真面目外務員の本音ロゴ

第170回 静かな回復続く<5/28>

 昨日、最近ハッピーリタイアした先輩外務員から引き継いだ、あるお客様宅での会話。
「今日も日経平均が1万2千円割れて終わったのは、弱いね。もし今週中に日経平均が1万2千円を突破できないようじゃ、もうだめだな」
「今日だけでいえば、がっかりかもしれませんが、それほどがっかりされる必要はないんじゃないですか。本当に弱いとは感じられませんよ」
「でも、こんな状態が続けばだれだって嫌気がさすだろう。ここまで買ってきた外人だって売りに回るんじゃないの」
「ええ、いろんな外人がいますから、そう思う外人だっているかもしれません。でも、外人全体でいえば、そう簡単に売りに回るような買い方はしていないようですよ。日本株の比率を上げようとする動きはまだ続くんじゃないですか」
「政府が無策だから、だめなんだ。外人だって、また日本株を見放すよ」
「田中さん(仮名)、そう、だめだ、だめだと言わないで、強気と弱気の中間で考えましょうよ。今回の外人買いは、政策に期待したものではありませんよ。高値をつけてから10年以上たっている日本の株に対する見直し買いなんじゃないですか」
「じゃ、なんで上がらないんだね。この分じゃ、6月だって相場らしい相場がないぜ」 
「田中さん、そんなふうにぼやいていたら、だめですよ。今はいい相場じゃないですか。ガンガン日経平均が上がるばかりがいい相場じゃないですよ」

 この顧客は4月に引き継いで、ずっと寄付と引値を電話で通しています。持株に変動があればお知らせしますよと言っているのですが、顧客のほうから「今、いくらしている?」と聞いてくることもしょっちゅうです。
 つまり、典型的に「相場好き」の顧客であり、我々にとっては上得意の顧客なのですが、最近はどうにもこうにもイライラがつのって仕方がないようなのです。
 それに対して、前任者だったら、うまく気持がなごむような会話ができたのでしょうが、私の場合、いちいち自分の意見を述べたくなるので、今のところまったく議論がかみ合っていません。
 もっとも、お宅を辞去するときに、「お聞き苦しいですか?」とぶつけたら、「いや、そんなことはないよ。どんどん言ってくれ」とまんざらでもなさそうなので、今後もめげずにやり合うつもりです。

 さて、悪い相場ではないといっても、昨日今日は対応が難しいですね。東京鉄鋼は今のところ高炉安にまき込まれてサッパリですし、昨日660円で買ったTOCが終わってみたら15円安、今日も25円安620円と薄商いで下げています。いくら目先を気にしないといっても、鳴り物入りで勧めた銘柄が24時間以内に6%も値下がりしては、気持がくじけてしまいます。

 TOC(8841)は、この間注目してきた小型好業績銘柄とは違うコンセプトで、新たに勧め始めました。あえていえば、3月の日立キャピタルと同じ発想です。金融秩序に安心感が戻ったとはいえ、銀行株や低位不動産株の実質純資産価値は、雲をつかむようなものです。その点、TOCの1株当たり前期純資産792円には相当な信頼性があります。その根拠は、まず前々期にいち早く減損処理をしていることです。第二に、子会社卸売りセンターに貸している五反田のビル用地6500坪の簿価は坪39万円程度であり、それだけでも再評価すれば減損処理による損失を相殺してあまりあるにもかかわらず、あえて損のほうだけを表面化させているという財務面で余裕ある姿勢がうかがえることです。
 収益は(ビル賃貸収入)は、よくも悪くも安定しており、毎年1株利益40円ペースで、配当も11円で安定しています。
 今後日本の株価水準に見直しの動きが強まれば、少なくとも純資産価値以上の800円台、場合によっては1000円位に評価されてもおかしくない内容だと考えます。

