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第30回 大型株についての私見<8/30>

 今週は、日経平均が1万7千円を回復したので、市場のマインドが変わってくると期待していたのですが、月曜日こそ半導体関連に熱気がムンムンという形になったものの、その他の銘柄は月曜からむしろ売られ、昨日は半導体関連さえ見送り気分になり、今日はとうとう全面安で1万7千円を再び割れてしまいました。
 もっとも、前にも申し上げた通り、日経平均はある程度の水準さえ維持していてくれれば、個別株の選別投資で生きていこうとしているものにとっては、その上げ下げはどうでもいいことなのですが、それにしても今日みたいに、富士通の220円安など重量級の銘柄が大幅安すると、本当に日本経済は大丈夫なのだろうかと不安になり、お客様ともども投資意欲が鈍ってしまいます。
 
 私は本来、重量級の銘柄は好きではありません。大幅安した今日の値段で見ても、魅力を感じるのは川崎製鉄の133円くらいで、それさえも合同製鉄ほどの魅力は到底感じられません。
 
 その理由の一つは、中勢的に見て、これからの業績相場では中小型株のパフォーマンスのほうがよくなるはずだという考えに基づくものですが、それより何より、日本の大型株の株価水準に対する根本的な不信感が私にはあるのです。
 
 私見では、87年のNTTの上場の頃から、日本の大型株の水準はおかしくなったと考えます。まず上場前に、某大証券が東電をNTTもどきの株として買いあおり、もっとも大衆的で安心できる配当利回り銘柄を日本の株式市場からなくしてしまいました。そして、問題のNTTですが、119万円台の売出価格も驚くべきものでしたが、それ以上に日本人の感覚を麻痺させたのは上場後の318万円までのバカ騒ぎです。これらの責任がだれにあるのかはわかりませんが、その直前に実施された英国電電(BT)の売り出しが、国民に安心して買って持ち続けてもらえるように、きわめて安い水準に意図的に抑えられたのとは大きな違いでした。
 
 その後、株価のバブルは鉄鋼株まで波及し、1000円以下の株はほとんどないという異常な株価形成となり、日本人の株価に対する感覚は完全に麻痺したのです。バブル崩壊後も、銀行株を筆頭に日本の大型株は激烈に下げたようで、案外未練たらしく高値覚えと持ち合い構造の相場を続けたと私は考えます。
 
 90年代の半ばまで、内需関連型の大型株が馴れ合いの株価形成で異常に割高であった反面、ハイテクを中心に優良株系の銘柄は、逆に国際的に見ても割安だったのではないかと思われます。そして、そのギャップが90年代後半の激烈な二極化の原動力になったはずですが、その修正が行われてなお、日本人には大型株に対する必要以上の期待がありすぎると思えてなりません。
 
 典型がJR株が配当利回りではとても買いたくない水準に安住していることです。合理的なはずの機関投資家にも、NTT以来の日本市場特有のトラウマが依然働き続けているとしか私には思えません。
 
 私は今日の相場が下がった理由はいろいろあるにしても、その一つの本質的な理由として、日本の大型株に魅力がない、にもかかわらずNTTの売り出しがまた行われるという現状があると考えます。
 
追記
 カテナが1200円突破となり期待しています。
 オリコは「週刊ダイヤモンド」に「危ない会社」として叩かれました。一面だけを強調した恣意的な文章と思いますが、投資家のマインドに与える影響は無視できず、静観するしかないと考えています。
 合同製鉄は113円と再び魅力的な値段となりましたが、川鉄が133円まで売られるほど鉄鋼セクターに対するマインドが低下している現状では、これも静観するしかないと考えています。
 したがって、私が現在買い推奨している銘柄は、ど真ん中で東京エレクの1万5千円割れと日興証券の千円近く、大化け狙いでカテナ、やや思惑で日本ビジコン(9889)やアイコム(6820大2)の他、堅いところでユシロ化学(5013)とホソカワミクロン(6277)のCBです。

