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この文章の筆者に対してご意見がありましたら、どのようなことでも結構ですから、下記にお寄せください。
  gaimuin@hotmail.comまじめ外務員宛
「まじめ外務員の発言録」http://d.hatena.ne.jp/gaimuin/
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最終回 外務員廃業の弁<8/18>

 先週の水曜日にある社長と会い、急激に確定した話ですが、外務員を辞め、新しい仕事に就くことになりました。
 私を信頼して、財産を預けてくださっているお客様には大変申し訳のない決断をしてしまいました。お客様の長年のご厚情とご期待にそむき、心からお詫びしても、お詫びしきれない気持ですが、それ以上に、自分の人生をもう一度試したいという願望がやむにやまれぬものに高まり、自分勝手な選択に踏み切った次第です。
 外務員という仕事に嫌気がさしたわけではありません。ましてや株の売買に飽きがきたわけではありません。ただ、私の場合、日常の仕事の上ではややマンネリ感が強まっていました。
 7年前、外務員に転向した頃は、それこそ必至で顧客開拓に励みました。しかし、次第に既存のお客様との対応のみで満足するようになり、暇を持て余すようにさえなってきたのです。若い営業マンなら、時間が許す限り一人でも多くの顧客に会い、押せ押せの攻めの営業、相場が悪ければフォローの営業、相場が暇なら種まき営業と、やるべきことに事欠かないはずですが、私たちベテラン(というより慣れきった外務員)の場合は、追証さえも電話一本ですみ、ザラ場中も比較的暇で、3時半からはまったく仕事がない日が多いくらいなのです。
 もっとも、自覚さえあれば、向上心を保ち、少しでも顧客のためになるように相場の研究をすればよいのですから、仕事がないというのは言い訳にすぎません。たしか先月メールをいただいた、8月から外務員に転向するという人にご返事したように、向上心を維持することが大切で、それさえあれば、歩合外務員は正社員の何倍もやりがいのある仕事だといまも考えています。ぜひその方にはフレッシュに頑張ってほしいと思います。

 大腸ガンの手術をしてまだ8か月、妻含め多くの親しい人が危ぶむ中で、あえて挑戦する就職先は、ベンチャーキャピタルです。株は株でも、有望な中小企業を発掘し、長期投資する仕事ですから、上場株の売買とは無縁で、私のこれまでの仕事上の経験やノウハウはほとんど活かせません。ただし、証券に対する初志とまったく相違する仕事ではなく、これまで考えてきたことや経験したことが間接的には活かせるのではないかと考えています。
 ついでに、あつかましくお願いいたします。もし1単位5000万円くらいの資本の追加を必要とする有望な非上場会社(外食分野を特に注力します)にお心あたりがあれば、ぜひお知らせください。

 今回を持ち、「まじめ外務員の本音」と「まじめ外務員の発言録」はともに終わらせていただきます。長い間、ご愛読いただき、折にふれてお励ましやご意見のメールをいただき、まことにありがとうございました。


第347回 相場展望<8/12>

 様変わりの相場展開となりました。片隅の中小型株に人気が集中する栄養不足の相場から、金融を中心にど真ん中の大型株が主導する躍動感のある相場へ、そして我田引水ですが、BからE(ディフェンシブから景気敏感株)へと大きく変化しました。
 いや、なに、最後のお祭り騒ぎで、いよいよ末期症状だねと相変らず弱気を主張する人もいますが、客観的に見て、主力大型株の躍動は、中期的な相場波動の始まりであることが多いのではないでしょうか。
 すなわち、03年から昨年4月までの上昇とその後の長いボックスに続く、第2の、新しい上昇波動が始まったと考えるべきでしょう。
 問題は、その上昇相場の性質ですが、それについて私は次のように考えます。

 まず、相場サイクルの考え方として、故浦上邦雄氏の「金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場」の用語による説明は実にみごとと思います。
 多くの人が今度は「業績相場」だと言い、気の早い人は「逆金融相場」が近いとか書いています。しかし、多くの場合、どう考えても用語を間違えて使っているとしか思えません。
 たとえば、金融相場(不景気の株高)は業績を無視して無茶苦茶買い上がる相場でしょうか? あるいは逆に、業績相場は、個々の業績発表に一喜一憂する相場でしょうか?
 むしろ、逆です。金融相場は業績に不安と期待が交錯する相場であり、業績相場は足下の業績に一喜一憂しない相場と考えるべきです。

 浦上氏の用語を私は次のように理解しています。
企業業績 景気 金利
金融相場 × 底打ち
反落(調整) 上昇 中(利上げ開始)
業績相場 上昇
逆金融相場 天井
中間反騰 下降 中(利下げ開始)
逆業績相場 × 悪化 中(利下げ開始)