 TOCはやや例外で、その他では、目先思惑の証券株を除けば、相変わらず兼松エレク、TDCソフトなどのハイテク系割安株や前回述べた東京鉄鋼に注目しています。


第169回 粛々と1万2千円<5/23>

 今朝、日経平均はついに1万2千円の大台に乗せて始まりました。通常の相場なら、もし今日の相場が伸び悩んで、1万2千円台がザラ場の高値になったらイヤだなと心配になりそうですが、今の相場はそんなことはあまり問題ではないでしょう。
 目先のチャート形とか心理的なアヤとか、ふだんだったら問題になるようなこととは違う次元で、現在の相場が形成されていることを強く感じます。
 例えば、この間日本株を買い越している外人投資家の多くは、多分機械的に日本株の比率を上昇させつつあるのであって、1万2千円が高値になるかどうかで一喜一憂してはいないはずです。
 国内の買い方になっている投資家も、今回は過去と大きく変化しているのではないかと思われます。過去の反騰局面では、相場が反転するや、個人投資家の積極買いがまた別の買いを誘発する形で、陽性の上昇につながりました。今回は、そのような熱くなるタイプの投資家のお先棒をかついで、証券マンが目先の手数料に酔いしれわいわい騒いでいる相場展開にはなっていません。

 現在、日本株を買い越す論理は、様々ありましょうが、共通点は比較的にクールということに尽きましょう。中には、どうせダメな国だが、ダメだからこそ掘り出し物がゴロゴロ転がっているとハゲ鷹ファンドみたいに冷静に割り切っている投資家もいるだろうし、日本の回復に希望を持つ投資家も、かつてのように世界最強の日本経済の復活を夢見るような人はごく稀であり、仮にいるとしても、遠い先のことだと割り切っているでしょう。
 だから、今の相場には夢がないのか? それは違うと思います。
 私は過去のように、諸株にバンバンと見境いなく買いが入り、行くところまで行く相場に本当の夢があったとは思いません。
 バブル相場が典型ですが、夢みたいにいい思いをした人も多いものの、銀座での豪遊と同じで、後に残ったのは取り返しのつかないツケです。
 90年代のアメリカ株の上昇は、最後のネットバブルではツケを払うはめになったものの、基本的には経済の本格的な拡大を伴った真に夢のある相場でした。
 日本の今回の上昇が夢のある相場につながっていくかどうか、それは実体経済が決めることであり、株式市場が決めることではありません。

 私は、個人的には、日本経済の当面に大きな回復を望むのは無理にせよ、長期的には案外の回復を示す可能性もあると考え、今回の上昇が長期的には相当なスケールの上昇波動につながっているのではないかと夢見ています。

 合同製鉄が決算を発表し、100円台を回復したことは非常に嬉しいことです。復配予想ながら、原料高で利益高水準とは行かず、現在のシビアな相場では大幅に上値を追うのは難しいかもしれませんが、中期見通しに不安が少なく、基本的には「ホールド」としています。
 同業では、東京鉄鋼に注目しています。ネジテツコンは販売好調のため原料高をただちに価格転嫁し、高い利益率を保っています。予想1株利益32円に対し、時価210円台は下値不安が小さく、かつ会社発表の短信にある通り、子会社保有の自社株を消去した場合の1株利益は43円と驚くべき水準です。無配継続方針が難点ですが、とりあえず、昨年高値の270円台位はあってよいのではないかと考えます。

 この間の注目株では、アイコムが決算を発表し、減益予想なのでがっかりしました。下値は1500円台が堅いと見られ、売り急ぐつもりはありません。黒田電気の発表は予想通りですが、昨日の急落には肝冷やし、とりあえず利食いします。アライドテレシスは決算発表と関係なく、毎日薄商いで少しずつの高値更新となっています。目先動向はきわめて判断に苦しみ、売りたいという衝動にも駆られますが、基本的には頑張りどころとも考えています。ハイテク系では、今日は安いようですが、兼松エレクにもっとも強気の気分を維持しています。


第168回 粛々と回復の途上か<5/21>

 先週金曜日の朝、「1万2千円突破にリーチ」と書きましたが、リーチはリーチでも簡単にはツモれないリーチのようですね。
 この分では、仮に日経平均1万2千円のフシを抜いても、一気に諸株が高騰し、市場が様変わりの強気ムードに転換することもないのかもしれません。
 私は今のところ、ダウンサイドリスクにはほとんど備えていませんが、アップサイドの場合は、市場が様変わりの強気ムードに転換しようが、現状のような薄曇り状態のままであろうがどちらにも対応できるポジションを採っています。