第29回 素直に強気転換<8/26>

 先週末の上昇は本当に嬉しいものでした。私も久々に買い中心に手数料を稼がせてもらい、8月の収入も覚悟していたよりはちょっとだけ上積みできそうです。しかし、それより何より、東京市場を覆っていたわけのわからない弱気が少しずつ去り始めているのが嬉しいことです。
 
 私は万年強気のタイプではありません。見送り推奨のときもあれば、カラ売り推奨のときだってありました。しかし、現在は強気が自然だと思います。いろいろな懸念材料はもちろんあっても、個々の株価とのにらみでいえば、投資する魅力はかつてないほど高まっています。かつてないと書きましたが、比較するとすれば、昨年の1月頃と95年の夏くらいかと思います。しかし、その頃は株価水準は今より低くても、実態の見通しの悪さと金融システムの動揺への不安は今の比ではありません。
 
 企業の業績は上向きで、かつほどほどに懸念材料のある今のような時期こそ、私はもっとも個別銘柄の投資に適していると思います。したがって、週明けは東京エレクなど半導体関連を中心に、相場に対して素直な順張り方針をとりたいと考えています。
 
 さて、カテナ株についてですが、この相場全体が風雲急を告げそうで忙しいときに、全体相場の動向と関係の少ないはずのカテナ株も、非常に微妙な段階にさしかかったことは困ったことです。
 私はかねてから、全体相場をさておいても注目したいほどの魅力を感じているからです。
 
 株式の魅力はなんといっても成長性です。セブンイレブンは10数年にわたって、どんな高値を買っても大もうけになり、株式投資がギャンブルでなく、ゼロサムゲームでもないことを証明しています。ヤフーももしかするとそうなるかもしれません。そしてもし、カテナがLyeeの事業化に成功すれば、21世紀最初のドリームストックになる可能性があると私は考えます。
 
 問題は、Lyeeというソフト開発理論が簡単に理解できる代物ではないということです。世界的な学者でさえ最初は何もわからなかったそうです。だから、私は理解しようとは思っておりません。ただ、Lyeeがどのように認知されていくのか、収益化につながっていくのか、その客観的な推移だけを注視しようと思っております。
 
 その意味で、今回の株価急騰がどのような経過をたどるのかは一つの試金石だと考えます。株価は間違うことも多々ある反面、将来を照らす鏡であることもそれ以上に多いからです。ましてや、Lyeeの普及のために、株価上昇はそれ自体が大きなプラス作用をもたらし、相乗効果を期待できるからです。
 
 今後の株価について、私は予想できませんが、ただ感覚的には、前回も申し上げた通り、再び1200円台をつければ、第二段の本格上昇の可能性が高まるということだけはいえるはずです。
 
 なお、念のため書きますと、カテナの収益上昇の可能性について、私は「適当なこと」を言っているわけではありません。会社側の公的な発表であるLyeeの事業計画書によれば、3年後に1株利益300円に相当する収益も可能と書いてあります。
 なおまた、カテナ株投資のリスクとしては、Lyeeの事業化がもし失敗の場合、カテナには約100億円の損失が発生する可能性があり、財務内容が悪化するということを覚悟しておかねばならないと考えます。
 
 カテナの当面の材料としては、主取引先のソーテックの上場ですが、私はそれよりむしろ8月末に予定される某生保向け401K対策ソフトの納入が順調に済み、Lyeeの実績が証明されることのほうが大材料であると考えます。


第28回 上がれば上がるほど<8/24>

 今日(24日)、日経平均は1万6700円台まで上昇し、待望の1万7000円台回復も見えてきました。
 外務員仲間では、なんだ日経平均が上がるわりに、個別はそれほど上がらないじゃないかと愚痴っている人が多いのですが、私は今は先物主導であろうとなんだろうと、今は日経平均が上がること自体に意味があると考えます。
 
