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第240回 どちらが異常なのか<7/2>

 4日連続高となった総合電機株を持っているある顧客の言葉。「目先いいところじゃないか。上げ方が異常だよ」・・・・実は3日前から同じことを言っています。
この顧客は図式的に言えば、1000円の富士通を買い、500円でナンピンし、3000円で肝を冷やし、490円で半分を売却してしまったのです。
 私は不思議でたまりません。富士通は去年の今ごろから秋にかけて猛烈に下げました。その下げ相場の中で、天下の富士通が安過ぎる、もう底だよと毎日言い続けていたのに、今度は少し上げが続けば、まるで上がるのが間違っていると言わんばかりです。

 この顧客に限らず、今回の上昇相場の特徴は、上昇率はさほどでもないにもかかわらず、「異常な騰げ方だ」「上がる理由がない」と考える人が実に多いことです。まるで日本株は下がるべきであって、上がるのは理屈に合わないかのようです。
 バブル崩壊後も、日本の株が異常な高騰を示したことはいく度となくあります。よりによってなぜ今回に限って、おかしい、おかしいということになるのか不思議です。
 それに、株価の上値に対しても実に慎重な意見が多いことに驚かされます。今朝、地下鉄の中吊り広告で、「週刊朝日」の見出しに、「活況に沸く株式市場」とあり「年内に株価1万円説?」と書かれていました。なぜ年内の株価(日経平均)たかだか1万円に「説」や「?」をつけなければいけないのでしょうか。株価はどんなときにも半年で最低10%位のボラティリティーはあるはずで、9000円超の時価に対し、1万円は「説」でも「?」でもなく、可能性の一つとして当然想定すべきです。ところが、1万円が到底ありえないという固定観念が蔓延しているから、週刊誌の記者もつい「説」とか「?」とかつけたくなるのでしょう。

 株式市場の裏返しで、債券市場の関係者のコメントも実に不思議です。このところ下がるたびに「ファンダメンタルズにはなんの変化もないのだから、一時的な下げで、いずれ落ち着く」とほとんどの債券の専門家が口を揃えて言います。債券は昨年からは特に上昇一方の動きを続けてきました。普通に考えれば、長く上がり続けたものが下げに転じてもまったく不思議ではないのに、債券はまるで上げ続けるのが当然であって、下がるのは理屈に合わないといわんばかりです。

 以上、まるで愚痴みたいに書きましたが、現在の状況下では、負け犬の遠吠えではないことは分かっていただけると思います。
 なによりも嬉しいことは、顧客のパフォーマンスが劇的に回復しつつあることです。顧客によっては、この3年間の痛みが激しかったので、まだ元本回復には至っていないものの、希望が持てる状況となりました。
 当面の戦略としては、ニチメン日商を合同製鉄に代わるコアストックとして、2部の日本医療事務センター(9652)やアライドテレシスなどの割安株を分散的にサブ・コアストックとし、そのうえで信用取引を中心に第一部市場の主力株や人気株に短期的に割り切った投資を実行したいと思います。


第239回 脱固定観念<6/25>

 日経平均が9000円を割り、新聞などの関係者のコメントを見ても、強気と弱気が入り乱れています。昨年来の下げ相場の中では、いろいろな意見がぶつかり合うということはあまりなかったところ、ここにきてようやく市場参加者の意見が様々に分かれ始めたこは大いに喜ばしいことです。
 日々の出来高が多いということは、当然ながら、市場のセンチメントが一方向に偏らず、強気と弱気にほどほどに分かれていることを意味します。
 そのせめぎ合いの中で、強弱どちらの立場を採るかは、ふだん以上に難しいことです。私は正直なところ、目先の日経平均の上げ下げを予想することはさじを投げています。その代わり、ぜひおろそかにしてはいけないと考えていることは、およそ次の通りです。

 今回の降って湧いたような活況の行方は、もちろん?です。しかし、おそらく確かなことは、昨年前半の上昇相場と違い、終わった後になにごとか残る、つまりエポックメーキング的な要素をはらんでいるであろうということです。
 思えば、昨年2月のカラ売り規制に始まった戻り相場は、日経平均はあらよという間に大幅高したものの、その後にあらたなる下落相場へと続き、終わってみれば単なる綾戻りを演じただけの実に空しい数か月間になりました。
 それに対して今回は、為替介入資金が回りまわって日本株に回ってきたという指摘はあるものの、少なくとも売りを規制したための株高ではなく、自由な資金が市場に流入した結果です。
 カネが動き売買が活発化するということは、なにごとかの意味を持つはずであり、場合によっては歴史的な意味を持つ可能性があります。
 もし歴史的な転換点に立っているとすれば、いちばん危険なことは、それまでに長く続いた日々の中での常識にすっぽりとはまって思考したり行動したりしてしまうことです。たとえば、「年後半の株価は下がりやすい」とたいていの人がいいます。それは確かに経験的には確率の高い事実ですが、その常識に従うことで大きな新しい流れを見失ってしまうことを私は何より今は恐れたいと思います。