 私見では、日経平均が国内要因で乱高下する時代は終わったのではないかと思います。
 90年代は、不良債権をめぐって平均株価が乱高下した時代でした。92年8月の日経平均1万4千円台からの急反発以来、平均株価は何度も下落しては急反発することを繰り返しました。
 90年代前半は、銀行や建設など本来は下げの主役であるはずの不良債権関連銘柄がむしろいばっていました。急落するたびに、迫力を持って戻りの主役になれたのです。
 95年春、武田が1000円、本田が1200円、ロームが3000円台の頃、興銀はじめ都銀が1500〜2000円、ボロ建設が軒並み500円以上でした。これらの株価位置がその後の「二極化」で激変したのは経済的な必然だったと思われます。
 90年代後半は、内需株の時価総額が縮小し、ハイテク株の時価総額が飛躍的に高まったとはいえ、まだ内需株に戻りの迫力がありました。
 しかし、今回、建設,特に超低位の建設の株価がどうなろうが、全体にはほとんど関係のないことですし、銀行さえも株価水準の低下により、平均株価に与えるインパクトは限られたものになっています。
 平均株価はハイテクや国際優良株の動向に大きく左右されざるをえないのですが、それらの株価形成は、国際的な連動性がますます高まりつつあります。

 すなわち、今後は、日本の平均株価が乱高下するとしたら、ハイテク株を中心に国際的な要因によってと考えられます。現在のように、アメリカのハイテク株があっぷあっぷしているときに、日本の平均株価が胸のすくような動きをすることには、いくら国が違っても無理があります。
 おそらく、長期間にわたり悲観を織り込んだであろう銀行やその他内需関連銘柄は、アメリカより強い動きをすると考えますが、平均株価に与えるインパクトが小さい他に、アメリカの株式相場が割高か割安かで疑心暗鬼の動きを続けている中で、日本の内需関連株だけが割高割安関係なしの一方通行的な動きをすることにも無理があります。

 したがって、アメリカの相場が基調転換をしない限り、日本の市場は強含みながらも不透明感が漂い続けるかもしれませんが、私はそれは決して悪くないことだと思います。
 90年代の相場反発は、強烈で陽気なものでしたが、その代わり一過性のものに過ぎず、天井をつければ、また元の黙阿弥の長期下落基調に戻ってしまったからです。
 日本の株価は、おそらく今度こそ、大底をつけた後の本物の回復相場を粛々と形成しつつあると考えます。


第167回 よりどりみどりの局面<5/17>

 市場のマインドに明らかな変化が生じました。今日、日経平均はおそらく待望の1万2千円突破にリーチという状態で終わると思われ、3月後半以来の膠着状態を抜け出す可能性が高まってきました。
 私はこの間、小型株オンリーで明け暮れてきましたが、目先的には路線を若干修正することにしました。

 私の代表的な顧客のポートフォリオは、簡単にいうと、合同製鉄とハイテク主力(京セラなど)を担保に、信用でアライドテレシスと黒田電気を積極買いし、あとはCVSベイや兼松エレクやアイコムなどを小金額で手当たりに食い散らかしているという形になっています。
 もし、米国の足踏みを尻目に、日経平均の水準訂正が加速するなら、当然目先的には重量級の上昇が目立つはずです。重量級の上昇が目立てば、小型株はただでさえ出来高が心細い状況ですから、ますます投資家の買い意欲が減退します。
 私はこのところ書いている通り、だれも買わなくても割安なら買いだと思うタイプですが、少なくとも信用で買う場合は、目先的な効率を考えざるをえません。
 小型株ばかりの信用買いでは、目先的な効率が悪化する可能性があると思われますので、証券あるいは銀行をポートフォリオに組み入れる必要があると考えます。

 証券は典型的な市況産業株なので、今期の予想利益がどうのこうのということは考えても仕方がありません。半導体の東京エレクがPERと関係なく大幅高したように、市場のマインドが完全に底入れすれば、平均株価以上の上昇をするはずで、置いて行かれる心配がまずありません。
 では銘柄はなにがよいか? 銀行よりつぶれる心配がはるかに小さいので、極端にいえば、資産株イメージの強い野村以外はどれでも同じではないかと考えます。その代わり、間違っても塩漬けにならないよう割り切った投資を行うべきで、そのことのほうが重要だと思うのです。証券株は、準大手以下は軒並みPBR1倍をはるかに下回っていますが、その位、先行きにバラ色の夢が描けない業界と考えるべきでしょう。