 思えば、7月のそごう破綻あたりから、市場には濃霧がたちこめました。私はそれは「共同幻想」だったと思います。半年前にカンカンに強気だった人に限って、もう日本の株はだめだと弱気になりました。その理由を聞いてみると、それぞれのニュアンスは多少違っても、要はゼネコン問題が解決しない限り株は買えないということに尽きます。しかも、ゼネコン問題を急速に解決しようとすると、金融不安が発生し、株が下がる。逆に、時間をかけて解決しようとすると、解決するのは遠い将来だから、やはり当分株は下がる。つまり、どう転んでも株はだめだという超悲観が根底にあるのです。
 
 その「共同幻想」としての悲観は、半年前のネットバブルの超楽観と本質的には同じ根を持っていると思います。したがって、それを解消するには、株価の明確な反転を待つしかありません。おそらく、日経平均が1万7千円の大台を固めたとき、市場に通常のマインドが戻ってくるものと考えます。今は、日経平均が上がれば上がるほど、買い安心感が強まる時期なのです。
 
 私は今日も株手数料はマルでしたが、そろそろ買いを増やそうと考えています。
 セクターとして買うなら、やはり半導体関連だと思います。今度来る上昇相場は、業績相場の色彩が強まるはずですが、柱になるのは半導体をおいて考えられません。
 そこで、一日中、東京エレクと京セラの値段をにらめっこしていたのですが、今ひとつ踏み切れないまま、両銘柄ともほぼ高値で終わってしまいました。
 バリュー重視の堅実投資としては、半導体関連の延長で、前にも書きましたホソカワミクロン(6277)のCBと2部株のユシロ化学(5013)561円を勧めようと思っています。
 
 ユシロ化学は、連結1株純資産1200円台、今期予想1株利益62円の超バリュー株です。昨年12月に390円まで売られたのは、ネット狂想曲が鳴りまくる中でのミスプライスであり、半導体業界超繁忙の恩恵をこの会社も受けるはずなので、業績相場の中で見直されていくものと考えます。
 
 ところで、前回書いたカテナ(9815)ですが、今日も大幅続伸し高値1208円まであったものの、終わりは5円安の1080円と反落しました。私は985円のストップ高までは買いにいきましたが、1000株も買えず、その後は売りも買いもしていません。持っているお客は、私の日頃からの大化け説に同調されており、あまり売ろうとはおっしゃらないのです。(合同製鉄は、その点昨年の失敗に懲りて売ろう売ろうという人が多いのですが、こちらの方は今は売らないほうがよいとはっきり返事しています。)
 
 カテナは4日連続ストップ高した後ですから、目先の株価動向についてコメントする気は私にはまったくありません。ただし、この銘柄への投資の初心は、数10%のリターン狙いではなく、会社の大変身期待ですから、初心を貫けば、現状くらいの株価水準で、売るべきかどうか迷う必要はないと考えます。
 
 おそらく、今日の1208円が高値にはならないと思いますので、再び1200円突破の勢いを見せれば、買いを検討したいと考えています。カテナ株も、日経平均と同じく今は、上がれば上がるほど買い安心感が強まると私は思います。


第27回 妥当株価(2)<8/19>

 金曜日、2部のカテナ(9815)が500万株の買い物を集めて、ストップ高カイ気配のまま終わりました。
 この株の妥当値はいったいいくらなのか、非常に難しい問題です。もっとも、普通の銘柄の場合でも、未来のことはだれにも分からないのですから、妥当値を決めてかかるわけにはいきませんが、次々と公開してくるネットベンチャーよりよほど具体的な夢があり、かつリスクもあるのがカテナだと思います。
 
 カテナのLyeeがもしうまく企業化できた場合、花札を作っていた任天堂が大変身したように、カテナはパソコンの販売会社から世界的なソフト開発会社に成長することが考えられます。その場合、現在1万円以上している日立ソフトやNECソフトを、収益力・成長性・株価でしのぐことになるでしょう。
 だが、もし企業化に失敗した場合、これまでにつぎこんだ開発費がすべて損金になり、財務的にも危うくなることが考えられます。幸いにして、現在は本業がきわめて好調ですから、会社存続には問題がないと思いますが、株価的には相当なダメージが考えられます。
 