 固定観念を持たず、なるべくフレッシュに相場に対応していきたいというのが当面の基本方針の第一ですが、そのうえで、次のような考え方を基本的な考え方として仮に固定しています。

 まず第一に、日米の平均株価の動向については様々なケースを想定するものの、基本的な想定として、米国相場の当面の上値は重いと考え、日経平均についても躍動感のある上昇は考えにくいと見ます。
 第二に、米国を中心にする外国資金の流入は、当面においては一服する可能性も高いと考えますが、一部で言われるように米国株が上がっているうちだけ入り、米国が上げ止まれば出ていくという単純なものではないはずで、私は傾向的には今後も日本株への資金の流入は続くと考えます。
 第三に、相場の流れは、93年に類似すると考えます。すなわち、流動性は高まるものの主力株の上昇には限界があり、業績やバリューを重視した銘柄選別が強く働き、中期的には小型株の上昇率が目立つと想定します。

 上記の想定の鍵を握るのが外国資金の動向であることはいうまでもありません。私は、外人買いが続くかという問いは、日本の銀行株がさらに上昇するかという問いと基本的に同じであると考えています。
 さらにまた、日本の銀行株がさらに上昇するかという問いは、不良債権問題はまだ道半ばなのかという問題と相通じ、究極的には日本経済のデフレ化はますます深刻化するのかという問題に帰すると考えます。
 それらの問題は、私にとってあくまで「?」です。日本経済のデフレ化に歯止めがかかると思うのかと聞かれれば、首を傾げざるをえません。
 ただし、私が強く感じることは、これらの「?」に対して、最近までの市場はあまりにも悲観的見方に傾きすぎていたのではないかということです。

 典型が長期国債の相場です。10年もの0.4%は、前にも書いたとおり、今後少なくとも5年間、絶対にGDPの拡大はないと断言している水準です。どんな人も将来のことは分からないのに、あたかも分かったように自信満々に相場が形成されるとき、相場は転機を迎えます。
 株式市場の関係者のコメントにも、目先の相場予想はともかく、根本的なところで長い下げ相場の中で知らず知らずに沁みこんだ悲観から抜け切れていないような傾向が目立ちます。(例、ある外資系証券マンは、銀行株について「収益の見通しが暗い以上、上値余地は小さい」と日経でコメントしていますが、この意見は、銀行収益は会社がいくらよい予想を出していてもどうせ結果は悪いというこの人自身の判断が先にあり、銀行株はだめだからだめなんだよと述べているにすぎません。

 私は現在の相場を「固定観念への挑戦」という流れでとらえたいと思います。
 挑戦すべき固定観念の第一は、日本のGDPは縮小一方かということです。(ただし、これは私もなかなか勇ましくは考えられませんが)
 第二に、銀行をはじめとする日本の在来企業に魅力はないのかということです。
 第三に、機関投資家の好む優良株は真に魅力的な株ばかりなのかということです。(ついでですが、昨日上場のセイコーエプソンに3000円台後半に買うほどの魅力があることを私は理解できません)
 第四に、不人気の小型銘柄には投資する魅力がないのかということです。
 などなど、これらの問いかけは、それ自体が私自身の固定観念によるものですが、なるべく固定観念にはまらないように、相場の趨勢をみつめていきたいと考えています。


第238回 旋風の行方<6/18>

 わずか2か月前には、「株式市場の死」が言われました。市場参加者は猫も杓子も「年金代行売り」を悪材料に掲げ、買い向かう動きはほとんどなく、売り一巡後のわずかな上げが唯一の相場の綾という、無気力さだけが濃厚に漂う毎日でした。
 まさに一寸先は闇で、現在の大商いをだれが予想したでしょう。株価の反発を予想した人はいても、出来高の急増を予想した人はほとんどいなかったはずです。
 りそなやみずほなど低位株の売買や超目先の売買で株数がかさ上げされている分を割り引いても、最近の出来高は驚きです。売る人が多いのにも、買う人が多いのにも、両方ともに大きな驚きです。

 ところで今日の日経に、「市場に強気と警戒感」と題して、9月までの日経平均の高安予想が紹介されていますが、高値は沢上投信社長の1万4千円が飛び抜けていて、あとは1万円が3人、9700円が2人、9400円、9200円各1人と随分小幅なレンジにおさまっています。たしかこの中の何人かは、ついこの前まで9000円を上値目標にしていたはずで、コメントを見てもそれほどの定見が伝わって来ず、私には横並び意識であたりさわりのないことを言っている人が多いようにしか思えません。
 例えば、コメントに「日本株の割安感も薄れてきた」とあります。これは一見もっともらしい意見ですが、よく考えると何を言いたいのか全然分かりません。割安感をもし米国株など外国株との相対的関係でいうのなら、直近で米国株等に対してそんなにアウトパフォームしているとは思えません。この人にとって割安感は「薄れてきた」のではなく、もともとなかったということになります。またもし絶対的な割安感でいうなら、もっと問題です。日経平均は底値から20%しか上がっていません。銀行など除けば主力株の上げ率はもっと低率です。もし底値から20%上がっただけで割安ではないというのなら、投資価値としてはもともと割安感がなかったのだと考えるのが普通ではないでしょうか。
 いわんとすることは、もっともらしいコメントを発表している人の多くに、自分自身の信念に裏付けられた真実味が感じられないということです。もし本当に割安と思うなら、沢上さんのように5割高くらいありそうと思っても不思議がありません。もし平均株価に10%の上値余地もないと思うなら、現在の水準は投資価値から割高と判断するとはっきり言えばよいと思うのです。