 日本株の回復を象徴するのは、銀行と証券になるはずですが、金融だけが上がるわけでなく、一般産業株も相当な回復を示すのではないかと考えます。
 日経平均が1万2千円を突破すれば、例えば今期1株利益20円以上を見込む丸紅やニチメンはPER5倍や4倍のままではないはずです。
 ところで、小型株はどうなるか? 大型株の上昇はおそらく短期間に一服し、また小型株の選別局面になると考えます。

 すなわち、現在は、目先的には「よりどりみどり」の局面で、極端にいえば何を買っても理があると思います。ただし、大局的には、銘柄の選別の差で天と地の差が生じることは、つくづくに肝に銘じておきたいと考えます。


第166回 閑散波静かはチャンス!<5/14>

 このところメールがまったく来なくなりました。ちょっと前に連結持分方式のことなど理屈めいたことを書いたせいかとも反省するのですが、基本的にこの文章は私の好きで書き続けており、読者に迎合する必要はないのです。ただし、いくら好きだといっても、読者の反応がなければ、独り言をいっているのと同じで、進歩が望めません。できれば、なにとぞお叱りや反論やご感想のメールをください。

 米国が反発したことで、今日は日経平均も1万1500円にからんだ動きです。しかし、投資家の気持はますます澱んで暗いのではないでしょうか。最近は相場そのものではなく、日本の政策不在を嘆くお客様が増えています。
 私も合槌は打ちますが、相場が動かないのを政治のせいにする気はありません。我々はどのような政治であれ、与えられた条件の中で株価を考えればよいのであって、株を上げるためにこういう政治が必要だという提案は、評論家の仕事だと思っています。
 (政治に無関心であってよいと言っているわけではありません。念のため)
 政策面での諸々の期待はずれを差し引いても、現在の日本株は魅力的だと考えます。魅力的だとすれば、動かなくても「買いたい」と私は考えます。過去の経験から、閑散で動かないときに買って痛い目に遭ったことももちろんありますが、動いているときに買って痛い目に遭うことよりも、回数ははるかに少なく、損も少なかったといえます。

 トヨタが1兆円の経常利益を稼ぎ、かつ今期も続伸見込みを発表しました。しかし、株価はわずかに60円高の3600円、PERは18倍です。同じく1兆円の営業利益のドコモも分割後の安値更新でPER30倍、ひところの人気が夢のようです。
 この現象をどう考えるかですが、私は非常に健全な現象と思います。ドコモはハイテクの代表株だからPERは高くてよい、優良株のトヨタがPER20倍以下なのはおかしい、というような常識は捨てるべきだと思います。
 いま問われているのは、その銘柄がのどから手が出るほど欲しいと思えるかどうかです。本当に欲しければ、だれも買わない閑散相場であっても、むしろ喜べるはずです。ところが、日本人だけの習性ではないのかもしれませんが、他人が買わないとなれば、とたんにその銘柄が欲しいと思えなくなる投資家が多いようです。私も含めて証券会社の人間は特にそうです。それから、日本の機関投資家にもそういう人が多いようです。

 私がもし顧客側なら、おそらくドコモやトヨタをぜひ欲しいとは思わないはずです。両社が利益2兆円、3兆円と成長を遂げるのはかなり困難です。ドコモにはその可能性が多少はあるとしても、親会社のような老朽銘柄になっていく危険性も多少あります。トヨタでは、利益倍増は、インフレでも起こらない限り気が遠くなるような先の話でしょう。だとすればPER30倍やPER18倍では、ぜひとも欲しいとは感じられないのです。

 昨日、3月には12070円まであったアドバンテストが8300円台まで下落して終りました。東京エレクよりも2000円以上高かったのが逆に200円下です。この逆転にはいろいろな理由があるのでしょうが、案外に現在の市場では、今期の予想利益がかつかつながら黒字を見込むか、利益ゼロ予想かの、本来はあまり重要ではない違いが大きく影響しているのではないかと思われます。その証拠に、比較的高い1株利益予想を発表した京セラがこのところ堅調で、両銘柄と株価を逆転しました。もし今日決算を発表する村田が予想以上(200円台)の1株利益予想なら、多分、アドバンテストを抜くでしょう。

