真面目外務員の本音ロゴ

第130回 壮絶な下げ<12/18>

 平均株価で見ればしっかりですが、銀行と低位株で見れば、まさに壮絶な下げ相場です。幸いにして顧客の持ち株はありませんが、ミノルタの98円(25円安)などの急落を目の当りにすると、足がすくみそうになります。

 ミノルタは1株株主資本159円で、クラリオンの2円などに比べれば良好ですが、本当に大丈夫かと言われれば、もしかすると・・・・と不安になります。先日書いたように、実質的な財務内容はそれほど余裕があるようには見えず、急落に買い向かうには至りませんでした。
 ミノルタのように従来の値頃感が相当に高い株に対してさえファイテンング・ポーズがとりにくいのですから、元からの低位株に対しては、ほとんど見ているだけの状況です。

 いまソフトバンクが2000円ぎりぎり(330円安)とさらに急落してきました。某証券が目標株価を1500円としたそうですが、まさかつぶれると思って売っている人はほとんどいないでしょうから、割高だと思って売っていることになります。
 ソフトバンクが2000円で割高なら、割高だと思えてくる銘柄がぞろぞろ出て来ます。ドイツ証券の武者さんみたいに日本株はまだまだ下がると思っている人には、もうかってもうかって仕方がない相場なのでしょうね。

 ただ、負け惜しみでいいますが、今日の後場の相場つきは、ネットバブルの頃に似てきましたね。ディーラーや目先筋がどんどん売りから入ってきます。簡単に利益が出るから、ますます「強気に」売りの回転をきかせられます。みんなが売りから入って回転をきかせば、少々の買い手が立ち向かっても株価は限りなく下がっていきます。ネットバブルと同様、その循環がいつ終るのかはだれにも明確には分かりません。
 おそらく、行くところまで行って、だれもが行き過ぎだと感じる頃は、もうとっくに峠を越えたころでしょう。

 私はもうすでに十分に行き過ぎていると思います。みずほの21万円台がもし割高だとするなら、ゴールドマンのレポートの主張通り、現時点ではみずほ株の経済価値はゼロ、わずかに今後3年間の利益分の価値しかないということにもなりかねません。
 私はみずほの不良債権が本当はどの位あるのか分かりませんが、少なくとも90兆円の貸出債権の大半(80%台)は健全な債権で、今後も確実な利ざやをもたらしてくれるはずです。その他に様々な数字に表れない価値(ノレン代)も銀行の場合、馬鹿にできないと思います。

 とはいえ、まだ積極的にはなかなか動けません。売りが売りを呼ぶ展開が終るかどうか、残念ながら、半身の構えで待つ日々です。


第129回 いまこそ気迫を! その2<12/13>

 いま日経平均は250円安。昨日327円上げたのだから、差し引きプラスじゃないかというふうには、なかなか感じられません。中低位株や銀行株を持っている投資家にとっては、上がった日にはそれほど上がらず、下がる日には輪をかけて急落する日がずっと続いており、イライラを通り越して、針のむしろに座らされているような毎日でしょう。
 私も、昨日は合同製鉄が66円までつけ、今日はニチメンが73円まで下げているので、企業の土台には心配ないと思っていても、なんともいえない不安感にさいなまれています。

 ニチメンは、明日のITX(2725 NJ)の上場初値が注目されます。大型なのでいきなり公募価格の何倍にもなるということは考えられず、ニチメンの持ち株に含み損が発生することは避けられないかもしれません。しかし、せめて50万円以上で推移すれば、ニチメンにも見直し買いが入ると予想します。もっとも、根本的に株価が回復するためには、個別の材料より、銀行株安と国内関連株安の負の連鎖に歯止めがかかることが先決なのでしょうが・・・・。