 現在の株式市場は、長い間空気が澱み悪臭に満ちた路地奥に、思いがけない旋風が吹き始めたようなものです。
 澱んだ空気と悪臭に慣れた人は、帽子を押さえ、こんな風めったに吹くものじゃなく、そのうち元の状態に逆戻りすると論評しています。新しい風が吹き始め、もう季節が逆戻りしない可能性があることを明確に主張している人はごくわずかです。
 もちろん、今回の旋風が一過性のものか、それともエポックメーキングになるかは神のみぞ知るです。ただし、間違っても、この3年間の下げ相場の中で作られた固定観念にずっぽりとはまって、新しい動きを見過ごす愚だけは避けたいものです。
 今日、ニチメン日商が300円台を回復しました。この銘柄が単なる出遅れボロ株の動きに止まるのか、それともオリコのように収益力と企業再生を前向きに評価する相場に育つか、旋風の行方が決めることです。


第237回 二度と歩けない道<6/11>

 驚くほど強い相場ですね。単に強い相場なら、これまでにも何度もありましたが、バブル崩壊後に強い相場展開となったのは、政策など大きな支援材料に恵まれているときか、下げ相場の後に急反騰が来て、激烈なリバウンドに入ったつかの間のことだけでした。
 それに対して今回は、底を打ったのか打っていないのかはっきりしないままに、もやもやとした小幅な上げが続き、とうとう衆目の一致する大関門である日経平均8800円を完全にクリアすることも夢ではなくなりました。(後記、後場になんと9000円台までありました)
 お先真っ暗にみえた4月安値時から特別な好材料が発生したわけではなく、内外の景気指標の悪化が報じられる中での上昇なので、みんなが危なかっしく思っています。上昇することを喜ぶ半面、狐につままれたような感じを抱いています。

 私の記憶では、この感じは、ブラックマンデー後の1988年の初め、米国の不振を尻目に日本株だけジワジワと上昇し始めたときに似ています。ブラックマンデーの急落で株の恐ろしさをいやというほど思い知らされ、世界の株高時代が終わり、これからは冬の時代だという人が多い中での、思いがけないジリ高で、結局それが「債権大国相場」の馬鹿騒ぎにつながっていきます。
 当時の相場は、札びらで人の顔を叩くような横着でアンリーズナブルな相場でした。政官民あげての大酒宴中で、「国策は買い」という大東亜戦争もどきの論理さえ知っていれば、あとは度胸だけの株式相場でした。
 それに対して、今回はいまのところ、銘柄の買われ方を見ると、総体としてはきわめてリーズナブルな質の投資判断が働いていることを強く感じます。国内機関投資家が総見送りに近い中、一部の個人や外人投資家、それにさわかみFなど例外的な機関投資家がこつこつと自分の信念によって銘柄を拾い、その動きがだんだん広がりここまで大きく育ってきたというふうに見られます。
 私見では、88年初めのジリ高が、結果的には戦後50年の成長の最後に来た政官民癒着(親方日の丸)のどんちゃん騒ぎにつながったのに対し、今回のジリ高は、うまくいけば、遅まきながら日本の新時代入りを宣言するものになるのではないかと考えます。
 昨日の日経新聞に、「日本の経済・社会は非常事態/今こそ体制と発想一新」と題して、京セラの稲盛さんと堺屋太一さんの提言が掲載されていますが、政治家と官僚の癒着がもたらした現在の社会劣化にいかに歯止めをかけるかという点で、一つ一つが納得できる提言だと感じ入りました。残念ながら、この提言が受け入れられるような社会になるまではまだまだ長い紆余曲折を経なければならないでしょう。しかし、改革がどんなに遅々として進まなく見えても、時代は確実に変貌します。なんだかんだいいながら、日本の経済社会は変化しつつありますし、堺屋さんのいう「知価社会」もますます現実のものになってきています。
 うまくいけば、今回の上昇は、工業化で登りつめたかつての高成長拡大経済ではなく、社会全体としては低成長均衡型だが、個別には夢も希望もある新経済体制のファンファーレとして息の長い相場に育っていくのではないかと考えます。

 何を買うか? それが問題ですね。当面は、銘柄にこだわる必要はなさそうで、動きのよさそうなものから買えばよいのかもしれません。ただし、私は日替わりメニューによる投資は苦手なので、合同製鉄やニチメンなど馬鹿の一つ覚えみたいな銘柄を主軸に、あくまで今後の日本の新経済体制に適合できる銘柄に投資するという気概を持ち続けていきたいと考えています。
 ちなみに、合同製鉄は「知価社会」に特にふさわしい銘柄ではありませんが、鉄筋コンクリートの建物が建つ社会である限りそこそこの収益力を保っていけるはずで、前には当面の目標値を150円としていましたが、180円に上方修正したいと思います。