 会社の発表する数字は、実績であれ予想であれ、1期だけの問題であり、その数字そのものに一喜一憂しすぎるのは考えものです。しかし、2年前のように、何も考えずに行け行けドンドンで、赤信号大勢で渡れば怖くないがまかり通った頃に比べれば、はるかに現在の市場は健全な状態にあると考えます。
 ちなみに、630円をつけた後反落していたCVSベイが再び高値をつけてきました。当面は堅実な成長が続くはずなので、依然PER10倍以下の時価は割安(欲しい、もしくは手放したくない)と考えています。


第165回 波静かを嘆くべきではない<5/10>

 昨日起きて、米国の上げっぷりにびっくりしました。しかし、今朝の反落には大方の人が驚かなかったのではないでしょうか。もっとも、外務員仲間の中には、夢よもう一度で、ナスダックの激烈反騰にすがるような期待を持った人もいて、今朝はがっかりの様子でした。

 バブルの頃は毎日ガンガン相場が騰がりました。ITバブルの頃もそうでした。しかし、天井3日底100日と言われるくらいですから、相場が騰がり続けることには無理があります。本来は、待ち続けることのほうが中心的な投資行動であるはずです。
 「そんなこと言ったって、買ってすぐ騰がらなければ全然面白くないよ」と言う人も結構います。お客の側なら、それでよいと思います。投資の姿勢にはいろいろあり、一概にこれがいい、あれが悪いということはいえないはずだからです。
 しかし、証券マンの側に限って言えば、そういう姿勢はそろそろ改めるべきだと私はつねづね感じています。いまだに値動きが激しければ、顧客が激しく売買してくれる、だから毎日相場が動いてくれなければ困る(メシの食い上げだ)という発想だけでやっている人が少なからず存在しますが、相場変動のドサクサ紛れに手数料を稼ごうとだけ考えている営業マンは淘汰されるべきだと考えます。

 ところで、最近の膠着相場の中で、相場激動を期待して手数料稼ぎをしたいと狙っている人に限って、みずほやソフトバンク、NECなど、よりによって動きが悪い銘柄にこだわる傾向があり、そういう銘柄の信用買い残が急速に増大しました。皮肉なことに、主力株の中でこのところもっとも軽快に動いたのは、東京電力という結果になっています。

 私は相変わらず小型株中心に好業績銘柄を少しずつ買ってもらっています。利食いはほとんどしていません。
 昨日の決算発表では、かねてからの注目の兼松エレク(8096)がほぼ期待通りの発表で、今期EPS65円、株主資本比率は53%に高まり、成長期待のあるソリューション関連として800円前後の時価はあまりにも低評価だと思います。
 一昨日業績予想を修正したアイコム(6820)は、決算発表が22日で、今期見通しが出るまでやや不安がありますが、内容的に面白いと考え、見切り発車で買っています。前期のEPSを90円から138円に上方修正し、昨日の寄り付きは1700円の130円高、終日その前後でもみ合い、終値も1701円でした。この銘柄は、本業の無線は成長が期待薄であるものの、パソコン周辺やネットワーク関連機器での成長期待があり、たしかNTTと共同で無線LANやルータを開発中のはずです。
 その他、現在期待している銘柄は、ほぼ従来どおりですが、積極タイプでアライドテレシス、黒田電気、日本LCA(4798)、穴株でオリジン電気(6513)、マイスター(4695)、安定型で三信電気(8150)、TDCソフト(4687)、CVSベイ(2687NJ)などです。
 オリジンとマイスターは23日と15日の決算発表次第と思います。


第164回 米国より日本の構図<5/7>

 連休中に米国株相場に下げ止まりの動きが出るのではないかと予想していたのですが、結果は無残な安値引け。連休明けの日本株高の期待は裏切られました。
 今日はおそらくあまり売買をせずに1日を過ごすことになりそうです。
 米国が安いからといって、必ずしも日本株が売られるような地合いではなく、かといって、ハイテク株に大きな影響を受ける日経平均が逆行高できるはずもなく、日経平均が多少不安な動きをするとすれば、一般の銘柄も活発な動きはしないと考えられるからです。

 ずっと書いている通り、日経平均を基本的に横ばいと割り切り、個別銘柄の強気に徹すれば、現在はそれほど悪い投資環境ではありません。いや、それどころか絶好といってもよいのではないかと考えています。
 ただし、ナスダック指数がテロ事件直後の水準(終値の安値1423)に近いところまで下げてきた以上、日経平均の下値は本当に堅いのか、もう一度考え直してみる必要があります。