 株価ボードをながめていると、気持はどんどん後ろ向きになっていきます。典型が持ち合い解消売りで、連日ダブダブと売り物が出てきて、ズルズルと株価が下げる下地になっているわけですが、どうせ下がるのなら先に売っておこうと考える投資家が増加しても不思議ではありません。売りが売りを呼ぶ展開は、買いが買いを呼ぶバブルが異常高値をつけてはじけるように、気違いじみた異常安値によって転機を迎えます。
 問題は、株価はきわめて解釈の余地が大きく、いったいいくらなら異常安値かは考え方によって大きく変わってきます。例えば、先日の川鉄の100円割れが絶対に割安とは断言できないように、前提次第では、相当の下値であっても妥当な株価水準と考えることが可能です。日頃、アナリストがもっともらしく発表している妥当株価は、仮に業績の前提に変化がなくても、分母にリスクプレミアムをどのくらい上乗せするかで、何分の1にも下がってしまいます。
 仮にNTTが20万円、川鉄が50円でも妥当と考える投資家が増加した場合、日本株全般の妥当水準が下方に大きくシフトしてしまう可能性があります。
 そして恐るべきことは、現在の株式市場の動きを見ていると、それ(株価のデフレ現象)が決して杞憂ではないと思えてくることです。

 しかし、私は決して上記の見方をしているわけではありません。幸いにして米国経済は当面明るい方向に動いているようなので、輸出関連株の業績回復には期待が持てます。問題は、銀行をはじめとする国内関連株ですが、実体経済は憂鬱な状況が続いているとはいえ、株価ほどはひどくありません。今後も簡単には急落しないでしょう。
 むしろ、ここ当面の本当の問題は、株価それ自体であり、株価が上昇に転じれば、まったく様変わりになる要素を多く含んでいます。
 株価が回復すれば、だれも一流銀行がつぶれるとは思わなくなります。配当の期待のある株を100円以下では売ろうとは思わなくなります。持っている株を売るのは惜しくなり、株も持っていないことに焦りを感じる人が増加します。
 日本経済が滅亡への道を歩んでいるのでなければ、株価のデフレス・パイラルの逆転が近いうちに起こると私は考えます。明日のSQはその一つのきっかけになる可能性があり、注目しています。
 仮に明日が転機ではなくても、がっかりしてしまわず、冷静に転機を見定める心構えだけは堅持していきたいと考えます。


第128回 いまこそ気迫を!<12/11>

 TOPIXがまた1000ポイントに近づいてきました。98年10月の980を下回らなければ、日本株の先行きは捨てたものでないと考えられます。
 まさに正念場ですが、顧客はともかく、営業マンやディラーなど証券会社の社員が意気地を失って、街を歩いていてもうつむき加減に見えるのは気になります。
 我々証券を業とするものは、どんな事態になっても前向きに対処する必要があります。調子がいいときだけ顧客に向かって元気なことを言えば済むのなら、こんな楽な仕事はありません。そして、対処とは、「進む」か、「退く」か、「待つ」か、3つのうちどれを選ぶかの決断です。

 後場始まり早々の先ほど、川鉄がなんと27円安の95円と急落しました。昨日までの株価は中低位株としては実に堅調で、さすがに川鉄は違うと私も考えていたので、この急落はびっくりです。すぐ電話して、顧客に勧めようと思いました。しかし、よく考えれば、現在の株価全般を見渡して、100円割れの川鉄だけがびっくりするほど安いとは言えないかもしれないとも思いました。
1円50銭の配当がずっと続くのがせいぜいと考えれば、持ち合い株を手放そうと考える法人があっても不思議ではありません。また逆に、好況になれば新日鉄にまさる川鉄の潜在収益力(期待配当6円?)を評価して安すぎると考える投資家がいても不思議ではありません。
私はどちらかといえば、後者の立場ですが、いずれは7円50銭以上の配当を期待できると考えている合同製鉄の時価70円のほうがより魅力的と思えます。
(ところで、合同の船橋工場で変圧器に故障が生じ、棒鋼の生産が1ヶ月近くにわたり事実上ストップすることが伝えられましたが、在庫等による対応で業績への影響はごく軽微に止まる模様です)

 魅力的と考える合同製鉄さえ、このところの私はほとんど売り買いしていませんが、しかし、意気地を失ってうつむいているわけではありません。ある程度はすでに持っているので、株価のモメンタムの好転を「待つ」という姿勢なのです。ハイテク系も同じです。だから、強気を実行したいのは、顧客のポートフォリオの中にほとんどない銀行株ですが、正直なところ、金融株についてはどうしても腰が引けてしまい、買いを実行するに至っていません。