 この循環は、少なくとも4〜5年、場合によっては10年のタームで見るべきです。
 金利が異常状態にある日本をひとまずおき、米国の株価をこの図式にあてはめると、いまは94年と同様、利上げを織り込んで、業績相場が始まったばかりの段階と考えられます。つまり、金利と企業業績のトレード・オフによる膠着状況から、企業業績評価のほうに天秤が傾きだした局面です。
 それに対して日本は、金利と株価の関係は論議以前の状態にあります。長い調整のあと2回目の上昇だから、今回は業績相場だろうという決めつけは安易すぎます。ましてや決算発表の内容に敏感に反応しているから業績相場だろうと決めつけるのは、上に述べた通りまったくの先入観です。
 (経済が好調なとき、決算数字のちょっとした悪化に過剰反応するでしょうか。経済の先行きにだれもが不安を抱いていないだけに、むしろ、いま悪ければ、これからよくなるだろうと楽観的な見方が優勢になりがちです)

 私見では、今回の上げは、2回目の金融相場の開始を示すものと考えます。
 90年以降、長い停滞を経験した日本では、好況感(あるいはデフレ脱却感)がいまだに確立せず、多くの人が先行きに疑心暗鬼の状態が続くと思われます。
 とすれば、今後の相場は、これまでと同様、個々の銘柄の業績動向に神経質な傾向が続くものと思われます。現在は相場を主導している大型主力株も、業績のポテンシャルが低ければ、わりに早く天井をつける可能性があります。(03年の上げでは、最初の人気株である野村とNECは10月高値をつけ、その後は停滞)
 好況期の相場である業績相場は雑食で悪食でさえありますが、今後の相場はやや食が細く、好き嫌いのある相場となりましょう。私は、半導体、機械、鉄鋼、消費関連など景気敏感業種の、増益ポテンシャルの高い銘柄が買われることになると考えます。


第346回 2つのEの時代<8/3>

 2つのEとは、ITの「e」ではなく、1つは前回述べたBかEかのE(利益)、そしてもう1つはexpectのE(期待)です。
 株価を理論的に図式化すれば、次のようになります。
  P=B+E(E)
 注@ この場合のB(資産価値)は現預金・土地など償却不要資産の時価
 注A E(E)は将来にわたる期待利益の現在価値の和

 深刻なデフレ心理が蔓延する中、メガバンクさえもが存亡の危機に直面した時期には、E(E)が急縮小した他に、本来静的なBまでが大幅にディスカウントされました。
 すなわち、@現在は資産があっても、将来の赤字で食いつぶしかねない、Aその資産自体の正味が疑わしい(含み損、いざというとき売れない、簿外負債の可能性etc.)という2つの側面から悲観が重なり合い、PBR1倍(解散価値)を大きく下回る銘柄が続出し、資産内容がいいのに倒産価格に売られたり、堅実経営かつ高収益なのに解散価値の半分くらいまで売られたり、びっくりするような株価の例は枚挙に暇がありません。
 BとE(E)の両方が悲観心理によって異常なほど縮小する傾向は、当然ながら、企業基盤が小さい銘柄ほど顕著で、大型の、特に信用面で安定観があった銘柄はさほどでもありませんでした。
 03年春以来の相場で、メガバンクが高値をつけた昨年4月以降は、大型銘柄がまったく冴えない一方で、格安に売られていたバリュー系銘柄を中心に小型株の活躍が目立つようになる素地はここにあります。

 さきほど先物が12000円をつけました。我々の部屋でもどよめきが上がりましたが、実のところそれほど興奮している人は一人もいません。
 多くの外務員は、ソニーのように年初来安値をつけたか、野村やNECのようにぎりぎりの水準にあるか、せいぜいみずほのように安値から10%も上がっていない銘柄ばかりかかえており、平均株価の高値更新の恩恵を受けておらず、白けているのが実情です。
 相場では、曲がり屋は徹底して曲がり続け、曲がり屋の銘柄が上がるときは曲がり屋が売ったときというのが冷徹な現実です。
 その法則でいけば、上に掲げたような銘柄が本格的に反転するのはまだずっと先と考えるべきでしょうが、以下の理由で、底打ち反転の動きを見せる日が近いと私は考えます。

 大底からすでに2年3か月がたち、BとE(E)が悲観心理によって異常に萎縮していたのが正常に戻ったと考えれば、これからの株価を決めるのは、比較的冷静な投資家心理によるE(E)の伸縮です。
 冒頭に、株価の理論的な図式をP=B+E(E)としましたが、収益動向に関心が集中する今後の株価形成ではBの比重は薄れ、Eの水準(今期予想1株あたり利益)と将来への期待度(PER)で、大体の株価の説明がつくようになるはずです。
 すなわち、今後の株価は、次の2つの?を焦点として動くことになります。
 @今期予想1株あたり利益がどうなるか?(上方修正? 下方修正?)
 A将来の収益の傾向をどう評価するか? (安定? 成長? じり貧?)
 株価が@とAで動くのは、いわば当たり前です。しかし、過去の日本市場では、その当たり前のことをなかなか適用しにくい状況にありました。
 例えば、典型が大手銀行株。バブル期も、バブル崩壊後も、その後の急落期も、そして一昨年からの回復期も、つまり過去20年間、つねに1株利益×PERでは説明がつかない株価の推移をしています。
 私見では、銀行株においてはようやく、そしてその他のほとんどの銘柄においては今後ますます、@とAが重要だという当たり前のことが株価形成の基本になると考えます。