第236回 薄皮がはがれるように<6/4>

 私の顧客のAさんは最近イライラしています。人一倍刻々の株価が気になるタイプで、しょっちゅう電話をかけて来るのですが、相場が反転したようなのに自分の株はほとんど動いていないからです。
 もっとも、その方の持ち株も本当は少しずつ上昇しているのです。ですが、過去の平均株価のリバウンド局面で、ものすごく持ち株が上がった成功体験が忘れられず、今回は自分だけが置いてきぼりになっているのではないかと焦っていらっしゃるのです。
 その方のイライラの原因は、持ち株の種類(業績の悪い銘柄が多い)のせいも多分にありますが、根本的には、今回の相場の戻りは株価指数で見て過去の底入れ局面に比べて非常に地味な動きが続いているということにあります。
 今日、日経平均はようやく8600円台に乗せてきましたが、底から1000円幅(あるいは13%高)を回復するのに1か月以上かかるというのは、バブル崩壊後いく度とない反騰局面でおそらく一度もなかったことです。

 考えてみれば、今回の平均株価が反騰する過程で、派手な大幅高がないのは当然です。
 日本経済はいま、10年もの国債の利回りがなんと0.5%を切るような、経済の先行きに対する途方もない悲観に包まれています。もしそれで株が大幅高したら、精神分裂症か矛盾以外のなにものでもないはずです。
 米国でも債券高と株式堅調が微妙なところで折り合っています。1982年にレーガンの高金利政策が修正され、世界経済がディスインフレと安定成長に向かい始めたときのように、明るい気持で債券と株がともに買われているわけではありません。債券が相変らず経済の停滞とデフレ化の予想のもとに旺盛な買い人気を集める一方、株式は市場参加者のだれもが不思議がるほどねちっこく強い動きを続けています。現在の米国の債券高・株堅調・ドル軟調を説明するためには、景気が好転し企業業績は上向くがそれほどでもなく、長期的には経済の停滞が続くがそれほどでもなく、したがって、ドルは弱含むがそれほどでもない・・・・等々と、玉虫色の経済観を持つしかありません。

 日本の場合、債券相場で見れば、今後10年間、日本経済は絶対によくならない(GDPで3%位の諸外国並の成長はありえない)という見通しでほぼ全員が一致しているような価格形成になっています。10年もので0.5%の債券に投資することは、10年間の合計で複利5%強のリターンが期待できる一方、率的にはそれよりも大きなリスク(例えば5年後に金利が3%に上昇すれば、その時点の評価損は約12%)を負担するわけですから、日本経済の活力をよほど馬鹿にし、近い将来の経済回復の可能性はほぼゼロであると見込まなければ投資できない代物です。

 一方、株のほうで見れば、なんといっても最大の明るい材料は、企業業績の回復です。そして、これがなぜ債券相場で表現される日本経済の絶望的な将来展望と共存できるかといえば、現在の企業業績の回復がリストラによるものだからです。すなわち、縮小均衡によるミクロの回復とマクロの徹底的な停滞予想の組み合わせのもとに、現在の株堅調と債券高が共存しているのです。
 もし債券相場が今後も堅調を保つなら、平均株価の胸のすくような大幅高は出現しないだろうし、全面的なかさ上げには大きな限界があります。なにしろ、GDPがほとんど成長しないという前提に立つわけですから、上場企業が全面的にハッピーになるようなシナリオが描けるはずもありません。

 その意味で、債券相場がどのような形で転機を迎えるのか、それとも転機はまだ当分訪れないで株式相場が再び安値追いになるのか、非常に注目されます。
 私は、後者の確率はほとんどないと考えます。債券はピークアウトするものの堅調を保ち、したがって株式相場は全体としては上値が重く選別色の強い展開となるか、債券が緩やかながら下落し、株式市場がますます明るさを増すか、そのいずれかの確率が高いと考えます。
 いずれにしても、当分はなにかはっきりしない気分が漂い続けるものの、薄皮がはがれるように、日に日に明るさが増していくことは確実と考えています。


第235回 原点を確認しつつ<5/28>

 株価70円の長谷工が、1株利益52円予想の好決算を発表し、ストップ高で100円台に乗せる一方、高収益予想だった日本コーリン(JQ 6872)が大幅赤字で7日連続ストップ安するなど、足下の企業業績は実にドラスチックに揺れ動いています。
業績や資産内容が激しく変化するから、PERとかPBRなど基本的な株価尺度はなんの役にも立たない、ルックなどその筋の情報のほうがよほど役に立つ、と考える投資家もいるかもしれません。しかし、私はまったく賛成できません。ドラスチックに変化する今だからこそ、自分自身で判断する物差しを持っておく必要があると思います。
今回はPERやPBRなど基本的な物差しのことを念頭に置きながら、長谷工とみずほという2つの低PER株について考えてみたいと思います。