 今が非常に大切なときだと思います。「待つ」にしても気迫をもって臨んでいたいと思います。自分の力で新天地を切り開く開拓者精神を持てず、不況を嘆き、政治に対する愚痴を言い、判断することから逃げて毎日を送るなら、相場が回復したとしても、本当に自分自身の決然とした判断を持てないままに終るのではないでしょうか。
 今こそ株式投資の原点に立ち、リスクに対する自分自身の立場を堅持したいと思います。


第127回 リスクへの再挑戦<12/05>

 辞めた元部下が外資系の生保に入り、私のところにも保険加入を頼みにきました。
 私は若い頃、保険に入るのは損だと思っていました。死んだら、死んだとき考えればいいという考え方で、私たち夫婦は一致していました。さすがに今はそんなに向こう見ずには考えられなくなりましたが、それでも、生命保険は最低金額しか加入していません。

 若い頃、私たちとは逆に保険好きの友人夫婦がいました。お互いの生命保険はもちろん、疾病保険や学資保険まで入っており、子供の生命保険まで入っているので、子供にまでつけることはないだろうと言いましたら、「貯金が少ないから、葬式出せないと困るから」というとぼけた返事でした。実際、彼の生活は保険の支払いに追われているようなものだったと思います。

 証券投資は、必ずしもリスクを負担するものではありません。短期の国債を買えば、いくら日本の国債でもまず無リスクといってよいでしょうし、どの位のリスクを負担するかは各自の自由です。
 その中で、株式投資をしている人は、本来はリスクについて相当な覚悟を持っているはずです。ところが、ここにきての日本の株式市場は、リスクに対して極端に拒否反応を示し、まるでアレルギーを起こしているかのようです。

 生命保険や銀行が株式を経営に影響を及ぼす危険な資産と考え、保有額を大幅に減らそうとしています。銀行の場合はおかみがガイドラインを決めたのでやむをえないとしても、生保までが株式を「危険だから」という理由で減らそうとするなら、その生保の資産運用についての見識を疑います。
 ここにきての銀行株と低位株の下げは、その発端はおそらく米国年金資金が日本の在来産業株の持ち株比率を下げ、欧州に振り向けたことにあるといわれています。しかし、それに尾ひれをつけて加速したのは、国内投資家(特に、機関投資家など法人投資家)の狼狽売りであると私は思います。

 事なかれ主義で資産運用がうまくいくはずがありません。リスクから逃げれば、得られるのはゼロ同然の無リスク金利だけです。また、気が遠くなるような不良債権や為替リスクや債券暴落の歴史などを考えれば、様々な資産運用の中では、株式投資はまだしもリスクが小さいほうとさえいえます。

 リスクは避けられないものの、なるべく小さいに越したことはありません。現在の市場はリスクにまみれているように見えて、実はふだんの相場に比べればリスクは小さいのではないでしょうか。もちろん、怖いのは倒産のリスクですが、これは銘柄を選ぶことにより解決できます。今の市場は、何もかも危ないと考えているかのように、特に200円以下の株は激安になっていますが、このようなときにこそ、烏合の衆とならず、独自の判断を持つべきと考えます。
 市場心理はおうおうにして明らかなミスプライスを平気でつけます。例えば、97年に倒産続発不安が高まったときは、完全に不安のない担保のついたレナウンの転換社債がなんと額面の半分近くまで売られました。理屈に合わない狼狽売りの典型でした。

 では、どのような株でリスクをとれば、実質的には小さなリスクですむと判断できるのか、それが問題です。実は、合同製鉄やニチメンではまたかと思われるので、170円台まで急落したミノルタをその有力候補と考えたのですが、今日、財務内容を調べたら、自信を持つには至りませんでした。
 これを書いているうちに、銀行株や低位株も上昇に転じ、日経平均でも明るい動きになってきたので、とりあえず今回は、リスクに対して前向きな気持を持ちたいという所信を表明するに止めます。