 @とAの冷静な見きわめによりE(E)が収縮し、株価が動くと予想される今後の市場では、おそらく大型株の見直し余地が増大するはずです。
 なぜなら、現在は大型株のPERが小型株のPERより低いという珍しい現象が生じていますが、Aの現状を冷静に分析した場合、大型より小型のほうが有利という結論にはならないはずだからです。
 例えば、前にも書きましたが、新日鉄と中小型鉄鋼を比較して、中小型のほうが成長性が高いからPERが高くてよいというふうには、業界の収益構造から考えられないはずです。あるいは、みずほと地銀を比較した場合、いくらいまのみずほに戻り益など特殊要因があるにしても、ファンダメンタルズからみずほのPERが極端に低くなる理由は説明できないはずです。

 いま1時半。全般に模様眺め気分が濃厚で、今日の終値では日経平均1万2千円乗せが難しそうです。珍しく証券が上昇しています。
 野村証券は、先日の日経新聞には、まるで上がる理由がない銘柄のように書かれていました。昨日は年初来安値まであと9円というところから、今日は32円高です。
 野村証券は、過去は人気が高く、PERで見れば万年割高で、私は新日鉄やみずほ同様あまり好きではない銘柄でした。しかし、日経平均が1万2千円を突破し、新局面に入るためには、いくらなんでも野村が安いというムードが台頭することがぜひ必要と思われます。全体相場のために、今日は野村とソニーを応援しています。


第345回 株価を決めるのはBかEか<7/27>

 今朝のTVで、個人投資家の持ち株の保有期間が話題になっていました。アンケートの結果では、デイ・トレーダーは10%ちょっとで、その他数日で売るという投資家を合わせても、短期投資家は意外に少ないというのがその場の結論でした。しかし、私はむしろその表を見て、1年以上とか、3年以上持つと答えた長期投資家の割合が少ない(合わせて20%以下?)ことにショックを受けたのです。
 市場にぜひ必要なのは投資家の層の厚さです。そして、売買頻度を考えれば、10人の短期投資家に対して100人くらいの中期投資家と、1000人くらいの長期投資家がいなければ、それぞれの投資家が市場に与える力がバランスしないはずです。
 しかし、アンケートによれば、短期投資家10人に対して、1か月から数か月の中期投資家20人、長期投資家10人の割合ですから、個人投資家の部の市場インパクトで、短期投資家が圧倒的になり、銘柄への人気が偏るのは当然です。
 前から感じていたことですが、そのTV局や日経新聞は、長期投資といえばすぐ配当利回りや株主優待の次元に矮小化する傾向があり、株式(エクイティー)投資の本源であるはずの長期投資の醍醐味に真っ向から取り組む姿勢がまったくないことは不思議なことです。

 さて、アスベスト関連株の奔騰に象徴される短期投資家優位の現在の相場状況を嘆いても始まりません。
 今回は、短期的な物色人気も含めて、市場の人気の流れが今後どういう傾向を持つと予想されるかを、中長期の視点から考えてみたいと思います。

 まず2年前の大底以来の相場を半年ごとに分解すれば、以下のようになります。
  第1局面・・・・03年春〜同年秋   活躍株:野村証券、NEC
  第2局面・・・・03年秋〜翌年春       銀行、再生関連
  第3局面・・・・04年春〜同年秋       鉄鋼、海運
  第4局面・・・・04年秋〜今年春       中小型、ディフェンシブ
 この流れを大ざっぱに意味づければ次のようになります。
 @底入れ反騰の最初の時期では、個別の業績や割安感にこだわらず、イメージが優先された。(野村は相場回復の象徴、NECは業績回復の象徴、ともに10月高値)
 A反騰相場が進むにつれ、収益や企業の信用が劇的に回復し、割安感が際立つ銘柄に人気が移行した。
 B企業業績全般の回復に対して買い一巡感が台頭。日経平均が高値を打ち、部分的な物色人気の色彩が強まった。主要セクターでは増額修正した鉄鋼・海運がわずかに高値更新。
 C主力株離れが鮮明化し、業種としては景気に左右されないディフェンシブ(薬品、電力、たばこなど)が買われる一方、低PBR株を中心に小型株が人気化。

 さて、このあとに続く現在はどのような様相を呈しているでしょうか? 現時点では、Cが続いているように見えますが、私見では、ただいまは様々な要素がごちゃごちゃに混じり合っており、予断をゆるさない状況と考えます。
 もし米国相場の堅調が続くなら、日本でも半導体関連株の上昇は必至であり、久々に@からBの局面で活躍した積極型主力株に人気が向かう可能性があります。
 しかし、市場の大方の見方は日経平均の上昇に懐疑的であり、したがって積極型主力株への投資マインドはきわめて低く、中小型(個人投資家)とディフェンシブ(機関投資家と一部個人)への物色人気が続くと考える人がほとんどです。