 まず長谷工については、去年の2月21日(第145回)に書きましたように「あてがい扶持の公共事業で生きている企業ではないので、バブル期の不良資産と過大債務さえ整理できれば、生き残る社会的意義は十分にある」と私は考えていましたので、再建計画を超過達成しつつあることを喜ばしく思います。
 ただし、いくらPER2倍でも、100円以上の長谷工の投資価値については大きな疑問を感じます。優先株の残高によって債務超過を脱したのであって、その残高を差し引いた普通株の株主資本は依然1株あたり300円強のマイナスであり、普通株の株主資本がプラスに転じるには、現状の利益水準が7年以上続くか、優先株が大量に普通株に転換されるかが必要で、どちらのコースで考えても、私は投資魅力を感じません。すなわち、PERが低くても、株主にその利益を享受できるのは、遠い将来のことか、あるいははものすごく発行株数が増えて持分が薄まった後になるからです。
 長谷工の足元の業績好調で価値が高まる比重は、普通株よりむしろ長谷工への債権と優先株にある段階と考えるべきで、銀行にとって好材料になっているはずです。

 ところでその銀行ですが、メガバンクの今期収益はいずれも順調な回復が見込まれており、もっとも株価が低いみずほは1株利益1.7万円の会社予想で、株価7万3千円でPER約4倍です。長谷工と違い好業績をすぐに株主還元するのも大いに可能で、とりあえず3000円の復配方針を表明しており、配当利回りは4.1%です。むろん、銀行の損益は所詮不良債権と保有株の動向に大きく左右され、単純にPERで割安割高を語っても意味がないとはいえ、少なくとも予想通りの収益が達成され、結果的に株価が超割安であったということになる可能性はだれにも否定できないはずです。
 ところが、多くの人がみずほには山のような不良債権が隠されていると思っており、第二のりそなになることが決定的と考え公言している人さえいます。銀行アナリストは私が知る限り、口を揃えて「不良債権処理の峠を越えつつあるが、今期が正念場で、場合によっては国有化のリスクにさらされる」というような意味のことをいい、みずほではなく三菱東京を勧めます。

 私は不思議でなりません。リスクがある(と市場が判断している)から、ハイリターンが期待できるのであって、アナリストの役割は、そのリスクの程度(確率)と株価とのかね合いを分析することのはずです。ところが、株価対比でリスクに言及した見解はほとんど聞けず、彼らはまるで債券投資家のように安全性の度合いだけを問題にしているとしか思えません。
 昨日の日経金融新聞に、著名銀行アナリスト4人によるメガバンクの比較評価が掲載されていますが、4人とも総合評価を株価順とまったく同じにABCDと並べているか、上二つをCとし、下2つをDとしているかの違いがあるに過ぎませんでした。
 みずほが三菱東京より国有化リスクが大きいことは、アナリストにいわれなくてもだれもが感じています。問題は、今期予想PER15倍の三菱東京を買うべきか、4倍のみずほを買うべきかであり、一時流行した「一流銘柄や業界トップを買っておけば間違いない」という安易な投資判断は許されないはずです。

 私のみずほの株価に対する考え方は、以下の可能性の組み合わせによるものです。
 1.不良債権問題を自力で克服し、1株利益2万円程度が安定的に期待できる可能性
 2.りそなと同じように公的支援を受ける可能性
 3.りそなより厳しく株主責任を問われる可能性
 1の状態であれば、妥当株価は20万円、2は5万円、3は0同然とします。
 私は、1の確率が少なくとも50%以上で70%中心位、2の確率は25%、3が5%と考え、それらの組み合わせによる理論株価は(20万×0.7+5万×0.25+0)で15.5万円となります。
 ただし、1の状態の妥当株価をどう見るか、2,3の確率をどう見るかで理論株価が大きく変化することはいうまでもありません。私は、今年中にその条件はよい方向に激変すると楽観的に見ています。


第234回 様々な出来事―合同鉄その他<5/22>

 ある方からメールをいただきました。文の趣旨から見て、そのまま引用してもご異存がないと思われますので、下記に全文を掲げます。

 コード番号5445、6835、2768など、貴殿推奨の銘柄は全て購入直後より下落し困却している。売り逃げの為の推奨と疑われても仕方あるまい。責任ある回答を「まじめ外務員の本音」を通して回答されたい。

 まず自信をもって申し上げられることは、「売り逃げの為の推奨」ではないということです。
 この方が、私の文章を読んで「購入直後より下落し」評価損を招く結果になっていることに対して、誠に申し訳なく思います。(5445の東京鉄鋼はいつのものか不明ですが、6835のアライドテレシスと2768のニチメン日商は、前回も掲げた銘柄で、14日の終値2980円と247円に対して、1週間後の昨日は2625円と234円です)
 今後について、銘柄を掲げるときは「1.買いあおりではありません。2.まったく個人的な株価判断です。3.投資の参考になさる場合、投資の可否、タイミング等すべてご自身でご判断ください」と書くことにしようかと考えましたが、と思い直しました。本来それらのことは自明で、読んでいただく多くの方にとって、言わずもがなのことだと判断されるからです。