第126回 息をひそめる日々<12/04>

 UFJと日興コーディアルの連日の大幅安、主要銀行株の11月安値更新など、金融株の動きを見ていると、まさに日本経済が世も末に向かってずり落ちていくようで、身震いがしてきます。
 市場から退場を迫られそうな銘柄のリストも出回っているようで、投資家の多くが株を持っていることのリスクを思い知らされ、暗い気持になっているのではないでしょうか。

 このような状況の中で、株を買おうとすることは勇気が必要です。ましてや、金融株や低位株を買うには非常な勇気が必要です。私はその勇気を顧客に強いる気持はありません。だから、あまり顧客に電話しないのですが、顧客のほうから電話が来るのも最近はまれです。
 たまに、電話がかかってくるのは、1つは持ち株は大丈夫かという電話です。例えば、合同製鉄。私は大丈夫だときっちり判断していますが、それでも、本当につぶれないかと聞かれれば、「絶対」などという言葉はもちろん使えません。ましてや当面の株価見通しを聞かれれば、低位株が軒並み不安感で売られている現状で、「心配いりませんよ」とはなかなか言えません。(もっと、私が明るい性格だったらよかったのですが・・・・)
 もう一つは、本当にたまにですが、「買おう」という電話です。例えばみずほ。私自身は30万円超で勧めながら、安値を更新してしまったので腰砕けになってしまったのですが、顧客の一人はますます骨太の反骨精神を燃やしているようです。

 いろいろな顧客がいて、我々の仕事は成り立っています。ただし、顧客に対してなんらかの付加価値を提供できないなら、売買が活発な顧客ほどインターネットに逃げていくでしょう。今月もまた、顧客が去り手数料の上がる見込みがついえた我々の仲間が辞めていきます。恐ろしいことですが、今後相場が大幅に好転しても、我々のビジネスは回復するとは限りません。
 最近の私にとっては、今のように何もせずに日々を過ごしていると、当座の収入減もさることながら、将来の営業基盤が先細りになっていくのではないかという心配のほうが切実な問題です。

 しかし、そのような心配はありますが、当分は今のスタンスでやっていく他ないと思っています。以上はわざと暗く書きましたが、暗いときに「暗い」「暗い」と嘆いても仕方がありません。
根性があれば、その「暗さ」をもうけに結びつけるべく前向きに考えるべきでしょうし、私は私なりの前向きな気持で、今はただひたすら「待つべき時」と考えています。

 関心事の第1は、米国の景気が来年早々に転機を迎えるかどうかです。第2に日本の平均株価が年内9月安値を更新せずに推移するかどうかです。その2点の成り行きだけを息をひそめて見守っているといっても過言ではありません。

 私は3年前と同様、この息をひそめる日々の行く末に大きな希望を持っています。


第125回 倒産と延命<11/29>

 一昨日、「安寄り歓迎」と書きましたが、その途端に二日続きの大引け安となり、今日は安寄りの後、小反発に転じているものの、三日連続安にもなりかねません。
 市場のムードはまた一気に暗転ですが、私はこの程度では一喜一憂する気はありません。年内は日米とも株価が上がればそれに越したことはないとはいえ、9月安値を守って推移するだけでも十分だと思っています。
 ただ、みずほHがまた30万円すれすれに下がってきたのは注目だと思います。28万9千円の安値を更新するようでは、投資家のマインドを根本的に暗くしてしまいます。公的資金の投入があるまで銀行は下がり続けるという人もいますが、その必要が生じるようでは、日本経済の先行きはますます暗いと言わねばなりません。私は、主要銀行は自力で生き残れると考え、したがって、みずほの時価は買いだと思います。

 先週の大成火災に続いて、今週はナナボシ、新潟鉄工と企業の破綻が続きました。今日は、金商かと思ったら、これは延命の解決でした。もっとも、延命といっても、債務免除を受けることは、実際上は個人が自己破産するようなもので、更生法の適用を受けるのとそうは変わらないはずです。少なくとも、従業員にとってはほぼ同じ運命が待っています。株主権は残るとはいえ、本質的な投資魅力が生じるまでには、気が遠くなるような年月が必要なはずです。なぜこのような株に買い人気があるのか理解に苦しみます。