 いま午後1時。日経平均先物が11850円をつけてきました。
 今後の物色の方向性を考えるうえで、分岐点となるのは、表題で掲げた通り、BかEかの選択です。
 Bとは、ブック・バリュー(帳簿価値)であり、PBRにつながります。
 Eとは、アーニング(収益)であり、PERにつながります。
 昨秋以降、PERを中心に投資を考えた人の成功率はきわめて悪かった一方、PBRを優先して考えた人は絶好調だったはずです。
 だから、最近、投資雑誌が掲げる割安株一覧では、PBRのランキングになっていることも多く、PERという物差しは明らかに後退しています。
 しかし、この風潮は、合理的には長期化することがまったく考えられません。理由は次の通りです。

 Bは本来静的であり、株式の価値をBで測れば、最大値はBです。つまり、株価は1株あたり純資産(あるいは含み損益修正後株主資本)以上には上昇しません。かつて、野村が石川島播磨を含み資産価値で1600円まで買いあおり、さらにそれでも足りず、将来の資産価値の上昇まで買い材料にしようとしましたが、株価はその時点で天井を打ちました。
 PBRによる投資ブームを先導している村上氏のファンドは、昭栄へのTOBで最初に登場したと記憶しますが、その当時の清新さに比べ、最近の物件(大証や特種紙)は明らかに魅力を欠いていると思われますが、Bに投資判断の主体を置く限り、株価の上昇とともにキャピタルゲイン獲得の余地が小さくなるのは避けられません。
 それに対して、Eは動的です。企業の収益そのものが動的に揺れ動くのに加えて、投資家の予想が心理的に大きな幅で振幅するからです。
 例えば、数年前に新日鉄の1株利益が40円水準になる日が近々に来ると、だれが予想したでしょうか? 当時、鉄鋼業に強気だった私も、せいぜい20円くらいだろうと侮っていました。もっとも、株価で見る限り、現在の利益は一過性であり、実力としては15円弱くらいに評価していることになりますが、この評価はあくまで現時点のものであり、市場の評価は数か月で激変するのがつねです。

 私見では、今後の市場ではE(予想収益)が株価判断の最優先項目に復帰し、積極型ストック(景気敏感株)中心の上昇相場が形成されると予想します。
 活躍する銘柄は、基本的に@からBの局面で買われた業種に属すると思われますが、@〜Bの様相を単純に繰り返すことはないはずです。


第344回 個別銘柄論<7/21>

 インテルが決算発表後に大幅安して半導体株に暗雲かと思われましたが、今朝起きてびっくり。製造装置関連の大幅高で、半導体株指数は1.7%の上昇です。
 いま東京の寄り付き前の注文状況では、東京エレクは、米国の同業が4%前後高いのに50円高くらいで寄りそうなので、これは買い得という判断で顧客に連絡し、首尾よく受注し、そのうえでこれを書き始めました。
 ・・・・とまで書いたところで中断しており、いまは9時半。東京市場の値動きは地味ながら、寄り付きよりは強含んできて、日経平均は60円高、東京エレクは寄り付き40円高から100円高とまずは思惑通りの動きです。

 日経平均は1万1850円。いまだに1万2000円から上はガチガチの岩盤と考える人が多いのは不思議ですが、平均株価が今後どうなるかの議論は今回はよして、個別銘柄について論じてみることとします。
 
 まず東京エレク。同じ半導体製造関連の人気株アドバンテストに比べて、昨年秋以降の動きは明らかに遅れをとっていますが、その理由は次の通りと考えられます。
 @半導体製造工程の中で、前工程の受注環境が悪く、後工程のみのアドバンテストに比べ業績不安が大きい。
 A米国の同業、アプアライド・マテリアルズの株価が低迷。
 BPER比較で割高。
 それに対して、この春までは私も半導体関連ではアドバンテストを第1の注目銘柄として考えておりましたが、次のように考えから、東京エレクにシフトしました。
 @現在、シリコンサイクルの底を脱しつつあると考えた場合、先行きの受注状況を現在の状況で推し量ることはナンセンス。
 Aアプライドの業績と株価の不振には固有の要素もあり、両社のバイオリズムを比較すれば、東京エレクのほうが明らかに明るい。
 B現在の株価形成は、よく言えば合理的だが、悪く言えば機械的・画一的な判断が優先されており、業種ごとにPER横並びの傾向が強い。半導体関連の場合、業績は企業ごとにかなり違う形で劇的に変化しており、PER比較は参考程度に止めるべきである。
 先日、受注不振が報じられ、業績不安がくすぶっていますが、私見では、29日の決算発表で不安が解消すると考えております。

 次に新日鉄。前々回にも書きましたが、かつてこの銘柄には異常なほどのプレミアムがついていたことを思うと、現在のバリュエーションの低さに隔世の感を覚えます。
 ただ単に業界トップだからという、おざなりのプレミアムなら、JFEに抜かれようが抜かれまいが剥げて当然ですが、それ以外の、新日鉄ならではの潜在力に起因するプレミアムもあったはずですが、同業との比較では現在むしろ割安になっていることは前々回に述べた通りです。
 私見では、日経平均1万2千円突破は、景気敏感株を中心に果たされるはずであり、半導体、機械と並んで、鉄鋼が重要な役割を担うと考えます。