 さて今週はいろいろなことが立ち起こりました。
 りそなについては、寄付の買い有利を確信し、一部実行しました。ただし、りそなの順調な値戻しに比べ、みずほの値の重さは予想外でした。
 いまこれを書いているとき、りそな71円に対し、みずほは実質74円。需給要因の違いがあるとはいえ、たまたま監査法人が同じで、内容が格段に優ると判定されているみずほの株価がなぜギブアップした銀行と同じくらいなのか私には理解できません。
 買いあおりで申し上げるつもりはありませんが、来週月曜日の各銀行の決算発表後にメガバンク株価の本格回復の動きが出ることを期待しています。

 次に合同製鉄の100円台回復。昨日、決算説明会がありました。猪熊社長はもの静かな言い方ながら、「頑張れば必ずいい結果が出る年になる」と、収益確保と復配に向けてこれまでになく自信をうかがわせました。会社予想の今期1株利益22円は、@需要横ばい、A原料スクラップ現状より2千円高、B製品現状より千数百円高を前提とするもので、現在沈静化しつつあるスクラップ価格が再び高値を更新するなど思いがけない事態が生じない限り、予想数字の達成は難しくないと考えられます。
 特筆すべきは、今期の好収益はたまたまの好条件が重なって見込まれているわけではなく、中期的に考えても、今後はごく普通の状態として同程度の収益が保たれていくだろうと予想されることです。みずほ株を中心にする有価証券評価損は今後はもし出ても1ケタ小さいものになりましょうし、リストラ損が一巡し、今後はコストダウン効果がフルに発揮され、そして少なくとも主力製品(約50%)鉄筋棒鋼の採算維持には、需給調整の浸透から安定感があります。
 成長性はまったくありませんが、中期的に15円〜20円台のEPSをわりと安定的に期待できるとすれば、本来、市場が普通の状態のときなら、株価は200円台に評価されてもおかしくないはずです。(超長期的には、1株株主資本と株価は均衡に向かうはずで、私はかねてから均衡点を250円と考えていましたが、巨額の特損計上が一巡したことで、300円台での均衡もありえると思え始めました)
 今日は5円安の106円で、これまで合同製鉄の株価は短期的に急騰するものの、あっという間に元の黙阿弥になる習性があり、お客様はまたかと不安がっていますが、今回は業績の裏付けを伴っているだけに、長い期間をかけて株価の水準訂正を果たす可能性が高いと考えます。気の長い話として200円台目標、当面はPER7倍の150円を目標にしています。


第233回 皮算用<5/14>

 株をやっている動機は人様々であり、狙っている儲けの質も人それぞれ大きな違いがありましょう。
 仕手株やネット株の乱舞がたまらなく好きな人がいるかと思えば、株の王様は電力と鉄道株で、他はインチキ臭いものと考えている人もいます。好みは人それぞれのものであり、傍からどうこういうべきものではありません。
 いちばんいい思いをしたという時期も、必ずしもバブルのときではなく、人によって様々でしょう。私の場合、バブルのときはむしろ苦痛の日々でした。いい思いをしたのは、近いところでいえば、98年10月に底入れした後、特に翌99年の3月〜6月です。

 98年10月に、銀行株が底入れして反騰に転じた後も、相場全体には警戒感が色濃く漂いました。この時期、99年の大出世株であるファーストリテイリングが1000円台でいくらでも買えました。サイクル的にも、小型株の人気が離散し、好業績の成長株が低PERで買える時期だったのです。
 99年3月、ゼロ金利政策により、相場全体が本格的に陽転し、平均株価もはっきりと上昇トレンドに転じますが、全面高はごくわずかな時期でした。すぐに選別色が強まり、躍動感をもって上昇する銘柄とそうでないものに明暗が分かれたのです。
 97年以降では、私はこの時期にもっともパフォーマンスを稼ぎました。(2000年春のネットバブルはいい思いと悪い思いが半々でした)

 勝手な思い込みですが、おそらく現在は、かなりの部分で98年10月〜99年1月の底入れ直後に類似しており、当面において不透明感が強く漂うのは避けられないと思われます。ただし、そのことは必ずしも投資環境として絶好ではないということを意味するわけではありません。
 99年の場合、例えば前述のファーストリテイリングは、その不透明時期の中で上昇が始まっており、99年初めには底値から2倍の2000円台への回復を示していました。そして、相場陽転後もそのまま上昇を続け、99年中に4万円台まで上昇したのです(高値は翌年の56000円)。ソフトバンクや光通信など後のネット人気株も、相場不透明時期に上昇が始まっています。