 実は、私はこの株を半年前の高値圏で、随分とお客に勧めてしまったのです。昨年高値が1660円ですから1000円位は安いという安易な気持ちがありました。が、それ以上に、もしかするとトテツもない高い値段になるのではないかという期待に気持ちを高揚させすぎたのでした。
 今でも残念なのは、カテナを高値づかみしたことではなく、それを買うために、当時安心買いできるバリュー株としてコツコツ集めていた同和鉱を半分くらい手離してしまったことです。そのころ同和鉱は160円台でいくらでも買えました。50%高から2倍を狙ってお客に勧めて買ってもらったばかりのところ、カテナに思いつめるあまりに乗り換えてしまったのです。
 すると、結果は絵に描いたような皮肉な展開で、乗り換えて数日後に、同和鉱は急騰に転じ、カテナは下落に転じました。同和鉱は短期間に2倍以上になりましたので、もしそれからカテナを買えば、3倍の株数が楽々買えたはずです。
 
 その悔しさは別にして、カテナについての判断は当時と今とほとんど変わりません。
 すなわち、妥当株価については次のように考えます。
 カテナの場合は、Lyeeが成功するか失敗するかによって評価の落差が大きすぎるので、成功の場合の想定株価と失敗の場合の想定株価の確率による加重平均が投資の目安になるはずです。
 半年前には、大まかに成功の場合3年後株価1万円、失敗の場合ゼロと考え、その確率を50%ずつとすると3年後の期待株価は5000円となりますので、それを年率20%で割引き、2890円を現時点での妥当株価と考えたのです。
 今回の特許成立により、成功確率は60−70%くらいに上昇しているのではないでしょうか。ただし、成功の場合の想定株価は、当時より割り引く必要があります。細かくはまだ考えておりませんが、諸条件から妥当株価はやはり3000円くらいと考えてよいと私は思っています。


第26回 妥当株価<8/16>

 今日(水曜)TOPIXでjは安かったものの、日経平均では4日連騰となり、ほっとしています。日に日に相場の底入れ感が強まってきたと考えます。
 ほんの少しずつですが、顧客に買いを勧め始めました。昨日、今日は860円台の大真空と440円台のオリコを勧めました。
 大真空は高値目前ですから、もみ合いになり、キンセキほど気持ちよく上がらないのはやむをえないとして、オリコには野村からさみだれ的な売りが出て、買っても上がらないのでちょっとがっかりしました。
 ただし、大幅高を期待して買っているわけですから、目先の値動きで投資成果が決まるものではないということは、つねに肝に銘じています。
 
 前回の追記でちょっと触れましたが、日本の株式市場で今必要なことは「妥当株価」についての様々な議論の積み重ねだと思います。
 日本の市場参加者は、あまりにもそのことを軽視、もしくは偏見を持ちすぎていると私は考えます。ちょっとベテランの証券マンなら、大体こんなことを言います。
 「株は理屈じゃないよ。計算式なんかあるわけないじゃない」
 
 でも、ちょっと悲しいと思いませんか? ほんの数ヶ月前までは、IT関連株は100年に1度の大相場だとかなんとか言って、超強気だったにもかかわらず、急落したとなると、弱気に転向するのはやむをえないにしても、お客に下値めどを聞かれたとき、はっきりとした答えをいえずにうつむく証券マンがどんなに多いことか。
 人気があるから買う。人気がなくなったら投げる。そして、投げそこなった株はなぜ持っているか理由がはっきりしないまま顧客に持たせ続ける。こんなことを退職までに何回繰り返そうというのですか。
 私が知る限り、株よりもまだパチンコのほうがもうかると思っている証券マンは数多いですね。
 
 今日の日経金融新聞に、今になってソニーの3万円は、あまりにも妥当株価からかけ離れていたのではないかという議論がされ始めていることが紹介されています。
 ある銘柄の妥当株価がいくらかということは、それこそ議論百出するのが当然で、たとえばソニーが1万円以下だったらよいのかどうか一概には言えない問題ですが、現在もなお多くの日本人が株価の妥当水準に対してなんら自分の意見を持たずに、フワフワと株の売買に携わっていることはまぎれもない事実だと思います。
 