 最後に双日。野村がMSCBを引き受けた6月に、モンルガンスタンレーがなぜ2000万株強を取得したのか、7月の売買動向がどうなっているのか、野村のMSCB戦略(MPOと称して、安定的な資金調達手段として定着することを志している?)と連携があるのか、現時点ではまったく不明です。
 ただ言えることは次の2つでしょう。
 @モンルガンスタンレー(もしくはその背後の投資家)は双日株を取得することにより、100億円近い資金についてリスクを負っており、当然ながらその代償に見合う以上のリターン(値上がり益)を期待しているはず。
 A6月には猛烈な勢いで取得したにもかかわらず、7月は少なくとも買い急ぐような買い方はしていないと推測される。
 上記@とAから想像されることは、資金の性質は中長期であり、一定の確信にもとづいた純投資なのではないかということです。(それ以外の考え方ができるなら、教えてください)
 いま午後1時半、日経平均40円高、東京エレク50円高と伸び悩んでいますが、いまさら一喜一憂するつもりはありません。


第343回 普通の日本・普通の株価<7/13>

 80年代の日本は、日本も誇れるところがあるよという「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から始まり、終わり頃には、外国はまるっきしダメ、これからは製造業も金融業もますます日本じゃなきゃダメという「債権大国」の謳歌に突き進みました。
 当時、イギリスはリタイヤしたよぼよぼの老人、フランスは遊び好きの根無し草、ドイツは機転のきかない不器用者、そしてアメリカは頭が悪いくせに怠けたがり屋で、仕事中もデートのことを考えているというイメージをかなり多くの日本人が抱いていました。
 「アメちゃんに、仕事の仕方を教えたらんとあかんな」という類の思い上がったセリフを、中小企業のおっちゃんやら、大企業のサラリーマンやら、はては家庭の主婦までが平気で口にしていたのです。私は、一見知的な某大手証券の支店長がそう言って鼻息を荒くしたのをはっきりと記憶します。
 日本人の絶頂気分は壊れ始めるとあっという間でした。株価指数の先物を始めて、アングロサクソンの陰謀にまんまとはまったのがいけなかったとか、様々に転落の理由を挙げ、悔しがる人がいますが、所詮、あの頃の日本人は思い上がり過ぎており、株価と同様、落ちるべくして落ちたと考えるべきでしょう。

 問題は、「失われた90年代」の評価です。
 詳述は省きますが、私は結果オーライではないかと思うようになりました。
 もしあの足踏みがなければ、日本型経営、親方日の丸主義、護送船団方式は健在だったでしょうし、官僚はもっとはびこっているでしょう。90年代はちょうどIT革命の前夜と重なり、インターネットで米国に立ち遅れたのを「失われた90年代」のせいにする人もいますが、当時の官僚に任せていたら、光ファイバイーなどインフラはものすごく充実したかもしれませんが、中味はがらんどうで、かえってIT革命に立ち遅れたのではないかと考えます。

 不良債権処理に象徴される90年代の苦闘は、単なる時間の空費ではなく、日本経済のために大きな意義のあるプロセスだったと私は考えます。
 意義の1つは、80年代の反省と後始末です。
 しかし、もっと大きな意義は、戦後数10年にわたる経済成長を総括し、新しい成長活力を獲得するための模索期間だったということではないでしょうか。
 
 2000年代の前半時期、日本経済は不良債権処理の極点で苦しんだものの、現在は先進国の中で特に憂慮すべき経済状況にあるわけではなく、数年のタームで見れば、むしろ明るいと言ってよい状況にあります。
 株価で見た場合、現在の日本株のPERは70年代以来はじめて欧米と同じ水準に低下しています。
 この事実をして、日本もようやく普通の国になり、普通の株価となったと前向きに評価することもできますが、私は大きな異存を感じます。

 異存点は次の3つです。
 1.80年代はもちろん、90年代も日本株のPERは異常に高かったが、90年代のようにデフレ期にPERが高く、現在のような平穏期にPERが低いのは不自然で、市場の評価の信憑性に疑問がある。
 2.かつて日本株の高PERを正当化する理由として挙げられて減価償却法の違いや持ち合い消去後の実質的な発行株数の違いなどはまだ残っており、金利水準の違いも考えれば、むしろ日本と欧米のPER水準が一致しなければならない必然性はない。
 3.日本の企業業績は3期連続増益予想であるため、ピークアウト懸念が根強く、PERが上がらない理由になっているが、90年代から1株利益最優先の効率経営を続けてきた米国企業に比べ、おおむね90年代に足踏みした日本企業のほうが収益拡大への弾性値が高く、その分PERが高くてもよいはず。