 結論から書けば、@米国株に底割れ不安はない、A米国株が崩落的な下げをしない限り、日本株との連動性は限定的、B日本株は昨年12月〜1月を大底とする上昇トレンドにある、という考えを継続することとしました。

 まず米国株がなぜ今軟調かといえば、ほぼ回復に対する「理想買い」の反省局面ということで説明できるはずです。通信などは地獄のような実態悪のまっ最中にありますし、明るい業種もある程度の回復は確実だとしても、そこからさらに90年代のようなばら色の成長を期待するのは無理があります。
 一方、日本株についてはまったく様相を異にします。10年規模での経済の拡大が続いた後の1年の景気後退局面を脱した米国に対し、10年規模での経済の停滞がはたして昨年末〜今年2月で織り込まれたかどうかが、相場の焦点です。たとえ、実態面からの明るさは少なくても、もし回復に向かえば・・・・と考えた場合の上値魅力は、米国株の比ではありません。(値嵩株の20%増益より、低位株の黒字転換のほうが株価インパクトが強いのと同じ理屈です)
 しかも、韓国を始めとするアジア地域の経済の堅調は、日本経済にとって脅威である以上にフォローの風になっていくと考えられます。このところ注目しているアライドテレシスは、米国の通信関連の下落から今日は下げるでしょうが、米国と日本・アジアの需要の違いを考えた場合、本質的には連動する必然性はないと考えます。

 決算発表を見守りながら、小型株中心の好業績銘柄に個別的な強気方針を貫きたいと考えます。


第163回 選別買いに徹する<4/26>

 日立キャピタルの決算発表は、ガク然とするものでした。まさかの経常減益見込みで、安定性がとりえのこの銘柄ですから、投資魅力が一気に後退したことは否めません。
 1700円強まで買い、首尾よく2000円までつけたので、その日の寄付値の1983円を中心に半分強を売却しましたが、半分近くが欲を出して残っていました。
 100数十円安を売却するのには顧客にも私にも抵抗がありましたが、割り切って売却することとしました。
 現在は、銘柄による資金効率の優劣の格差が、つね以上の激しさで現れ、運用の明暗を分ける局面と考えていますので、 投資魅力が後退した以上、見切りを最優先すべきと考えた次第です。

 何回か前に「闇夜の星」というタイトルで、黒田電気のことを書きましたが、今期について好業績の見込みがあるということは、現在の相場状況ではやはり非常に強い投資魅力につながっていると思われ、好業績が報道されてから基本的に上昇傾向が持続し、一昨日3000円台に乗せてきました。
 昨日の決算発表を見ても、現時点で明るい見通しを出せる企業は、特にハイテク系では限られているようです。だからこそ、数少ない好業績予想銘柄には強気を徹底してもよい局面だと考えます。

 ところで、黒田電気はまだまだ有望と考えていますが、大スターになる銘柄とは思えません。商社だからといって馬鹿にされ過小評価される時代は過ぎようとしているはずですが、やはりメーカーのように収益が大飛躍する可能性は小さいと考えざるをえません。私見では、この銘柄は3000円台が適正で、4000円から上はもしあれば売りたいと考えています。
 その点、アライドテレシスには大きな魅力があります。日本のシスコになる可能性もあると私は思っており、コンプライアンスや広告規定に反しないよう注意しながら、顧客にその夢を伝えています。
 昨日発表されたアンリツの今期見通しが非常に厳しいものであったことが示すとおり、通信機器業界の現状は泥沼に近い状態であり、アライドだっていつ業績悪化に見舞われるかどうか分からないと覚悟すべきですが、今のところ価格パフォーマンスに優れていることで、逆風下でも好業績を維持するはずだと考えています。
 CVSベイは630円をつけてからは軟調ですが、そもそも穏健な業態なのに急激に株価の水準訂正が行われたので、ここでの調整はやむをえないと考えています。
 本日、東証2部上場の日本LCAは残念ながら人気不発でした。こうなると、公募株が上値を抑える可能性が強く、資金効率から目先見切るか、それとも長期持続に徹するか、顧客と話し合う必要があると考えています。