 ところで「オール投資」をぱらぱらと読んでいたら、なんと「理論的な妥当価格」の一覧表というのが載っており、オリコのところを見たら、これまたなんと2700円位の数字が書いてあり、びっくりしました。
 どういう計算式に基づく「理論的な妥当価格」か分かりませんが、オリコびいきの私から見ても、非現実的な数値だと思います。
 その理由は、オリコの業態は非常に安定しているため、妥当株価のゾーンは相当に絞り込めます。
 例えば、会社を丸ごと買うとして、2700円なら、9000億円の時価総額ですが、オリコはバブル処理のため自己資本を大幅にすり減らしたため、その投資価値は5兆数千億円の貸し付け残高(とそれに見合う借り入れ残高)でほぼ説明されます。
 銀行より高収益が保証されている貸付残高ですが、いくらなんでも10%以上のプレミアムをつけてまで、ぜひほしい資産ではないはずです。
 私は1000円(時価総額3300億円)位が妥当株価だと考えていますが、今現在は非常に弱気な市場がそこまで買い上げてくれるのは、オリコの中期計画の順調な達成が見え始めてからのことでしょう。
 
 今期業績が急伸する見込みの半導体関連や国内市況関連については、単にPERが割安だからということではなく、中期的な業績動向を踏まえたうえで、妥当株価がどのへんにあるかもっともっと議論されてしかるべきでしょう。


第25回 天命を待つ心境<8/12>

 週末の2日間、マルが続きました。ゼロ金利解除は、私は大変な好材料と受け止め、日銀の決断に拍手しているのですが、模様眺めを優先しました。
 
 いまだに1万5千円割れがないと・・・・というような弱気が主導的な市場で、私はそれに反対であっても自分の信念に殉ずるつもりはありません。もうけることはいつでもできる、今大切なのは、顧客と長い取引を続けられるためには、どうしたらよいかだけです。
 もし彼らが言う通り、1万5千円を割れたら、そこはチャート上絶好の買い場のように思えても、顧客によっては信用での持ち株を減らしにかかるかもしれません。それとも紀伊国屋文左衛門のような覚悟で、一世一代のバクチを張るかもしれません。いずれにしても、それはチャートがよいの悪いのではなく、万一不測の事態まで悪化した場合に、投下している資金をあきらめられるかどうかの顧客との話し合いでしょう。
 
 では逆に、今後日経平均がじり高に転じたらどうするか。多分、私は買うでしょう。それは単に、信用の保証金率がアップして買いやすくなるからということでなく、折角のチャンスを逸することを恐れるからです。ただし、銘柄については、厳選したいと思います。2年前10月の日経平均最安値時には、多くの銘柄は11月に反発しました。しかし、長い目で見れば、そこで買わなくとも、翌年の1月にいくらでも買えたのです。そして、そこでしか安値では買えなかった銘柄が、今年にかけて大きな相場に発展しました。
 
 先週、NTTドコモを買いたいという相談がありました。私は、その手の株、すなわち今年初めに夢やムードを買って高値をつけたバブル銘柄は、目先上がるかもしれないが、長い目では今後いくらでも買い場があるのではと答えました。おそらく、今後大きな値上がりを狙えるのは、夢よもう一度のリバウンド銘柄ではなく、もっと現実の企業内容に即した比較的フレッシュな銘柄群のはずです。
 
 結局、先週やったことは、顧客に暑中見舞いかたがたの手紙を書いて、主な持ち株について私の意見を書いたレポートを同封しただけでした。
 
 キンセキ(先週6944と記しましたが、6949が正しい)や大真空(6962大阪)の安いところを買えなかったのは残念ですが、今週前半も地合いがよほど好転しない限り多分何もできないでしょう。(収入の激減予想についてはあらかじめ家内に申し渡してあります)
 