 私見では、将来、ゼロ金利が解除されるとき、日本が普通の国に復したことが高らかに宣言されわけですが、その際、長期国債金利は3%水準で比較的安定的に取引されていると予想します。それを前提に、現在はPER15〜20倍で取引されている大型安定銘柄は、軒並みPER30倍程度に買われているはずと考えます。
 すなわち、普通の国となった日本の普通の株価は、少なくとも大型株で見る限り、現在の50%以上高くておかしくないと考える次第です。

 間もなく後場が始まります。今日も何をかいわんやの株価推移で、双日にいたっては5円安の459円です。昨日の大量保有報告書で、モルガンスタンレーが6月に2000万株強を買い付けたことが明らかになったわけですが、やや唐突で消化しにくい材料とはいえ、昨日今日の軟調推移は意外なことです。


第342回 北極星(3)<7/6>

 この表題を見て、またかと思われる方は多いはずです。「理屈や先の長い話はもういいよ。大切なのは、いまいかに儲けるかじゃないか」と多くの人がおっしゃいます。顧客の中にも「君の言うことを聞いていたら、スカを引くばかりだ」と見切りをつけて、自分自身で動きのいい小型銘柄を捜してきて買ってくださる方もいます。
 今年2月頃から『発言録』サイトに掲載している「月曜レポート」は、実は「今週の投資案」という表題で顧客に長年流しているものですが、そのバックナンバーの表題だけ見直して、自分自身であきれました。
 2000年のネットバブル崩壊後、2001年から弱気を主張したことは一度もなく、「静観」というのはたまにありますが、「売るべし」もしくは「警戒」というのはまったく見当たりません。
 最近だけ見ても6月18日「主力株に陽兆」→25日「半導体が変化の鍵」→7月2日「7月高を期待すべき」とまるでアジビラです。結果を見れば、たしかにこの間、日経平均は上昇基調にあったものの、みずほや新日鉄などありきたりの「主力株」が上昇したわけでも、「半導体株」が上昇のリード役になったわけでもなく、私の「投資案」はまるっきし曲がっていたといっても過言ではありません。

 いきなり反省を述べたのは、宗旨替えしようというわけではありません。言い訳しようというわけでもありません。
 つくづくに感じたことは、まず第1に、目先の相場戦術と、中期的な相場戦略と、大局的な相場観は、評価する際にはまったく別物と考え、別々の重みで評価すべきだということです。つまり、大局に徹しているから、目先的にはずれることが許されるわけではなく、逆に目先あたっているからといって大局は不要というわけではないということです。
 第2に、目先の相場戦術と、中期的な相場戦略と、大局的な相場観は、当然ながら、それぞれに関連しあっており、特に大局観が最重要であることは疑いないものの、どの1つのはずれやつまずきも、他の2つに論理的あるいは心理的な悪影響を及ぼし、やることなすこと全部裏目の、いわゆる曲がり屋状況を形成しやすいということです。
 第3に、それらを踏まえて冷静に考えたうえで、現在の私にとっていま大切なのは、やはり大局観を出発点にすべきということであり、それ以外は二の次に思ったほうが、むしろ曲がり屋に完全に堕してしまう危険が少ないのではないかということです。理由としては、端的にいえば、私の北極星が私にそう語っているからです。

 みずほ、新日鉄などありきたりの主力株にこだわり続けるのは、非常に気が引けることですが、あえて新日鉄を例にとって、私の北極星との関連を述べてみましょう。
 新日鉄は、いわば巨人・大鵬・卵焼きみたいな銘柄であり、私はあまり好まない銘柄でした。特に90年代、バブルがはじけた後も97年に二極化が鮮明化するまで、300円〜400円という当時の収益力からは到底理解できない株価水準にあり、確か野村総研アナリストの400円を妥当とするレポートに憎しみさえ覚えたものです。
 90年代の平均的な1株利益は0〜数円、それに対して現在は、前期実績32円、今期予想40円という隔世の水準にあるにもかかわらず、株価は258円です。
 もちろん、市況産業ゆえ、PER6倍台だから単純に割安ということにはなりません。ただ、私が問題にしたいのは、中小型の鉄鋼株のほうがむしろ割高なPERに買われているという事実です。

 業界のトップ銘柄のPERが中小型銘柄より割安になる理由は2つしかありません。
 1つは、トップ銘柄より中小型銘柄の収益見通しがよいと判断される場合です。
 もう1つは、株価が需給関係中心に形成されている場合です。
 過去2年ほどの収益推移を見た場合、新日鉄よりも収益がボロボロだった電炉や特殊鋼メーカーの変化率が高いことはいうまでもありません。しかし、現在および今後を考えた場合、小回りがきくほうが儲けやすいというような環境は、少なくとも鉄鋼業界では想定しにくいと思われます。独自的かつ機動的な経営戦略を採ることで定評のある東京製鉄が、現在もっとも製品の値下がり圧力を受けているのはその1例証です。
 すなわち、新日鉄のPERが相対的に割安になっている理由は、需給関係に原因があると結論づけてよいと考えます。