第162回 時ならぬ超繁忙<4/23>

 米欧の株価下落にもかかわらず、日本株は堅調を保ち、5月の相場に期待を抱かせる展開となっています。
 私は5月から6月にかけて中小型株を中心に業績重視の相場傾向が強まると考えていますので、仕込みにおおわらわです。
 仕込みといっても、投資マインドがきわめて低下している(あるいは金融全般に疑心暗鬼になっている)顧客に新規の投資を検討してもらうことは、大変に骨が折れることです。このところの投資で含み益が出ている顧客なら、即決で「行こう!」もしくは「今回は見送る」と決断が早いのですが、疑心暗鬼の顧客は、3月までと違って興味は大ありなのに、結論がなかなか出ません。資料を送ったり、直接会ってチャートを見せて勧誘するのですが、なかなか約定に結びつきません。
 本当は、私が「ぜひ買ってください」と強く言えばよいのでしょうが、私自身が迷いが多いほうなので、どうもそういう営業ができないのですね。

 ということで、一部の絶好調の顧客と、気持の沈んでいる顧客への対応でてんてこまいの毎日です。特にアライドテレシスには、100株単位のの買い上がり方針で臨んでいるので、金額のわりには伝票枚数が増えています。4200円台から短期5000円台への突入で、普通なら買い増しなんか気違いじみているのでしょうが、短期的にも長期的にも相当な上値展望が持てることから、20%程度の上昇による価格面でのリスクは割り切るべきと考えています。
 アライドテレシスについては、新光証券が来期1株利益258円、2年後360円とかいうレポートを出したそうですが、仔細は分かりません。私が勧めだしたきっかけは、四季報の全銘柄を眺めて、もっとも魅力的な銘柄に見えたことです。魅力の源泉は、なんといっても、成長の可能性の雄大さです。今後ブロードバンド本格化の時流にうまく乗れれば、米国のハイテク成長株のように、ケタはずれの成長を遂げる可能性もあります。その点、例えば、CVSベイエリアも600円どころに上昇したとはいえ依然魅力的ですが、成長の限界はあり、魅力の質が違います。
 アライドテレシスが、半導体のロームが独自路線で大手電機と違う成長を遂げたように、今後ネットワーク関連の雄として飛躍できるかどうかは神のみぞ知るで、現時点では「?」でしかありません。しかし、私見では、その可能性を株価にある程度織り込めるだけの素地をこの会社は持っているのではないかと判断します。

 いずれにしても、現在の市場は、あまりにも先行きへの不安を織り込み過ぎたために、本来その確率により合理的に株価に織り込まなければならないはずの「成長への夢」、あるいは「将来への期待値」をあまりにも低い評価にしていると私は考えます。


第161回 脱株価の発想(続)<4/18>

 前回の文章は不評でした。株屋が株価を気にしなくてどうする、そんなお高く澄ましたことを書いているから、手数料も上がらないのだ、等々と。
 それに、前回書いた時点では相場はまったくつまらないものでしたが、米国のハイテク株に動兆が出て、日本の相場も昨日あたりは久々に生気づきました。
 私の勧めている銘柄でも、日立キャピタルが待望の1800円台に乗せるや、ますます動きがよくなり、一気に1900円台をうかがう形となりました。黒田電気は新高値、CVSベイも540円をつけ、それらの評価益を心理的な担保にして、新たな銘柄に手をつけ、結構忙しく過ごしました。
 順調にいけば、決算発表が出揃う5月もしくは6月にかけて、個別銘柄の躍動が続くのではないかと思われます。だとすれば、「脱株価」などととぼけたことを言っている暇はなく、荒稼ぎのチャンスと割り切るべきかもしれませんが、私はだからこそ、今は「脱株価」の発想が必要なのではないかと逆説的に考えるのです。
 今回もその議論を続けます。