 追記
 私とおぼしき人間が、ヤフーの合同製鉄の株価掲示板で批判されているということを、お客様から教えていただきました。
 早速見てみると、「・・・・という人が、適当な事、言ってます。気をつけて下さい。この株は、製鉄会社です。」と書き込んでありました。
 文が短いので真意はわかりませんが、「適当な」といのは、いい加減で合理的でない、あるいは現実性のないという意味でしょう。「気をつけて下さい」というのは、私も大賛成です。株価の先行きはつねに?であり、気を許してはなりません。ただし、「製鉄会社です」というのは、意味不明です。
 もしかして、製鉄会社だから絶対に上がらないという意味でしたら、その思い込みはネットバブルの中で、ネット関連らしきものを買い込むことと同様、危険な発想だと思います。
 「アナリストジャーナル」の最新号の座談会で、日本の株式市場は、たとえばIT関連とそれ以外というふうに、枠をはめ込み、個別の企業内容を無視して十杷ひとからげに動く、非常に薄っぺらな傾向があり、反省されるべきだという指摘があり、私は共感しました。
 日本の株式市場にぜひ必要なことは、1つ1つの銘柄について、その投資価値は本当のところどの位と考えるべきかということ(バリュエーション)についての、様々な議論の地道な積み上げでしょう。


第24回 買いたいけれど(2)<8/9>

 今日(9日)、日経平均は再び1万6千円台にかつかつ乗せて終わりました。上がった銘柄は偏っていても、無理して上げている感じではなく、どうやら弱気一方に傾いていた市場に自然な反作用が働き始めたという感じに受け止められます。希望的な観測は言いたくないのですが、相場が底に届いた可能性がある程度の確率で出てきたと考えるべきだと思います。
 
 私はといえば、この1週間はほとんど何もせず過ごしました。我々の用語では「今日もマル(商いゼロ)」という状態で、正社員なら上役から叱咤の言葉が出てくるところですが、幸いにして我々の場合は、自分の収入減さえ覚悟すれば、よほど長期にわたらない限り、それぞれの自由があります。もちろん、一定期間で、一定の手数料を挙げられなければ、即契約解除になってしまいますが、長い目で営業を進めていくうえでは正社員よりはるかに伸び伸びとした気持ちを持てます。
 
 強気なのになぜ積極的に買いを勧めないかについては前回述べました。つまるところ、自分を深く信頼してくれているお客は買うのならいつでも買ってくれるはずですから、ここではじっと休んで「時」を待ちたく、一方、信頼が十分でないお客にはぜひ買ってもらいたいのですが、私が勧めても今は特に買ってくれないという事情があり、したがって何もできないのです。
 
 何もできないでいる間に、私の注目株の1つの大真空(6962)が大変な増額修正を発表しました。5月末に発表した今期予想利益を1株あたり27円から50円に上方修正したのです。734円まで下がっていましたので、相場が順調の時ならストップ高2回すると見て、初日の昨日は成り行き買いのはずですが、それでも私はじっとしていました。すると、昨日一度はストップ高したものの、その後だれて、今日は801円の6円安です。日経の市況解説欄に、「連結PER29倍で」割安感から買われたと書いてありましたが、これは上方修正したので「16倍」の間違いです。日経でさえこの程度の認識ですから、大阪単独上場の悲哀を感じました。
 
 全体相場が今日の地合いを明日も引き継ぐなら、久々に明日はこの大真空とキンセキ(6944)1180円に強気してみたいと思います。それから、今週に入ってちょっとだけ買って、今日320円高の2500円と底入れ感を出した日本ビジネスコンピュータ(9889)も取り組み始めたいと思います。
 
 ビジコンは2部ですが、ソフトバンクと並び今回の戻りの中心になっている連続ストップ高のCTCと同じソリューション関連であり、今期の予想利益は特殊要因で40円になっているものの、実質的には80円台の1株利益水準であり、修正PERは30倍と成長性を考えれば長期投資にも耐えると考えます。
 