 新潟鉄工と金商はもともと債務超過(前期末連結決算)で、ある程度の覚悟はできました。しかし、大成火災とナナボシは、公表されている財務諸表ではまったく問題のない企業だったのですから、その倒産はショックです。ナナボシは完全な粉飾決算、大成火災も事実上粉飾決算です。
 大成火災がつけていた再保険は、実際上は発生した損失を繰り延べする効用しかないものだったというのですから、株主を馬鹿にしています。おそらく経営者は、自分の任期中だけの見かけ上の業績と自己保身を最優先課題としたものと思われます。
 同じことをやっていた日産火災が今日も売られ、220円台まで下げ、この会社の倒産は可能性が小さいことから株価自体は非常に魅力的ですが、経営姿勢への不信感がわだかまり、買う気になりません。

 いったいに米国企業が損失をドライに表面化させるのに対し、日本企業は損失を少しでも後延ばしにする傾向があるようです。
 その原因は、社会風土などいろいろあるのでしょうが、企業の役員が愛社精神というより会社にしがみつくことを最優先課題にしていることもその一つだと思います。
 今後、さらなる企業の淘汰も必至とはいえ、企業内部の構造変化もぜひ必要な課題だと思います。


第124回 安寄り歓迎<11/27>

 今日、米国が堅調だったにもかかわらず、いきなり日経平均100円安で始まったのにはちょっとびっくりしましたが、あくまでほんのちょっぴりです。
 日経平均のささいな揺れ動きに深刻に一喜一憂する時期は去りつつあるようです。
 9月は銘柄個々の差は二の次で、もっぱら日経平均の下値がどのあたりかが最大緊急の問題でした。10月はつかの間ほっとしたものの、11月の半ばにかけては、理屈では9月安値で底が決まりと考えていても、またもしかすると再急落しかねないという理屈抜きの不安が強くつきまとっていました。
 ここにきて、市場の気分は大きく変わりました。まだ9月が大底でないと考える筋金入りの弱気の人は当然いるでしょうが、普通の人はよほどのことがない限り日経平均の1万円割れはなさそうだと感じているはずです。

 問題は、上値の見通しがなかなか持てないことです。例えば、赤字の東京エレクを6900円で買って、いったいどのような売り目標値にすればよいのか? 京セラは赤字ではないものの、9600円で買って果たして1万円を大幅に抜くのだろうか? みずほの35万は多分安いのだろうけど、50万円なんてあるんだろうか? などなど、考えていくと、どうしても買いたいような気がしてきません。

 先ほども、ある顧客から久しぶりの電話があり、買いたいような気がするけど、今の業績では目先は上がってもたいしたことないよねと言い、私に同意を求めました。そんな感じがするのは私もまったく一緒です。

 でも、私は思うのです。去年は、半導体関連のあまりの好業績に目がくらみ、変化に対する備えを怠るという大失敗をしてしまいました。もし今の悪業績を見て、上値はたいしたことありませんよと軽く答えるようでは、それこそまったくの素人です。先行きに「変化」の可能性があるのかないのかを考えてから答える必要があることはいうまでもありません。

 私は「変化」の可能性が十分にあると考えます。アメリカのリセッション入りが今年の3月からだったと認定されました。昨年9月のインテルショックは、株価は景気に5〜6ヶ月先行するというセオリーに驚くほど忠実に、景気のピークを先見していたことになります。そしてもし、今年の9月が株価のボトムだとすれば、来年3月あたりに景気のボトムが来ることになります。
 このところの米国経済やハイテク製品の需給動向を見る限り、来年春に転換点を迎えても不思議ではないし、むしろ当然という気がして来るのは私ばかりではないでしょう。

 アメリカはどうでもいいのだ、問題は日本経済だという人も多くいます。しかし、日本株は米国株に比べ国内景気サイクルとの関係が正確ではなく、タイムラグがあったりイレギュラーが多く発生します。第一、日本の景気はバブル崩壊後いちじるしく弾力性を失っており、谷底の意味があまりないとさえ言えます。したがって、今後も当面は日本株の方向性を決めるのは米国株(特にハイテク株)の動向と考えてもよいのではないでしょうか。