 昨日、ソフトバンクが急落しました。同社の公表数字では、保有株式の時価は昨日現在で8,563億円、うち6,420億円が含み益ですから、1株純資産は時価では約3,000円あることになります。ところが、市場ではたかだか4,000億円(1株あたり1,200円)の有利子負債が重荷になっていると考え、デフォルトの不安さえ語られています。
 なぜか? 本来、保有上場株は現預金に次ぎ信頼性の高い資産のはずですが、市場はソフトバンクの保有する含み益が「絵に描いた餅」になる懸念を持っているからだと考えられます。そして、その根本的な原因は、日米ヤフーなどソフトバンクの保有する銘柄のほとんどが高PBR株であり、現在の資産価値プラスαによって買われている銘柄ではなく、将来の成長期待によって買われているということにあります。
 将来の成長期待など「絵に描いた餅」であり、いざというとき日本のヤフーを会社ごと叩き売ってもほとんど資産がないため、社債の返済の足しにならないかもしれない、と債券を買う人が考えるのは当然です。それに対し、株の投資家は、株価は所詮上がり下がりするものと割り切り、つぶれる可能性だってある反面、将来大きく伸びる可能性もあると考え、その兼ね合いによって投資判断するのが本来の姿のはずです。ところが、嘆かわしいことですが、今の日本では、株の投資家も債券の投資家と同じくムーディーズやS&Pの債券格付けに恐れおののき、成長期待の分析など二の次になってしまっているのです。

 このような市場環境の中で、顧客に株を買ってもらうのは大変なことです。東京電力をつぶれません、利回りは2%以上です、と言って買ってもらうことは簡単かもしれませんが、株をやる以上、少なくとも2ケタの利回りを目指すべきと考えている私のビジネスの志にはそぐいません。
 問題は、自分はある銘柄を安いと思う、しかし、今それを買っても、市場がますます冷えれば、その株をだれも買わなくなり値下がりしてしまうのが心配だから、今は様子をみようと考える投資家が多いことです。
 自分の他にだれも買わなくなり、売れなくなるのではないかという不安は、特に小型株の場合強くつきまといます。その不安を直接に軽減するのは、配当金ですが、成長株の場合、配当金は雀の涙です。
 その不安を抜本的に解消するためには、株の銘柄ごとの投資価値を投資家の一人一人が確信する考え方を持つしかありません。そして、その考え方を一助として、擬似連結決算方式による投資成績の集計を提唱する次第です。

 前回は、複数の銘柄を組み合わせて、PBR1倍のファンドということで提唱しましたが、投資家の考え方次第で、成長株中心の高PER銘柄でも適用できます。
 例えば、昨日から動意づいているアライドテレシス(6835)は、1株純資産は1351円しかないので、時価4600円との差3250円ほどは、収益力評価によるゲタです。しかも、前期の1株利益は87円、今期予想でも160円ですから、株価は相当に成長性を評価して形成されているということになります。
 この銘柄を買った場合、擬似連結決算では4600円の投資に対し、約3250円の投資差額をノレン代(成長期待料)を計上し、一定期間ごとに償却する必要があります。
 もし10年で均等に償却するなら、1年325円なので、この銘柄が1株利益325円以上を稼がない限り、決算は赤字ということになります。
 妥協案として、当初5年間はまったく償却しない、あるいは1年目30円、2年目60円、3年目120円・・・・という形で漸増型の償却方法を採ることが考えられます。

 なにをごちゃごちゃ理屈をこねているかと思われるかもしれません。しかし、重ねて言いますが、現在はこのような考え方を積み重ねることが大切だと思います。
 アライドテレシスは大変に有望な銘柄だと思います。NTTが固定電話への設備投資を打ち切り、従来の交換機をIP型に切り換える方針を発表したことに示される通り、ルータをはじめとするネットワーク機器には大局的にフォローの風が吹いています。
 アゲインスト要素は、米国のシスコなど関連銘柄が業績悪と株価不振にあえいでいることですが、一昨日から株価に回復ムードが出てきたので、昨日から買い始めました。
 ただし、リスクは強く意識すべきです。何かのはずみで、市場の成長期待が根こそぎ剥げ落ちる可能性があります。だから、この株に限らず、成長株に投資する以上、自分の資産がノレン代というゲタを履いており、その分はその会社の爆発的な成長により、償却できるはずだいう意識(見きわめ)を持つ必要があると私は考えるのです。

 NTTドコモが1兆9千億円もの莫大な投資を行い、わずか1年でその半分を評価損として計上し、あの時点ではその金額でしか仕方がなかったとコメントを出す背景には、投資におけるノレン代への意識の欠如があるとしか考えられません。2年前には多くの投資家が成長期待で株を買いながら、今はまるで債券投資の発想に止まっています。今こそ、成長への期待を正当に評価し、銘柄を選別するときだと考えます。

戻る