 最後に、合同製鉄とオリコは割安を確信できるので、お客の事情さえ許せば少しでも増やしていきたいと考えております。
 
 
 以上、依然半身の構えながら、やや強気には傾けていきたいというのが目下の心境です。


第23回 買いたいけれど<8/1>

 今日(火曜)、日経平均で1万6千円台を回復し、ほっとしています。ふだん私は森ではなく木を見るタイプなので、日経平均の上げ下げはそれほど気にならないのですが、やはり日経平均の1万5千円台は非常時の一歩手前です。いくら買うには安い方がよいといっても、非常時突入を覚悟して買いまくるほど、私の顧客の資金は無尽蔵ではありません。
 
 昨日今日は、おおむね既定方針通りに動きました。主力3人は、唯一余裕がある顧客も含めて静観、その他の顧客では若干ながら買っていただきました。特にキンセキが昨日の朝、いきなりに1120円で寄り付いて、指値より随分安く買えたのにはびっくりしました。その後、すぐに1090円に下がったのにもびっくりしました。さらには、その後急反発し、今朝には一時1420円まで猛烈高したのにもびっくりしました。
 
 これだけ戻ると、もっと買っておけばよかったと残念な気もします。現に、上記の余裕のある顧客とは突っ込み買いを先週末の時点で申し合わせてあっただけに、今日はしきりに残念がっていました。
 
 しかし、私は根本的には、もっと長い目で考えることが必要だと思っています。もし、日本株の底が今なのならば、今度来る上昇相場は業績相場として相当に息の長いものになり、買いチャンスは昨日今日に限らないはずです。また、もし今日の反発が一時的なものならば、一回や二回の突っ込み買いの利益を積み上げてもたいした足しにならないほどの損失の危険が今後に控えていることになります。
 
 私はもちろん日本株は今が底だと思っています。しかし、それはどんなに可能性が高くても、あくまでも可能性であって、反対の場合を考えておかなければなりません。どんな場合にも耐えられるということを最優先課題とせざるをえません。
 
 だから、今は、お客によっては絶好の買い場、お客によってはじっと我慢の場と考えています。
 
 合同製鉄が130円台に上昇してきたことは嬉しいことです。本来なら、信用取引で割り切った買いをどんどん入れたいところですが、信用のポジションを悪化させたくないので、ぐっとこらえています。
 オリコももっともっと買いたいのですが、基本的に現物でちょっとずつ買っているだけです。
 東京エレクも京セラも買いたいのですが、今のところ見てるだけです。
 多分、いざとなれば、店頭株まで枠を広げれば、ゆっくりと買える株はいくらでもあるはずです。


第22回 相場観より現実的な対処を優先<7/31>

 先週の下げにより、私の頼みとするお客のポジションも相当に悪化しました。ここ(第10回 勝負しちゃいました。6/19付)にも書きましたが、前回の下げの際、強気スタンスをとったため、信用建玉は相当に増加しました。そのとき日興証券の990円台を買ったお客はいったんは大変な評価益となりましたが、売らなかったため、木曜日終値で追証が発生しました。もっとも信頼していただいているお客も、東京エレクやロームなどハイテク値嵩の評価損がきつく、買い余力がほとんどなくなりました。もう一人の頼みのお客は、全体としては慎重な運用に徹しているため、買い余力は十分にありますが、ソフトバンクやキンセキの評価損は思いもかけないほど膨らみました。
 
 このような状態になった以上、まず必要なのは、相場観ではなく、相場のブレに対する対処方法の確認だと思います。住宅ローンの返済が苦しくなったとき、給料が上がるんじゃないか、金利が下がるんじゃないか、家が高く売れるんじゃないか、など楽観的な予想をしても仕方がありません。思いきり、事態を悲観的に想定し、そのときどうするかを冷静に考えて見る必要があります。
 