 今、日経平均はハイテク株の上昇によりプラスに転じました。朝安・午後高は最近の日米市場に共通する非常に心強い傾向です。
 今日は安い銀行株だって、目先は回復有望と考えます。こちらはハイテクと違い、企業実態がよい方向に「変化」する可能性はほとんどないのでしょうが、市場が変化すれば、株価が変化し、つれて企業実態への評価も変化すると考えます。


第123回 3年ぶりの心境<11/21>

 今朝、他社の若手証券マンから電話がありました。NY安にもかかわらず、意外に日本株が粘っているので、どうしたらよいのか分からないというのです。
 どうしたらよいか分からないのだったら、何もしなければよいだろうと答えました。
 正社員なら、上からいろいろせっつかれるので、つねに何かしなければ自分の席がなくなるような脅迫観念に支配されがちです。その点、我々歩合外務員は、2〜3ヵ月なら何もしないぞと腹をくくることもできます。怖いのは女房の顔だけです。

 私自身は、今は特に迷いがあるわけではなく、現在のスタンスは前回書いた通りです。すなわち、もしかしたら相場は深押しせずにこのまま上に行ってしまう可能性がそこそこ出てきたと考えています。ただし、現時点では、それはあくまで可能性であり、当初想定されたように12月に下げる場面がある可能性もまだ若干あると考えます。
 いずれにしろ、9月が大底だったのはほぼ確実な状況になってきたものと考え、根本的には強気有利と腹積もりしています。そして、多分、今はどの銘柄を見てもキズ物ばかりに見えてしまうものの、そう遠くない時期に、なんでこんなにピカピカの銘柄があんなに安かったのだろうと思えるときがに確実に来ると思っています。しかも、それは特別の好材料が出たからとかではなく、気がつかないほど緩やかに地合いが変化し、ある日突然花が咲き出すような形になるのではないでしょうか。

 相場が大底をつけるときは、そんなものだろうと思います。若手証券マンは、この相場はよほど劇的な政策でも出ない限り変わらないと考えていますが、そのような形での、つまりみんなに納得できるような形での大底形成はむしろレアケースです。
 
 先週から、顧客がこれはという銘柄を買いたいが・・・・と言えば、たいていの場合に賛成しています。「そろそろ買いかね?」と聞かれれば、よほど資金がつまっている顧客でない限り「そう思います」と明快に答えるようにしています。
 問題は「では、何を買えばいいんだ?」と聞かれるときです。一番魅力ありと思えるのは小型成長株ですが、当たりハズレが大き過ぎます。まさか投信のようには分散投資するわけにもいきませんので、顧客ごとに答えが大きく変わってきます。
 日頃、あまり勧めない銘柄ですが、みずほHを勧めたりもしています。

 今の心境は、99年1〜2月の心境です。今は慌てずとも、そのうち大きなパフォーマンスを稼ぎ出せると楽観しています。


第122回 変化<11/19>

 前回の文章を書いた先週木曜日の午前中は、日本の株は到底上がりそうもないとだれもが思っている市場ムードでした。ところが後場、カブール奪還の情報に加え、ビンラディンが捕まったというという噂も流れ、日経平均が久々に400円高となりました。
 続く金曜日も後場高となり、銀行株も問題のみずほが一時S高の4万円高となるなど、底入れ機運が一気に台頭しました。もっとも、銀行株も日経平均も大引けでは急速にだれたので、今週になっても、依然弱気ムードを引きずっていますが、今日も始まってみれば、そこそこしっかりです。
 海外投資家の日本株に対する姿勢にも変化の兆しが伝えられており、私は先週後半からの相場に素直に変化を感じるべきと思います。

 問題は、どのような変化であるかです。

 弱気の人は、単なる綾戻りだよと言います。強気の人は、いよいよ上げ転換で、これからグングン上がるぞと言いますが、このタイプの人は口だけは万年強気で、いつだって「大相場間近」ですから、あまり参考にはなりません。
 多くの人は迷っています。ただ、先週までの「どうせダメだ」という濃厚なあきらめムードから、「ひょっとすると・・・・」に変わってきたのは確かです。
 このような市場ムードは、目先的には大きな期待はできないものの(依然、戻り売りが多いので)、先行きでは非常に有望な状況と思います。

