いているので、昨日書いていた頃の日経平均は12,100円台でした。12,300円が抵抗線らしいなどとピンボケなことを書いたのはそのためです。
 今日はいま日経平均で120円ほど安く12,200円台に押し戻されており、弱気の人から見れば、そら見たことか、というところでしょう。
 私は、強気陣営ですが、今日は安くてもやむをえないと思います。昨日は、たとえばアンリツが195円も上がってしまいました。1500円台はまだ十分に安いと思っても、一昨日なら1200円台で買えたのですから、さすがに二の足を踏んでしまいます。

 米国の半導体株指数が20p高し、656となりました。今夜は反落するかもしれませんが、中期的に上向きのトレンドを形成する可能性が高まっていると考えるのは、私だけではないでしょう。
 半導体株の下値不安が払拭されるということは、IT主導でものすごい伸びを続けた後の米国経済のソフトランディングが有望になったことを意味します。
 それはとりも直さず、わが国の主要ハイテク株が壮絶に下げる可能性が非常に小さくなったことを意味し、実質的に、日経平均の下値不安が大きく軽減されます。
 日経平均が下がる可能性が低下したと多くの人が思えば、おのずから日本株市場の景色はまったく違ったものになるはずです。

 問題は、何をどのように買えばよいかです。
 当面は、日米ともにITの要である半導体とネットワーク関連が焦点になるのは疑いありません。しかし、現状では米国経済のV字型回復を期待するのは現実的でなく、あくまでよくてソフトランディングである以上、半導体がバカバカ売れるような日が短期日に再来するはずがありません。
 とすれば、ハイテク株の上昇は短期的には有望であっても、中期的には大きな限界があり、本格的な上昇は長期的な課題ということになりましょう。
 
 もしハイテク株がせいぜい5月高値を目指しての戻り程度しか期待できないとすれば(その戻り率は馬鹿にできませんが)、それだけでは、日経平均に下値安心感は出ても、1万5千円を軽々に超えるような躍動感のある上昇は期待できません。
 私の想像では、日経平均採用銘柄にはハイテクに限らず、当面大きな上値が期待できる銘柄が少なそうなので、225全銘柄がそこそこに買われても、1万5千円を超えるのがやっとだと思います。
 したがって、私はやや中期的には、日経平均の下値不安が薄らぐにつれ、日経平均には採用されていない「その他大勢」の銘柄から、びっくりするようなパフォーマンスを挙げる銘柄が出てくるのではないかと考えております。

 以上の考えから、当面において私は次のような銘柄に注目していきたいと考えます。

 まず短期的には、ハイテクで、京セラとアンリツ。目下のシンボルストックは東京エレクと古河電工ですが、これらの人気先行銘柄だとディーラー感覚になってしまいそうで、一喜一憂したくない人には向かないと思います。
 やや時間をかけ、大幅高を狙うのは、低リスクでは合同製鉄、ニチメンなど好業績で復配期待の中低位株、事業リスクを負担すれば、ともに1株単位で140万円前後のリアルビジョン(6786東証マザーズ)とソフトバンクインベストメント(4842ナスダックJ)、価格変動リスクを負担すれば、サミー(6426)8700円台などに注目します。
 サミーは年初来安値から3倍以上になっており、現実にはなかなか買えませんが、セガの子会社を買収するなど、いよいよ総合アミューズメント企業への発展、高い増益率の継続が現実化してきたと考えれば、3年前のファーストリテイリングみたいな株価大変容を夢見てもおかしくない状況にあると考えます。


第91回 強気有利の局面<8/2>

 今朝のTVでは、「月の8日に買い目なし」(月初の高いところは売り)だと発言する人がいたり、ドイツ証券の武者氏(筋金入りの弱気論者)が出演したりで、弱気意見が明らかに多かったので、私は「しめた!」と思いました。
 ナスダックが上げ、特に半導体株指数が5%強上げたので、あまりに強気意見が増えると、今日の寄付で日経平均が高くなるのはいいけど、その後が心配とだないう心境だったからです。なんだかんだいっても、日経平均先物が市場心理に与える影響力は強く、万一、先物がダレた場合、採用銘柄以外までダレダレになってしまうからです。

 私はチャートは詳しくないので、一般論ですが、1万2千円を超えた後、300円とか500円上には、簡単には超えられない抵抗線があるそうです。感覚的にも、1万1500円あたりが底になっている現状では、その千円上を買ってくるようなら底入れ感が出てくるだろうし、逆にいえば、そのあたりが重いだろうということは分かります。

 だけど、前回申し上げた通り、私は今は、日経平均の数値を重んじて相場動向を判断することは得策ではないと思います。

 くどいようですが、今回の相場の帰趨を決定するのは、米国のハイテク株動向、つきつめれば、半導体株指数(SOX)の動向だと思います。

 米国経済がどうなるのか、半導体の底が見えてきたのか、私には分かりません。メリルリンチが半導体製造装置株のレーティングを上げましたが、まだまだ当分暗いという意見もあります。ただ、これだけは確かな事実として分かるのは、株価の動きです。そして、株価が上がるようなら、多分大丈夫なんだろうな、下がるようなら、まだまだ暗いのかもしれないというような素人判断をするしかないのです。

 恐ろしいことですが、このような傾向(風見鶏)は、いま全世界の投資家、あるいは企業家の胸中にあるのではないのでしょうか。多分、株価が上がれば、企業家のマインドも好転し、好循環になり、逆に株価が下落すれば、負のスパイラルが強まるはずです。

 米国半導体株指数は、昨日30p高し、636となりました。3月安値450台、7月安値540台からは相当に戻ってきて、5月戻り高値706突破も夢ではありません。
 世界中がIT株にガンガンの強気になる市場は、当分来ないだろうし、もうバブルには懲り懲りですが、ただ米国の半導体株に少なくとも下値安心感が強まれば、ここにきてガンガン下げた日本のハイテク株の戻りは結構馬鹿にできないはずです。そして、ハイテクが戻れば、やっとそこから、何を買おうかという相場が始まるはずです。

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