 私が申し上げたいのは、まず第一に、現在はもしかすると当時のファーストリテイリングやソフトバンクに相当する夢のある投資物件に出会うチャンスだということです。
 第二に、手堅く考えても、普通に割安な銘柄に投資していれば、必ずといってよいほど報われる局面がこれから到来する可能性が高いということです。
 第一(グロース系)については、当たりはずれのあることですが、第二(バリュー系)については、もし平均株価が4月で底入れを果たしたのであれば、これからほぼ間違いなく実現すると思われます(というより、年初からすでに相当な範囲で、割安株の水準訂正が進んでいますね)。そしてもし、割安株の本格的な見直し局面が実現すれば、相当に手堅い運用でも、半年で財産を2倍にすることは十分に可能と過去の経験から申し上げられます。

 問題は、平均株価が底入れしたかどうかですが、これについてはただただ祈るばかりで特に考えがありません。
 現在考えていることは、底入れを前提として、いかに大きな値上がりを期待できる銘柄を顧客の好みに合わせて勧めていくかです。
 ファーストリテイリングの夢よもう一度の銘柄では、アライドテレシス(6835)をもっとも候補としています。ネットワーク関連逆風の中での好業績、IP電話普及にからむルータの将来性などからPER20倍強の時価は非常に魅力的と考えています。
 がっちりと見直しの時期を待つ銘柄としては、ストップ高をし始めてから言ってもなんにもなりませんが、沖縄セルラー(9436)はあまりにも割安でしたね。業績好調かつ成長性もあるのにPERは4倍、PBR1倍割れという超割安。今週に入っての急騰は当然で、まだまだ大幅に見直し余地があると思います。沖縄セルラーの落ち着きどころがどうなるかは、今回の割安株の水準訂正波動の規模を占う意味でも注目されます。
 まだ上がっていない銘柄としては、先週述べたニチメン日商(2768)が私にはもっとも魅力的に思えます。


第232回 投資したい企業はわずかか?<5/7>

 今朝の日経にがっかりする記事が出ています。米国のバフェット氏が日本株に消極姿勢を鮮明にし「日本株は投資収益率があまりに低い。投資したい企業はわずかだ」と語ったと報じられています。バフェット氏の堅実な投資手法と長年にわたる驚異的な運用実績を考えれば、非常にショックな発言といわざるをえません。
 ただし、彼は米国株での運用では神様のような人ですが、日本株にはそれほど詳しい知識があるとは思えません。それに、理由として引用されている「投資収益率があまりにも低い」というのは、一見意味がありそうで、それだけでは無意味無内容です。
 一方、リップルウッド社が今度は旭テックを実質的に買収することが報じられています。実に精力的な日本企業買収です。村上ファンドが昭栄をはじめ割安感がはっきりした銘柄の買収に取り組み、なかなか成功しないのと逆に、リップウッドが次々と自分のものにしていく会社は、傍目からはなんでこんな会社をというふうに見えるのですが、きっとそれなりの確固とした調査と投資採算に基づくものなのでしょう。

 今日の日経平均の前場終値は19円高の8103円。昨年秋以来、いく度となく25日移動平均線を超えて数日で無残に反落しており、だれもがおっかなびっくりの局面です。
 反落のリスクにおっかなびっくりは仕方がないにしても、悲劇的なことは、たとえ日経平均が一段高になったとしても、たいした上値はないとだれもが思っていることです。
 しかし、いま日本の株を買うことは、それほどまでに労(リスク)多くして実り(リターン)が少ないものなのでしょうか?
 新聞によれば、バフェット氏が「投資収益率があまりに低い」と言ったそうですが、将来の投資収益(リターン)はあくまで未知のはずです。コカコーラのように、売上高はそれほど増えなくても、利益を、そして株式時価総額をぐんぐん増やす企業は、これからの日本でも数多く出るはずです。私にはそう感じられてなりません。

 割安株として、このところもっとも注目しているのは、ニチメン日商(2768)です。
 注目理由の第一は、来週エクイティファイナンスの払い込みが終われば、信用面での不安が一掃されると考えるからです。第二に、時価245円は、旧ニチメンで38円、旧日商岩井で27円に相当しますが、両社の収益力から見れば、ありえないような安値水準と考えられるからです。
 不良債権の償却がなければ、銀行の収益がきわめて安定しているように、あるいはそれ以上に、総合商社の収益基盤は安定しています。新会社は3年以内に経常利益1000億円を目標に掲げていますが、旧2社を単純合算しても500億円の経常利益がかなり普通に期待できる収益基盤がありました。そこにきて、今年は赤字覚悟でリストラを徹底するのですから、あながち過大な目標ではないのかもしれません。
 来期以降の経常利益水準を堅めに500億円と見込み、税引利益を半分と見込んでも、1株利益は130円台です。もし会社目標達成なら、1株利益は270円で時価はPER1倍未満です。