 新日鉄の需給関係が、同業中小型銘柄より劣る理由は3つ考えられます。
 1.90年代後半の二極化の中でも、トップ銘柄として割高に買われてきたために、中小型銘柄のようにボロボロの値段までは売られず、したがって自律反発力が弱い。
 2.上と重なるが、外国人や機関投資家の持ち株が多く、現在のような相場状況では上値に売りが出やすい。
 3.平均株価の膠着状況が続く限り、中小型株のほうがよいパフォーマンスになるというコンセンサスが市場に根を降ろしている。

 これらに対して、私は次のように考えます。
 1.年金代行返上売りによって、二極化の反動はほぼ終わったはず。
 2.外人や機関投資家の持ち株比率はまだ上昇余地がある。
 3.回復期の相場特徴である中小型株優位は、大型株とのPER逆転により踊り場を迎えている。
 すなわち、需給関係は、投資の可否を決める上で、目先的もしくは中期的にはないがしろにできない要素であるとはいえ、もうそろそろ逆の動きが出てもおかしくない時期になってきたと考えるのです。
 例えば、ここにきてかつて私の注目株だった中山製鋼所が異彩高で新高値をつけてきました。日本証券新聞社刊の「格付け速報」という本には、新日鉄の理論株価は178円、それに対し中山鋼は658円となっています。それほど極端ではないにしても、新日鉄は上がりにくいが、中小型なら上がるという考え方が当たり前になりつつあります。私は、その考え方の広まり方がかなりよいところに来たと考え、500円以上の目標は未達ですが、中山鋼から新日鉄への乗り換えを勧めています。

 いわんとするところは、どう考えても、また自分の北極星を座標とした感覚の面からも、日本の主力株を買いたい局面に入ってきたということです。主力株は上がりにくいが、中小型株は上がるという考え方にも反対ですが、例えば、リストラ効果が出てきた鉄鋼業界のトップ銘柄で、今期の配当予想が6〜8円の新日鉄を258円で買って心配という考え方にはもっと反対です。

 間もなく大引け。顧客の一人から電話で、日経平均はなぜほとんど変わらずに伸び悩んでいるのかと質問がありました。私は、「(あなたと同じく)上がったら、売ってやろう思っている人が多いからですよ」と答えました。


第341回 なるべく客観的な双日論<6/29>

 昨日行われた双日の株主総会で、債務免除を要請する可能性について質問があったと日経金融新聞に紹介されています。質問自体はまったくの愚問ですが、質問したくなる気持は分かるような気がします。債務免除を受けた会社の多くが、大幅に(1ケタ違いに)株価を戻す一方で、双日は優先株による資本増強により、いわば完全にはギブアップしない形での再生を目指したため、希薄化懸念や償却負担が気重くつきまとい、まさにそのために実質100円割れ(旧日商岩井の株主にとっては50円割れ)という慨嘆すべき株価水準が続いているからです。
 私も2年にわたって、双日株に特別な期待をかけてきましたが、先月、優先株の償却問題が予想とは違う方向に進展したことから、場合によっては双日株の投資方針を根本的に変更する必要もあると考えるに至りました。そのために、ここにも書きました通り当面は頭を冷やすということを最優先し、なまじっかの発言をすることはできるだけ避けたいと思っていたのです。
 しかし、ここにきて、どうしてコメントしないのだという顧客や読者からの叱責に加え、それなりに時間も経過したことから、思い入れをできるだけ廃して論じてみようという気になりました。
 双日にまったく関心がない方には恐縮ですが、今回は双日論に徹します。

 客観的といいながら、いきなり私見ですが、野村のMSCB引き受け後、双日はよくも悪くも「安心できる」銘柄に変貌したのではないかと考えます。「安心できる」ということは言い換えればリスクが低いということであり、そのことをよいと思うか、あまりよくないと思うかは投資家によって違います。
 以前の双日は、ちょっと値が崩れ始めると、売りが売りを呼ぶ傾向が強く、つねに大幅下落の不安が漂っている一方、逆に反転すると、買いが買いを呼ぶ傾向が強く、要するに外部材料とは別に内部要因による日々の価格変動がきわめて大きい銘柄でした。
 その原因として、まずそもそも双日の財務内容が不安定だったことに起因することはいうまでもないものの、その結果、売買に参加する投資家の層がやや偏ったものになったことが直接の要因になっていることが明白です。
 以前の双日を買う投資家とは、極端にいえば、次の2通りでした。
 @価格変動の大きさに着目した超短期投資家(ネット・ディーラー)
 Aハイリスク・ハイリターンで大幅高を狙う投資家(ついでに言えば、このタイプの投資家は我々外務員の重要顧客層であり、双日の銘柄特性を考えれば、同じ外務員で、ウエブサイトで著名な「未来かたる」氏が熱心に双日を推奨し続けていることも不思議ではありません)
 @のタイプの投資家が変わり身の速いことはいうまでもありません。加えて、Aのタイプの投資家も下値でこつこつ拾うよりも、基本的には順張り型の投資形態になりやすく、その結果、以前の双日はちょっと下げると、蜘蛛の子を散らすように買い注文がなくなり、売り注文に差し替わってしまう構造になっていました。