 幸いにして、日興証券のお客は建玉の一部を新規資金によって現引する余裕があります。これによりあと一段の下げに対応することができます。東京エレクのお客も追証にはまだ余裕があります。おおざっぱに、日経平均1万5千円のレベルまでは対応可能ですから、とりあえずは目先は下ブレ期にあると見て事態を静観し、1万5千円割れが現実化したときに、投げを開始するか、徹底的に頑張るかその時点で決定するにしました。
 
 もう一人のお客は、まったく問題がありません。評価損の元凶であるソフトバンクとキンセキは、今年前半の益金の半分を積み立てている中国ファンドを換金すれば現引できます。このお客の場合は、投げるか頑張るかではなく、上げ始めたらいつ買うかを相談すればよいことです。
 
 その他のお客は、現物中心ですから、先週後半の時点で、すでに強気方針をとっており、合同製鉄は127円まで、オリコは460円台まで買いました。
 
 相場観は2の次になりましたが、実戦的にはやむをえないことだと思います。私の相場観自体は基本的に変更しておりません。ご興味のある方は「今週の株式投資案」をご参照ください。 


第21回 決意表明はしたけれど・・・・ <7/26>

 週明けの弱さにはびっくりしました。まさか(株にまさかは禁物ですが)日経平均で週明け当日に1万6300円台を試すことになろうとは思ってもいませんでした。
 
 結論的に言いますと、戦術的後退を余儀なくされた次第です。私の場合、6月から頼みとする顧客のポジションを強気一方に傾けており、いちかばちかではなく尋常に勝負するとすれば、あと1回のチャンスしかないと自覚しております。先週末の米国株安から当然軟調は予想していたのですが、もう少し余裕のあるところで下げ止まり商状になると予想し、そこを買い場と考え、戦闘態勢をとるべく決意をあらたにしていたのです。
 
 ところが、月曜朝いきなりに大幅な売り物です。売り物自体が多いというより、買いが極端に引っ込んだというのが正しいのでしょうが、いずれにしても私にとっての敵軍は、思いがけず強力でした。売り気配に立ち向かうのは余裕があるときに限るべきで、バンザイ突撃みたいなことは絶対にやるべきではないと思います。
 
 したがって、情けなくはありますが、決意表明にもかかわらず、月曜と火曜の両日、売りこそしませんでしたが、ほとんど買わず、手をこまねいておりました。
 
 たとえば、先週末の505円でも超割安と見ていたオリコは、月曜朝にいったんは460円台での買い方針を顧客と相談のうえ決定していたのですが、あれよという間にその水準に近づいてきたので、誠にお恥ずかしい話ですが、430円台の指値注文まで後退してしまったのです。今日(火曜)の経過を見ると、初志貫徹すべきだったかもしれません。キンセキにいたっては先週の値段から今日の最安値では145円も下がり、ぜひとも買うべきだったのでしょうが、これも手が出ませんでした。
 結局買ったのは、合同製鉄の110円割れを少しばかりと、三菱伸銅の325円を同じく少し、それにホソカワミクロンのCBの109円はリスクが限定されているのでやや多めに、などに過ぎません。
 
 期待としては、日経平均の1万6300円台が二日とも安値になったこと、月曜に追い証がかなり発生しており、三日目の明日水曜にはその投げが一巡しそうなことなどがありますが、期待は所詮期待であり、苦しい時はむしろ思い切り悲観的に考えることも必要だと思います。
 
 なぜ全員参加で弱気にならなければならないのか、ちょうど去年の暮れにソニーが連日ストップ高したときと同じく、日本市場の「全員参加型」構造に文句を言いたくなりますが、文句を言っても目先の足しにはならないので、今は日経平均がさらに一段安になった場合や、調整が長期化した場合の最悪事態に備えて、弾薬や兵糧の計算を優先すべきと考えます。
 
 もっとも、そんなことを言いながらも、相場地合いが変化し、買い方有利のムードが出てくると、最悪事態への備えのことなど忘れて、飛びつき買いしないと損だと思い始めるのが、我々証券マンのつねですが、限られた資産で、長生きしながら、少しでも大きくもうけたいという二律背反を背負っている以上、やむをえないドタバタ行動ではないかと自認します。 

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