 問題は、多額のエクイティファイナンスの影響ですが、まず2700億円のうちの大部分を占める銀行や農中が引き受ける優先株は、比較的低利でかつ普通株の転換は早くても10年以上先のことになると考えられ、現状では希薄化を考慮する必要はないはずです。次に、オリックスやファーストリテイリングなどを引き受け先とする普通株による第三者割り当て(225円)は、現発行株数の約2割に相当し、上記の1株利益の計算にはすでに含んでいます。将来的には売却する法人も出てくるでしょうが、当面は安定株主になると見られます。最後に、リーマン宛の優先株とCB(計50億円)の影響ですが、近い将来に普通株転換の怖れがあるものの、リーマンは新会社のパートナーとして、企業再生をコーディネイトする立場にあるのですから、間違っても三井住友のような「株価操作」的な動きにはつながらないはずです。

 これから発表される決算でかなり判明するはずですが、日商岩井はやはり実質的には債務超過だったようです。そのままでは破綻必至だったとはいえ、2700億円の自己資本増強でほぼ安全になったことは確かにいえると思います。
 ニチメンはもちろんのこと、日商岩井も、つぶれる恐れさえなければ100円以上してもよい会社だったのですから、新会社は1000円以上になってもおかしくないと私は考えています。


第231回 二極化の逆転の中で<4/22>

 昨日は、低位株を中心に208銘柄が年初来高値を更新しました。ソニーをはじめとするハイテク主力株や銀行をはじめとする国内関連主力株が、買い手不在で新安値ぎりぎりに売られるなかでの出来事ですから、ちょっとした驚きです。
 今日は、さすがに反落している銘柄がほとんどで、気の早い人は「低位株も終わった。買うものが何もなくなったから、全面安になっているのさ」と解説しています。昨日の上げをボロ株の乱舞と見れば、確かに石炭株の上げっぷりのよさなどから末期症状的な気もしてきます。しかし、2月から3月にかけて先駆的に上げたクラリオンなどのその後の落ち着いた調整ぶりを見れば、そんなに簡単に終わる現象じゃないような気もしてきます。
 午後に入り相場は水浸しなので、主力株のことはさておき、「低位株」の今後について考えてみたいと思います。

 このところ活躍している銘柄群は、一般的には「低位株」という言葉で把握できますが、低位株でも大型銘柄が買われているわけではないので、比較的値の低い「中小型株」が買われているというとらえ方もできます。私は、本質的には「機関投資家が好む一流銘柄ではないばかりに馬鹿にされ、長年にわたり株価低落が続き、時価総額が極端に小さくなっていた銘柄群」という表現が当たっているのではないかと思います。
 すなわち、昨日の動きだけでなく、大きな流れで見れば、低位の「ボロ株」だけが買われているわけではなく、配当利回りの高い銘柄、バリュー面で割安な銘柄、成長商品を持った銘柄、経営の大改善が期待できる銘柄が、新興市場や第二部も含め、様々な切り口で広範囲に買われていると考えるのです。これらの銘柄は、主力が動けないから消去法的に買われているにすぎないという意見が多いのですが、いやいやどうして、まったく独自の価値判断で様々な投資家に選好されているのではないでしょうか。
 そう考えなければ、説明できない現象があちこちで起こっています。例えば、昨年末以来、超品薄の好内容株がジリ高のなっている例は枚挙に暇がありません。比較的流動性の高く値の高い銘柄でも、第一部・化学のアイカ工(4206)が昨年秋以来、非常に地味ながら驚くほどの粘り強さで買われ、900円台に乗せているのは、現在の市場の物色意欲の多様性と息の長さを示す好例と考えます。
 
 最近の相場の動きを、低位のボロ株の相場と考えることからは、ゼロサム的な発想しか生じません。仕手株人気の中心であるルックは、実はそれほどボロ株ではなく、噂される仕掛け人の過去の失敗銘柄の中ではもっとも良好な内容ですが、株価が1000円台に上昇したことの社会的な意味は、単に世の中にはホットマネーがまだ健在であることを示すに過ぎません。兼松日産が不幸なことに、二極化前夜の、個人投資家の低位株物色の最後の盛り上がりの象徴であったのに対し、今回は個人マネー復活の新しく大きな流れの中での打ち上げ花火の一つになってくれたらよいなと願います。
 二極化は、96年春のボロ株物色の最後のお祭りに対する大鉄槌でした。そして、今回の逆二極化は、機関投資家の一流株志向に安易な姿勢がなかったのかどうか、付和雷同という点で、彼らに個人投資家を馬鹿にする資格があるのかどうかを強烈に問いかけているものと考えられます。

 書きかけになっているうちに、今日の相場が終わりました。ソニーと日経平均はかろうじて安値更新をまぬがれましたが、みずほは64100円とまたしても新安値です。
 みずほは4月初旬に急落、その後ほぼ横ばっていましたが、今日の下げは普通に見れば、また新たなる下落局面です。とはいえ、長い間不振をかこち、持っていることを人から馬鹿にされた銘柄群にいま春がきたように、倒産しない限り、そして投資価値がある限り、やや長い目で見れば、流れの逆転は必ず起こるはずです。みずほに限らず主力銘柄については、そのことだけは忘れず、当面は達観してやっていくしかないと考えています。
 低位株の変種、ニチメン日商(2768)は、昨日36円高して今日は15円安の264円。私は優先株発行が予想されている5月に期待しています。


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