 それに対して、最近の双日の値動きはきわめて安定しています。そして、このことは2つのことを示唆味します。
 まず1つは、双日の企業内容に対する評価が、よくも悪くも安定してきたのではないかということです。
 もう1つは、そのことと密接に関連しますが、双日を新しく買おうとする投資家の層が変化してきたのではないかということです。

 後者に対しては、信用残の推移からも明確に推定できます。野村のCB引き受けが発表されて以来、信用売り残が急増しているにもかかわらず、買い残は横ばいです。たまたま今日の取引から現金規制が発動されていますが、一昨年の発動時と違い、売買が過熱しているわけではありません。売り残が急増したうちのかなりの割合が野村のつなぎ売りであることは、6月13日に出された大量報告書からも明らかです。野村の売りと思惑的な新規売りが加わった売り圧力に対して、大量の現物買いが静かにぶつかっていることになりますが、現物買いが相場を主導することは以前の双日なら考えられなかったことです。
 しかも、出来高に対して売り残の増加が多いことから、信用売りのかなりの割合がToSTNeT(時間外取引)で執行されている形跡があり、これはあくまで推定ですが、野村が相当な量の現物需要を継続的に創出していると考えざるをえません。すなわち、信用売りにたまたま現物買いがぶつかっているというより、機関投資家など中長期投資家の需要に対応する形で野村が売りを出していると考えるほうが自然な推移です。

 CBの発行は、大幅な希薄化が現実になるため、低PER訂正→株価短期数倍化の夢を追っていたハイリスク・ハイリターン志向の投資家(私含む)にとってはショックでした。
 しかし、ミドルリスク・ミドルリターン志向の投資家にとっては、極端な低PERではなくなったことにより、むしろ手頃な魅力を放ち始めたという見方もできます。丸紅でいえば、株価50円台では怖すぎて投資家が限定されるけれど、100円台、200円台、300円台と上昇するにつれ、投資家層が拡大するようなものです。
 私見では、双日を買う投資家層の変化とともに、双日の株価形成の焦点は、1株利益がいくらか(=さらなる希薄化懸念がどのくらいか)ではなく、07年3月期の復配が実現するかどうかに移りつつあると考えます。ハイリスク・ハイリターン志向の投資家にとって、配当は余禄にすぎませんが、それ以外の、特に長期投資家にとっては大切な果実だからです。
 
 双日の来期の配当について、先ごろ出た会社四季報は0〜3円と記載していますが、すぐに0〜30円の誤りであったと発表しています。
 これは当然であり、双日が3円の配当を出すということは、99%以上ありえません。単元株主に300円とか600円を配ってお待ちかねの配当金ですと胸を張れるかということもありますが、それより何より、たかだか総額10億円前後の配当金を受け取ったために、50億円規模の優先株への配当負担が発生し、普通株主は結果的に大変な損害をこうむってしまうからです。
 優先株のうち、約2000億円について、普通株に50円以上の配当を実施しない限り配当負担が生じない設定になっており、当面は普通株主にとって比較的有利と言える1株あたり配当金額は30〜49円であり、それ以外の配当案が株主総会で承認されるとは思えません。
 とりあえず、当面の株式市場は、来期の予想配当を30円としたうえで、その予想の実現確率をどう見るかによって株価が形成されるのではないかと思います。
 例えば、あくまで大雑把な考え方の例ですが、仮に30円配当が実現した場合の予想株価を1000円、実現しない場合の予想株価を300円、実現確率を50%と想定した場合、2年後の期待株価650円を要求する利回りで割り引いたものが、その投資家にとって現在の妥当株価であり、時価との差が超過利益として期待できることになります。(念のため申し添えれば、上例で配当の実現確率を50%と想定しているのは根拠がなく、私見では80%くらいあると考えます)

 もっとも、最終的に双日の株価を決定するのは、1株あたりの収益力であり、双日の将来の収益がどのように変化するのか(リストラ効果で堅調に推移するのか、下位の総合商社として伸び悩むのか)と、まだ残る優先株がどのようにして償却されていくのかという2つの問いに対する答えが、双日の長期的な株価動向を決定するのはいうまでもありません。
 ただし、当面において、世界景気に大きな変調が生じない限り、それらの問題についてはある程度の幅でのコンセンサスが成立しつつあり、むしろ復配の可能性を焦点とした株価モデルが有効な局面になったと私は考えます。穏健投資家を呼び込めるそのような素地が整ったからこそ、野村証券はCBを引き受けたのでないでしょうか。

 信用規制が影響して、双日の前場終値は2円安の479円でした。CB発表後の戻り高値489円を目前に微妙な動きのように見えますが、上述の事情から、過去のようにスリリングな上ブレ下ブレを起こす余地は小さいはずです。全体相場が堅調なら当然500円台に乗せ、その後も世界経済の順調な推移で来期の配当確率が高まるにつれ、階段を一段ずつアップする展開が続くと想定します。


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