 今後は、よほど悪材料が出ない限り、日本株を慌てて売ろうする人は減少し、上がったから売ろうとする人と、上がったからいよいよ買いだと考える人のせめぎ合いになるはずです。
 先週までの「もしかしたら再急落か」という弱気と「もうそろそろ底か」という強気のせめぎ合いよりは、強弱対立の次元が正常の状態に戻りつつあるのではないかと思います。

 まだ現時点では、11月13日の日経平均1万円割れが二番底だったかどうか判断するには早いにしても、9月が大底で、来年が今年に比べればはるかに明るい年になりそうな確率が相当に高まってきたと考えます。そして、ただ胸をなでおろすばかりでなく、今後の相場好転に徐々に対応できる態勢をとっておかなければならないと考えている次第です。


第121回 ミニ「二極化」<11/15>

 米国の主要株価指数は、日々売られては買われるという理想的な展開で、5月高値に対して半値戻りの水準を完全に上回ってきました。それに対し、日本の平均株価は、日経平均でいえば半値戻しの12,000円超どころか、それよりずっと手前の10,500円が重たい壁として意識される毎日です。
 今日はさすがにダメ株の松下まで買われ、電機株中心にハイテク株が久々に明るい動きを見せています。一方、銀行株はみずほHがまたしても安値更新するなど、今日だけの動きを見れば、昔懐かしい「二極化」現象です。

 9月までの下げは、明らかにハイテクが悪役でした。IT中心に世界景気の先行きが大きく懸念された結果です。
 ところが、もっとも懸念される本家の米国では、最近日増しに来年2〜3月の景気底入れ(とりも直さず株価は9月大底)説が多数意見となって、世界景気の先行きへの不安感が大幅後退しつつあるにもかかわらず、日本では、この国だけは救いようがないよとばかりに、国内景気への悲観が逆に強まっています。
 この現象をどう見るかで、相場観は大きく変わってきます。

 まず、悲観的に考えれば、90年代と同じく、日本だけが世界の経済拡大から取り残されて、まだまだジリ貧を続けていきそうだという解釈になります。
 しかし、楽観的に考えれば、82年にそうであったように、米国市場とのタイム・ラグが生じているのであり、目先的な現象だという解釈も可能です。

 米国景気が第2次オイルショック後の不況から立ち直ったのは1983年ですが、株価は半年近く先行して82年8月にまさに劇的な底入れ上昇を果たしました。にもかかわらず、その直後は日本の円も株も弱く、弱いがためにますます売られ、日本の平均株価は10月1日にわずかの差ながら安値を更新してしまったのです。
 しかし、10月8日に突然起こった米国以上に劇的な強気転換は今も忘れられません。
 その後、87年のブッラクマンデーまで、日米株はほぼ同一歩調の上昇相場となりました。

 銀行株の動向が目先の焦点となっている今の日本株市場ですが、銀行株を中心に考える限り、先の見えない泥沼にはまり込んでしまいます。しかし、泥沼に一歩距離を置き、金融システムに大きな混乱はないと割り切れば、日本株には魅力的な銘柄もたくさんあります。そして、一般の株価が上昇してくれば、銀行株も魅力的(私はそう思ったことはありませんが)だと考える人が出て来て、銀行株も上昇します。90年代の相場はその繰り返しでした。

 今回の場合、銀行や信用不安のある銘柄をさておき、一般企業でいえば、最近の相次ぐ企業業績の減額修正は、ハイテク業種以外でもかなり多くの場合がIT不況の影響を受けています。ITの需給動向が従来以上に日本の企業業績を大きく左右するようになっていることは疑いありません。もし、ITが上向けば、企業業績に対するマインドは抜本的に変化し、個別企業への投資魅力が強まるはずです。
 したがって、米国株が今後大崩れしない限り、日本株も近々に全般的な上昇局面を迎えると私は思います。

 電機がやや明るいということは、相当な範囲の業種も明るくなりつつあるということであり、今起こっている「二極化」現象は、様々なタイム・ラグの中での一時的な現象なのではないでしょうか。

戻る